猫と人との繋がりや新しい家族の形を描いた『ねこ物件』が、ドラマ版を経て劇場版として公開となります。今回はそんな本作で立花修役を演じた細田佳央太さんにお話を伺いました。猫との共演や、本作で登場するシェアハウスに集まった夢を持つ住人達にちなんで夢を持つことの大切さについて直撃しました。
<PROFILE>
細田佳央太(ほそだ かなた):立花修 役
2001年12月12日生まれ。東京都出身。小学2年生の時に俳優活動をスタート。以降、ドラマや映画で活躍中。2019年、映画『町田くんの世界』で1000人超のオーディションを勝ち抜き映画初主演を飾った。近年の主な映画出演作に、『花束みたいな恋をした』『青葉家のテーブル』『子供はわかってあげない』『女子高生に殺されたい』などがある。ドラマでは『ラブファントム』『金田一少年の事件簿』『ドラゴン桜』『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』などがあり、2022年のドラマ『もしも、イケメンだけの高校があったら』では、ドラマ初主演を果たした。
※前半は合同インタビュー、後半は独占インタビューです。
猫は人を繋げる生き物で、そこにいることがすべてだった
記者A:
まずドラマ版のオファーがあった時のお気持ちを聞かせてください。
細田佳央太さん:
“ねこ物件”ということで、当然猫が出てくるお話なのですが、僕は猫を飼ったことがないので、猫とどう接して良いのかわからず、そんな人がこの作品に関わって大丈夫なのかなという不安がありました。猫自体に苦手意識はありませんでしたが、この作品は猫好きのための作品でもあるので、観ている方が「そんなことはしないでしょ」と思ったらアウトだと思ったので、緊張感がありました。
シャミ:
ドラマ版と劇場版を経て、最終的に猫と仲良くなれましたか?
細田佳央太さん:
古川雄輝さんが猫との距離の取り方がすごく上手かったので、古川さんと猫の関係を仲が良いというとしたら、僕は仲良くなれていないと思います(笑)。あそこまでの領域には達していないと感じました。
シャミ:
最初に比べたら猫と接することに慣れましたか?
細田佳央太さん:
そうですね。素人に毛が生えたくらいにはなりました。猫の場合、余計なことをしないのが大切で、猫に構ってもらうために自分から行くのではなく、とにかく待つことがコツだと思います。
シャミ:
なるほど〜。人間だけで撮影するのと動物と撮影するのとでは、どんな違いがありましたか?
細田佳央太さん:
猫はマイペースな生き物なので、なかなか思うように撮影が進まないこともありました。でも、お芝居をやっている時もそうでない時も猫の周りに自然と人が集まってくる点は良いなと思いました。撮影順は二星ハイツの入居順と同じで、最初が修(細田佳央太)で、毅(上村海成)、丈(本田剛文)、ファン(松大航也)の順番で現場に入ったのですが、皆人見知りばかりで、そんな僕達の会話の最初のネタになったのが猫でした。猫にはそのくらいのパワーがあって、猫がいたおかげで皆と打ち解けることができました。
シャミ:
猫が皆さんの橋渡し役になってくれたんですね。
細田佳央太さん:
はい、本当に猫が繋いでくれてそこはプラスな部分でした。
シャミ:
本当に可愛い猫達でしたが、細田さんは本作において猫がどんな役割を果たしていると思いますか?
細田佳央太さん:
ドラマ版も劇場版も、猫が普通に生活しているなかで、人間側が勝手に悟るという流れだったので、そう思うと猫が何か特別なことをしたわけではないんですよね。ドラマでは、毎回優斗のおじいちゃんの幸三さん(竜雷太)が発した言葉がタイトルになっていたので、それを思い返すと猫は人を繋げる生き物で、そこにいることがすべてだったと思います。猫がいるからこそ周りの人達が悟ることができたし、役だけでなく僕自身も幸三さんが言っていたことに「そういうことか」と感じることができました。
記者B:
シェアハウスという設定や猫が登場するという点では、細田さんにとっても新しい体験だったと思います。この作品を通してご自分の中で何か新しい発見はありましたか?
細田佳央太さん:
僕の場合は、他の人に気を遣ってしまうのでシェアハウスは向かないと思いました。猫がいる現場については、一定期間猫と一緒にいたので、猫がどういう生き物なのかがちゃんとわかりました。特に猫のマイペースさはすごく感じました。人間だと、マイペースなことが悪く捉えられがちで、言い換えるとワガママや自己中だと感じることもあると思うんです。でも、猫はそんなことは知らずに自分の気の向くままに生きていて、それを見ていると羨ましいと思うと同時に、そのくらい自分を大切にして良いんだ、周りから言われることなんて気にしすぎなくても良いんだと思いました。
シャミ:
シェアハウスにご自身は向かないということでしたが、本作でシェアハウスの住人を演じてみて、シェアハウスの良さも発見できましたか?
細田佳央太さん:
発見できました。やはり知らない人との生活だからこそ、知らない世界があるわけです。本作にはボクサーの住人がいましたが、僕はボクシングの世界について知らないので、そういう話を聞けるのはおもしろいなと思いました。あとは、ドラマ版で毅の劇中劇を皆で観るシーンがありましたが、そういうある種の青春みたいなこともできると思うと、すごく魅力的だなと思います。
シャミ:
美味しそうなご飯も登場していましたが、実際に食べて印象に残っているものはありますか?
細田佳央太さん:
ハムエッグがめちゃくちゃ美味しかったです。ご飯のシーンは監督も丁寧に撮ってくださったので、すごく美味しそうに見えたと思います。本当に美味しくて、カットがかかっても食べていました。
夢ややりたいことがあると自分の道筋になる
シャミ:
二星ハイツの住人達は皆夢を持っている人達でしたが、夢を持つことの良さや大切さはどんなところだと思いますか?
細田佳央太さん:
1番は夢を持つことで迷わないことだと思います。中学生の時に僕は既にこのお仕事をやっていたので、将来はこのお仕事をするんだと何となく思っていました。でも、周りの子達を見ていると、高校に行こうと思っていても志望動機がない子や、良い高校に入ることが良い大学や就職先に行くための手段でしかない子もいました。そういう時に夢とかやりたいことがあると、道筋がはっきりすると思うんです。やりたいことのためにどんな道に進めば良いのか考えて、それに合った学校や就職先に行けば良いと思うんです。例えば、絵をやりたいと言っても、絵画、漫画、絵本などがあって、デザインをしたいのか編集をしたいのかと、いろいろあるじゃないですか。具体的な夢がなかったとしても、ふわりとでも夢ややりたいことがあると自分の道筋になるので、夢を持っていることは大事だと感じます。
シャミ:
今は夢がない若者も多いと思うのですが、そういう人達に向けて何かアドバイスをするとしたら何と声をかけますか?
細田佳央太さん:
どんなに小さなことでも、いろいろなことをよく見ることではないでしょうか。「これが好きだけど、仕事にするにはこうしないといけないから大変かな」と思って躊躇するくらいなら、1回やってみたほうが良いと思います。本当にふわりとやってみたいと思うことでも良いんです。それがあるのとないのとでは、スタートラインも違うと思います。どんなに些細なことでも職種はいっぱいあるし、やってみないとわからないこともあるので、本当にいろいろなことを見ることが大切だと思います。とは言いましたけど、やりたいことを見つけられる人は本当にラッキーですよね。
シャミ:
細田さん自身は早い段階でお仕事に就いていたと思いますが、当時の心境などは覚えていますか?
細田佳央太さん:
当時は仕事なんていう仕事は全然していませんでした。オーディションを100、200回くらい受けましたが、基本9割は落ちていました。オーディションに落ちてもそれがいつも通りだと思っていました。
シャミ:
そうだったんですね。でも、お仕事がだんだんと増えていくなかで、ご自分の気持ちに変化があったのでしょうか?
細田佳央太さん:
明らかに気持ちが変わったのは、『町田くんの世界』という作品をやらせていただいた時でした。そこからこのお仕事のことを考えるようになって、今に至ります。この仕事を本気でやりたいと思ったのもその時でした。
シャミ:
本当にいろいろな役を演じている印象がありますが、今後チャレンジしてみたい役などはありますか?
細田佳央太さん:
狂気を持った役をやってみたいです。たぶんすごく難しいと思います。観察をして何とかなるものではありませんし、実際に経験できることでもないので、そういう意味では自分がどれだけいろいろなものを見てきたかということと、想像力の全部が1番試されるのが道徳的に反するものを持った人の役だと思うので、いつかやってみたいです。
シャミ:
では最後の質問で、これまでで1番影響を受けた作品、もしくは俳優や監督など人物がいらっしゃったら教えてください。
細田佳央太さん:
やはり『町田くんの世界』で出会った方々です。僕が初めて死ぬ気で力を出して、お芝居を初めて楽しいと思えたのも『町田くんの世界』でした。本気でやれたのは石井裕也監督のおかげで、お芝居が楽しいと思えたのは池松壮亮さんのおかげでした。なかなか経験できないことを1つの作品で、1ヶ月の間に経験できたことはほぼ奇跡に近いことだと思うので、『町田くんの世界』との出会いは本当に大きかったと思います。僕の自信にもなりました。
シャミ:
ターニングポイントになった作品ですね。
細田佳央太さん:
まさしくそうです!
シャミ:
わかりました。本日はありがとうございました!
2022年6月16日取材 PHOTO&TEXT by Shamy
『劇場版 ねこ物件』
2022年8月5日より全国公開
監督・脚本:綾部真弥
出演:古川雄輝/細田佳央太/上村海成/本田剛文/松大航也/金子隼也/山谷花純/長井短/竜雷太
配給:AMGエンタテインメント
2匹の猫と暮らす二星優斗は、祖父が亡くなったことをきっかけに“猫付きシェアハウス・二星ハイツ”を始めた。そこには、夢を持つ4人の同居人が住んでいたが、皆次のステージへと巣立っていった。そんなある日、不動産会社の有美から、二星ハイツの再開を促される。最初はあまり気乗りしなかったが、あることをきっかけに再開を決意し…。
©2022「ねこ物件」製作委員会