眠れない高校生達の青春物語が綴られた映画『君は放課後インソムニア』。今回は本作でW主演を飾った森七菜さんと奥平大兼さんにインタビューさせていただきました。それぞれのキャラクターを演じる上で事前に準備したことや、悩み事がある時の対処法について聞いてみました。
<PROFILE>
森七菜(もり なな):曲伊咲(まがり いさき)役
2001年8月31日生まれ。大分県出身。2017年、映画『心が叫びたがってるんだ』で映画初出演。2019 年に『天気の子』でヒロインの声を担当し、2020年に『ラストレター』で1人2役を演じ、注目を集める。その他の主な出演作に、NHK 連続テレビ小説『エール』、ドラマ『この恋あたためますか』、映画『ライアー×ライアー』、Netflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』、映画『銀河鉄道の父』などがある。また、歌手活動も行っており、映画『ラストレター』の主題歌やホフディラン「スマイル」をカバーするなど活躍中。
奥平大兼(おくだいら だいけん):中見丸太(なかみ がんた)役
2003年9月20日生まれ。東京都出身。2020年、映画『MOTHER マザー』で演技未経験ながらメインキャストに抜擢され、俳優デビュー。同作で第44回日本アカデミー賞新人俳優賞、第94回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第63回ブルーリボン賞新人賞、第30回日本映画批評家大賞新人男優賞を受賞した。その他の主な出演作に、映画『マイスモールランド』、WOWOWオリジナルドラマ『早朝始発の殺風景』、映画『ヴィレッジ』、ディズニープラスオリジナルドラマ『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』などがある。
※前半は合同インタビュー、後半は独占インタビューです。
伊咲として履いていたのと同じ靴をいつの間にか買っていました by 森七菜さん
シャミ:
最初に原作や脚本を読んだ時の印象を教えてください。
森七菜さん:
私は原作が出始めた頃から読んでいて、最初に読んだ時はおもしろいと思いました。当時はあまり漫画を読んでいなかったのですが、唯一好きになったのが「君は放課後インソムニア」でした。何か感じていたのかと思うくらいのスピード感で好きになりました。
シャミ:
何か運命的なものを感じたということですね。
森七菜さん:
本当にそんな感じです。
シャミ:
奥平さんはいかがですか?
奥平大兼さん:
僕はこの実写映画のお話をいただいて、台本を読んでから原作も読ませていただきました。僕が丸太を演じるということは関係なしに、まずは純粋に読んでこの作品の良さや、伊咲と丸太の空気感をきちんと知りたいと思いました。本当に良い作品で、ほかの学園ものを読んでいる時とは少し違った感覚になりました。良い意味ですごくゆったりしていて、時間の流れるスピードが僕自身の感覚と似ている気がしたので、お芝居をする上でも表現したいと思いました。
シャミ:
それぞれのキャラクターについてお二人で話し合ったことなどはありますか?
奥平大兼さん:
それはありませんでしたが、実際に演じて掴んでいった感じです。お互いに現場で演じないとわからない部分があり、僕が丸太のお芝居をして伊咲がどう出てくるのかによって少し変わることもありましたし、逆もあったと思います。
記者A:
今回共演してお互いに印象が変わったところはありますか?
森七菜さん:
以前共演した時は壁越しにお芝居をして、声だけ聞いていてもすごいなと思いました。今回は表情を見てお芝居ができたのですが、良い意味で全然お芝居をしている感覚がなく、スタートがかかる前からの延長線上で自然に演じることができました。それは奥平くんのすごいところで、私もやりやすかったのでありがたかったです。
奥平大兼さん:
僕も同じ感覚でした。以前共演した時は特別お話したわけではありませんでしたが、僕は森さんを作品で観ることが多かったので、すごいお芝居をするなと思っていました。森さんはすごくナチュラルにお芝居をするので、本当に笑っているのか、お芝居で笑っているのか良い意味でわからなくて、そういう純粋なお芝居ができることはすごいなと思います。僕もそういう方とお芝居をしていると、すごく楽しいんです。相手が少しニュアンスを変えただけで違う演技ができるということは、その瞬間を生きて感じているからこそできることなので、それは本当にすごいと思いますし、僕も頑張ろうと思いました。
森七菜さん:
嬉しいです。私も奥平くんの作品を拝見していたので、そんな方に褒めていただけるなんて!
奥平大兼さん:
こちらこそ!!
記者A:
海のシーンで伊咲が脚を上げるポーズをして、丸太に写真を撮ってもらうシーンがありましたが、あれは台本通りですか?
森七菜さん:
あれは伊咲の特徴的なポーズなので、どこかに入れたいなと思って、ここだと思ってやりました。
奥平大兼さん:
そうだったんだ!すごいね。何も知らずに写真を撮っていたよ。
森七菜さん:
ハハハハ(笑)!
シャミ:
伊咲と丸太は天文部に所属し、丸太はカメラの勉強をしていました。また2人は共通して不眠症ということでしたが、演じる上で何か準備されたことや事前に予習されたことはありますか?
奥平大兼さん:
今回演じた丸太は僕とはかなりかけ離れているキャラクターでした。でも、ただ不眠症について調べて、不眠症の人はこうなのかとわかったつもりになるのは嫌だと思ったので、なるべくできることはやっておこうと思いました。それで、1日寝ないで行動してみたのですが、そしたら本当に丸太のようにイライラしたんです。そのイライラしていることの辛さは現場でも表現したいと思いました。あとは、原作の雰囲気を映画にも反映したいと思っていたので、そういうところについては監督と話し合いました。
森七菜さん:
私の場合は、容姿についてはメイクさんやスタイリストさんにお任せしましたが、元々伊咲とわりと似ていると感じていました(笑)。
奥平大兼さん:
本当に似ているよね!
森七菜さん:
なので、森七菜ではなくあくまで曲伊咲なんだとわかってもらえたらいいなと思いました。完全に伊咲を再現しようとすると難しいのですが、漫画の好きなコマを台本に貼っていつでも見られるようにしていました。
シャミ:
それぞれご自身と役が似ている、似ていないということですが、役作りをしていく上で、ご自身と役とのバランスをどのようにとっていきましたか?
森七菜さん:
最初に演じる時はまだ伊咲をわかっていなくて、演じているうちに理解していき、それから私自身の要素を大きくしていきました。撮影をしている時は役に染まっているので、発想もその人になってしまうんです。例えば撮影で石川県にいた時に靴を買ったのですが、伊咲として履いていたのと同じ靴をいつの間にか買っていました。
一同:
すごい!!
森七菜さん:
私として自然に考えていたことが役としての考えになっていることが結構あるので、途中から会えて私自身の要素を大きくするようにしています。
奥平大兼さん:
僕も役に対する理解度に関しては、やっぱり演じていくうちにわかるようになっていく感覚があります。いつも撮影が終わる頃にわかるようになるので、すごく悔しいんです。でも、この作品を撮影していた時は、自分自身すごく生きていた感覚がありました。
学生時代にしかできないことは、とても大事なもの
シャミ:
高校1年生は一生のうちでも特に多感な時期だと思います。主人公達の思いや悩みについて、少し大人になったからこそ理解できると感じることはありますか?
奥平大兼さん:
僕が反抗期だった頃は、周りの大人が言っていることを理解できていませんでしたが、今になって理解できることはたくさんあります。そういう意味では大人になったのもしれません。でも、その当時の純粋さというか、無垢だけど自分の力で頑張ろうとしている気力というのが、今はなくなってきたのかなと思うと、ちょっと悲しいです。学生時代にしかできないことは、とても大事なものだと思います。
森七菜さん:
私が高校生だった頃を振り返ると、今は理解できないことのほうが多いです。何であんな風に思っていたんだろうと思うことも多くて、尖った風に捉えてしまうこともありました。その頃は敏感過ぎて、人には見せないけどいろいろなところに棘があって、それが自分でも苦しかったことを覚えています。でも、当時本当に多感だったからこそできたお芝居もあったと思いますし、今となっては羨ましいなと思う部分が多いです。
シャミ:
なるほど〜。当時を振り返って、今だったらこうすると思うことはありますか?
森七菜さん:
当時はやり方がわからず、今よりも不器用だったので、あれが自分にとっての最善だったんだと思います。一生懸命頑張っていたので、認めてあげたいなという気持ちです。
シャミ:
伊咲と丸太は不眠症に悩みながらも誰にも打ち明けられずにいました。お二人は普段何か悩み事があった時にどのように対処されていますか?
森七菜さん:
すごく考えます。何から何までずっと考えているので、寝られなくなってしまうんです。解決しようがないことも、「なんでこうなったんだろう」とずっと考えてしまいます。
奥平大兼さん:
僕は逆にすごく相談するタイプです。それこそお芝居のことは、自分で考える時もありますが、客観的に見てくれる方が欲しいと思うので、そういう時は監督やマネージャーさん、今まで一緒にお仕事をした方に相談しています。たぶん悩みを打ち明けることで自分なりに気を楽にしようとしているんだと思います。話すと「考え過ぎだよ!」と言ってもらえるので、その言葉が一番気を楽にしてくれて、一度何も考えないで生きようと思えます。そうすることで、家で考え過ぎずゆっくりする時間ができるので、そうやって話すことが僕にとっては大事なんだと思います。
シャミ:
それぞれ悩み事の解決法が違うんですね。では、最後の質問です。俳優のお仕事を始めてから、映画の観方が変わったり、変化したことは何かありますか?
森七菜さん:
たくさんあります。余計なことを全部考えてしまうので、正直今はあまり映画を観ていなくて、作品とか誰かのお芝居を観ることで苦しくなってしまうこともあるんです。もしかしたら今が多感な時期なのかもしれません(笑)。
一同:
ハハハハハ(笑)!
奥平大兼さん:
今なのか〜!
森七菜さん:
遅いよね(笑)。
シャミ:
奥平さんはいかがですか?
奥平大兼さん:
確かに変わった部分はあります。繋がっていない場面を観ると集中できなくなってしまうこともあります。「あれ?さっき、この人はあっちにいたよね?」とか。でもそんなことを気にしていたら作品なんて楽しめませんよね。そういうことを気にしてしまうのも嫌だなと感じます。でも、この仕事をしているからこそ観るようになった作品もたくさんあるので、良いところと悪いところと半々だと思います。
シャミ:
本日はありがとうございました!
2023年5月17日取材 PHOTO&TEXT by Shamy
『君は放課後インソムニア』
2023年6月23日より全国公開
監督:池田千尋
出演:森七菜/奥平大兼/桜井ユキ/萩原みのり/工藤遥/田畑智子/⻫藤陽一郎/上村海成/安⻫星来/永瀬莉子/川﨑帆々花/でんでん/MEGUMI/萩原聖人
配給:ポニーキャニオン
舞台は石川県七尾市。不眠症に悩む高校生の丸太は、ある日、校内にある天文台で同じ悩みを抱える伊咲と出会う。2人は、不眠症という秘密を共有することで次第に打ち解け、たびたび天文台を訪れるようになる。しかし、2人が天文台を勝手に使っていたことがばれてしまい、天文台への立ち入り禁止の危機に迫られ…。
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