今回は複雑な背景を抱えた姉妹の物語『幕が下りたら会いましょう』で、妹役を演じた筧美和子さんにインタビューをさせていただきました。本作では演劇、芸ごとも1つのテーマになっているので、筧さんご自身が芸能界でお仕事をする上で大切にされていることなどもお聞きしました。
<PROFILE>筧美和子(かけい みわこ):尚 役
1994年3月6日生まれ、東京都出身。2014年よりファッション誌“JJ”の専属モデルを務め、その後は多数の映画やドラマ、舞台で活躍。テレビドラマは、『最高の離婚Special 2014』、NHKの連続テレビ小説『まれ』、『東京タラレバ娘』『恋はDeepに』『ガル学。〜ガールズガーデン〜』などに出演。主な映画出演作に、『闇金ウシジマくんPart3』『犬猿』『スマホを落としただけなのに』『孤狼の血LEVEL2』などがある。
※前半は合同インタビュー、後半は独占インタビューです。
きょうだいは自分が形成されていくなかで絶対に不可欠な存在
記者A:
台本を読まれて率直な感想はどうでしたか?
筧美和子さん:
ダイレクトにメッセージがあるかというとそうではない作品だと思いますが、何か寂しさみたいなものを感じるというか、言葉にはできませんが、何か感じ取ったぞみたいなものはあって、それは後々監督とお話をしていくなかで徐々に見えていった気がします。
マイソン:
登場シーンは限られていながら、すごく重要な役でしたが、役作りはどのようにされましたか?
筧美和子さん:
心情というか寂しさみたいなものを常に持っている人だと思ったので、ニュアンスになってしまいますが、そういうところは常に大事にしていました。あとは、松井さんが演じる姉(麻奈美)との関係性は事前にリモートで本読みをさせていただいて、お互いに感じ取れたものがあったと思います。前田監督は特にそういう目に見えないけど繊細な心情の機微みたいなものを大事にしてくれたので、皆常にそこを軸としていました。すごく役作りをしたというわけではありませんが、共通認識みたいなものが自然と入りやすかったかなと思います。
マイソン:
この物語では姉妹の関係が鍵を握っていて、私も2人姉妹なので自分達を振り返りながら観た部分もありました。差し支えなければお伺いしたいのですが、筧さんはきょうだいはいらっしゃいますか?
筧美和子さん:
姉と弟がいます。
マイソン:
筧さんにとってきょうだいってどんな存在ですか?
筧美和子さん:
不思議なもので、きょうだいがいる方でもそれぞれ全然関係性が違いますよね。でも、自分が形成されていくなかで絶対に不可欠な存在だし、自分の中で姉や弟の要素が自然と組み込まれているなとも思います。それと同時に一緒にやってきた同志みたいな感覚もあって、一言で表現するのは難しいんですけど、最近自分の中に姉や弟の匂いを感じることもあります(笑)。だから、尚と麻奈美も複雑な関係でありつつ、あんなに長い時間を共にしてきたらシンパシーみたいなものを感じることはすごくあったと思うんですよね。
マイソン:
距離感でいうと親も近いですが、親ときょうだいってまた違いますよね。
筧美和子さん:
私の場合ですが、1番の理解者だなと思います。親には心配させられないから言えないことでも姉とかには全部言って知っているみたいな(笑)。そうじゃないきょうだいの形もあると思うんですけど、私の場合は本当に不可欠な存在だなと思います。
マイソン:
今回は妹役を演じられて、実生活とか実感覚でキャラクターに通じるところはありましたか?こういうところって妹らしいなとか、松井さんが演じたお姉ちゃんもこういうところって姉らしいなとか。
筧美和子さん:
お姉ちゃんっていつの間にかいろいろなものを背負ってしまう場面が多くて苦しいこともあると思います。そんなつもりはなくてもやっぱりお姉ちゃんが抱えてしまうものって多いなと。本当に私は甘えさせてもらっているなと思って(笑)、尚と麻奈美の姉妹らしい部分が見えるシーンは限られていますけど、関係性はもしかしたら近いのかもしれません。麻奈美を見ていてもいろいろなものを抱えてきたからこそ素直になれないのかもしれないし、姉妹の立場ってすごく関わってくるなと思います。
今のお仕事を続けるために大切にしていることは…
マイソン:
とあるキャラクターの「芸ごとは始めるのは簡単だけど、続けるのが難しい」というセリフがありました。筧さんはまさに芸能界でお仕事をされていますが、このお仕事を続けるために大切にしていることはありますか?
筧美和子さん:
何でしょう。続けるために優先順位が変わってしまったり見失ってしまうことが怖いので、いつ辞めても良いと思っているつもりなんですけど、辞めたいとは思っていないので(笑)、続けているのかなと思います。
マイソン:
なるほど(笑)。逆にそう思っているからこそ気持ちが自由になれるという感じでしょうか?
筧美和子さん:
そうですね。自由でいたいからいつ辞めても良いと思うようにしています。確かに続けるのが難しいのはあるのかな…。
マイソン:
芸ごとは特にかもしれませんが、お話を聞いていてどんなお仕事でも続けるためには「ここだけは」という部分を持っておくのは大事なんだろうなと改めて思いました。では、これは皆さんにインタビューで聞いているのですが、これまででいち観客として、大きな影響を受けた映画か、俳優、監督がいらっしゃれば教えてください。
筧美和子さん:
青山真治監督の『EUREKA ユリイカ』です。いろいろな映画をジャンル問わず観てきたなかで、この映画はやっぱり心にちゃんと届いて、理屈ではなくグッと心を掴まれたような何か忘れられない映画なんです。目には見えないけれど心に残るような表現をされているというか、そういうものに自分自身が惹かれるんだなと最近再認識していて、だからそういう作品に出会いたいし、そういうものを作っていけたらなと思います。『EUREKA ユリイカ』からはそういった影響を受けたし、あとは音楽から受ける影響も大きいです。
マイソン:
音楽はどんなジャンルがお好きなんですか?
筧美和子さん:
本当に無知なので安易には言えないのですが、音楽にも映画に似た部分があるのかなと思っていて、観る人とか聴く人によって解釈が違ったりするんだけど、この音楽にすごく引き込まれたというのと、例えば『EUREKA ユリイカ』とも共通する点がある気がして、最近自分の本能的なところを再確認しています。
マイソン:
本日はありがとうございました!
2021年9月22日取材 PHOTO&TEXT by Myson
『幕が下りたら会いましょう』
2021年11月26日より全国順次公開
監督:前田聖来
出演:松井玲奈/筧美和子/しゅはまはるみ/袴田吉彦
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
鳴かず飛ばずの劇団を主宰する麻奈美(松井玲奈)は、ある日突然妹の尚(筧美和子)が亡くなったことを知らされる。尚が亡くなったその日、尚からの電話に出なかった麻奈美は複雑な思いを抱えてしまうが、妹との日々を改めて振り返り、自分自身とも向き合っていく。
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