ファンの間で“最恐傑作”と呼ばれる押切蓮介の人気ホラー漫画を、これまでさまざまなホラー映画を手掛けてきた白石晃士監督が映画化した『サユリ』。今回は主人公の則雄役を演じた南出凌嘉さんと、主人公の同級生の住田役を演じた近藤華さんにインタビューさせていただきました。
<PROFILE>
南出凌嘉(みなみで りょうか):神木則雄 役
2005年8月10日生まれ。大阪府出身。2012年、連続テレビ小説『純と愛』でデビュー。2016年『映画 妖怪ウオッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』では映画初主演を飾る。近年の主な出演作に映画『キングダム』『ザ・ファブル』『糸』、ドラマ『姉ちゃんの恋人』『やさしい猫』『君が獣になる前に』などがある。映画『サユリ』では主人公、則雄役を演じた。
近藤華(こんどう はな):住田奈緒 役
2007年8月6日生まれ。東京都出身。ドラマ『金田一少年の事件簿』(2022)への出演を皮切りに、『ばらかもん』(2023)、『アンチヒーロー』(2024)などに出演。また、菅田将暉の楽曲「ギターウサギ」(2022)では、ミュージックビデオへの出演と、クリエイティブディレクター&アニメーション制作を担当した。映画『サユリ』では主人公の同級生、住田役を好演。今後は映画『アイミタガイ』(2024年11月1日)の公開が控える。
今までのホラー映画とは一線を画している作品
記者A:
オーディションでそれぞれ役が決まったそうですが、役が決まった時の気持ちと、原作や脚本を読んだ時の感想をお聞かせいただけますか?
南出凌嘉さん:
僕は頑張らなきゃという気持ちとワクワクがありました。主演の経験がまだ浅いため、不安も大きかったです。でも、原作を読んだらキャラクターに共感できるところがたくさんあり、作品に対して親しみを持つことができたので、最終的には楽しもうと思い撮影に臨みました。
近藤華さん:
私は怖がりなので普段あまりホラー作品を観てこなかったのですが、ホラー作品に出たいという気持ちはずっとありました。ホラー作品の裏側がすごく気になって、どんな風に作っているんだろうと思っていたので、役が決まった時はすごく嬉しかったです。原作は前半と後半とで全然テイストが違い、楽しく読めました。
記者A:
南出さんが先ほど原作を読んで共感できるところがあったとおっしゃっていましたが、ご自身と役とで似ていると思うところはありますか?
南出凌嘉さん:
場の空気を回したり、のらりくらりとしていて平和主義みたいなところ、家族や誰かといる時に回し役になったりするところは似ています。それからシンプルですが、よくあくびをしたり、のんびりした雰囲気だったり、静かなところも僕自身とすごく似ていると思います。
近藤華さん:
住田は結構オタクっぽい子なのですが、私もオタク気質なところがあるので、そこはすごく似ているなと思いました。それと、初めて会う方にすごく緊張してしまうところや、早口になってしまうところも似ています。
シャミ:
近藤さんはあまりホラーが得意ではないということですが、南出さんはホラー作品を普段ご覧になりますか?
南出凌嘉さん:
映画館で観たことはないのですが、皆でワイワイ観ることは好きなので、家でたまに家族と観たりしています。
シャミ:
実際にホラー作品に出演されて、印象が変わった点や、何か発見されたことはありますか?
南出凌嘉さん:
『サユリ』は、今までのホラー映画とは一線を画している作品なので、ホラー映画ってこういう世界なんだという風には感じませんでした。でも、この作品に出て特に思ったのは、怖がらせることは本当に難しいということです。お客さんがご覧になる時に、主人公と同じ目線に立ってもらうにはどうすればいいのかすごく考えました。ホラーの演出として確かにこれをしたら怖いなとか、こう演じてもあまり意味がないなとか、たくさん勉強になることがありました。
近藤華さん:
私は最初勝手にホラー作品って現場も怖いのかなと想像していたのですが、実際の現場はとてもワイワイしていて、すごく楽しかったです。役で特殊メイクをされている方もいましたが、話してみると楽しい方ばかりで、そのギャップがおもしろかったです。
シャミ:
現場は楽しくて一安心だったんですね。
記者A:
則雄と住田の関係は、ある時から徐々に距離が近づいていきました。その関係性も含めて、それぞれ役をどのように捉えて演じようと思いましたか?
南出凌嘉さん:
まずは僕が則雄っぽいということで役を任せていただいたので、その似ているところは大事にしたいと思いました。逆に則雄になくて僕にあるものが出ないように気をつけ、なるべく100%則雄になれるように意識しました。でも、それでいて僕が則雄をやったらこうなるということも表現したかったので、キャラを崩さないように僕なりに全力で演じました。
近藤華さん:
私の演じた住田は霊が見える子なので、自分で霊を想像してリアクションをする場面が多くありました。なので、画像検索をしたりして想像を膨らませました。自分なりに霊を想像してリアクションにリアリティを持たせたいと思い、例えば則雄の後ろに少女がいる、絶対に見えるという感覚を落とし込んで、住田がどういう表情をしているかなど、考えながら演じました。
記者A:
おばあちゃん役を演じられた根岸季衣さんとの共演はいかがでしたか?
南出凌嘉さん:
本当に楽しかったです。ずっと引っ張っていただいて、大変なシーンも支えてもらいました。ただ演じるのではなくて、共演者の演技を引き出す能力というのは、やっぱりベテランの方にしか備わっていないと実感しましたし、すごく憧れます。根岸さんの演技はすごくカッコ良かったです。
近藤華さん:
私は根岸さんの出演されている作品をいくつも観てきたので、まずはお会いできてすごく光栄でした。根岸さんの演じるおばあちゃん役が本当に原作のイメージ通りで、あることをきっかけに切り替わるシーンは特に圧倒されました。
南出凌嘉さん:
ね!びっくりしたよね。
シャミ:
則雄はある方法でサユリと対峙していました。もしご自身がサユリの棲み着く家に住むことになったとしたら、どのように対応されると思いますか?
近藤華さん:
私なら逃げます。霊感はありませんが、やっぱり怖くてたまらないと思います(苦笑)。
南出凌嘉さん:
怖いよね!サユリみたいな幽霊だったら怖いので、僕も引っ越します。でも、もし無害な霊だったら一緒に住んでもいいかもしれません。幽霊相手なら、生きている人には言えない悩みとかも言えそうですし、一度対話を試みてみます(笑)。
一同:
すごい!ハハハハ!
俳優の仕事は最高にカッコ良い!
シャミ:
物語や役について白石監督と話し合いをされたことや、特に演出された点はありますか?
南出凌嘉さん:
劇中に太極拳のシーンがありますが、太極拳は打つとか蹴るとかではなく、相手からもらった力をそのまま返すとか、ずっと止まらないので、流れを回すことが大切なんです。則雄はただ太極拳の筋が良かったのではなく、そもそも鈍感なタイプで物事を受け流すことが得意だったからこそ、たとえ太極拳の動きが苦手でも太極拳の適正があったということなどを教えてくださいました。そういった一つひとつの細かいところや、則雄の性格については監督とたくさん話し合いました。
シャミ:
かなり細かいところまで話し合いをされたんですね。
南出凌嘉さん:
なぜ太極拳なのかなど説明してくださり、すごく納得ができました。この映画は原作から改編しているところもあるので、白石監督なりにどういう理由があるのかというところをお話いただきました。
近藤華さん:
私は幽霊に対するリアクションに困っていた時に監督からアドバイスをいただきました。霊を恐がる時は息遣いを荒めでとか、具体的に教えてくださいました。
シャミ:
霊と対峙するシーンでは、絶叫する場面も多かったと思いますが、どんな準備をされていましたか?
近藤華さん:
私は恐怖の表情をするシーンが多くて、鼓動が早くなる、目を見開くとか、細かいところをその場ではなく、一旦自分で考えて出すようにしていました。
南出凌嘉さん:
僕は普段からよく嘆くことが多いので、意外とスムーズに撮影に入れました(笑)。たくさん叫んで喉を酷使していましたが、喉を壊すことはなかったのでわりと強いんだと思います。叫ぶことは、泣いたりするのと同じで、スタートがかかって、自分の中で作り上げたものを出したら良いという感覚があるので、特別大変だったわけではありません。でも、僕の悪い癖で、相手の台詞やリアクションを受け取ってから自分がその気になるまで台詞が出せないことがあるんです。今回も、叫ぶに至るまでの恐怖の感情を待ってしまったことがあり、そういう意味では少し大変でした。
シャミ:
それぞれホラー作品ならではの工夫をされていたんですね。ここからはご自身のお話を伺わせてください。俳優のお仕事をされていて、俳優のお仕事を始める前と後で印象が変わったことなどはありますか?
南出凌嘉さん:
僕は小さい頃から俳優のお仕事をしていたのですが、最初はカッコ良い機材に囲まれているカッコ良い人達というイメージでした。今は俳優の生き方というか、他人の人生を役として自分に投影してというのを繰り返して、いろいろな人生を何度も疑似体験するという、ある種過酷ですが、楽しいという印象があります。観客の心をどう動かすのか、自分はどう感じるのかということを突き詰めていくことが最高にカッコ良いと思います。
近藤華さん:
私は中学2年生の頃にこのお仕事を始めましたが、5歳くらいの頃からずっと憧れていました。実際にやってみて大変だと感じることもありますが、ずっと続けていきたいという想いがどんどん大きくなっています。
シャミ:
今後挑戦してみたい役や作品はありますか?俳優としての目標もあれば教えてください。
南出凌嘉さん:
僕は悪の親玉とか黒幕役をやってみたいです。それこそ幽霊役にも興味があります。
近藤華さん:
今は高校生なので、今の自分を活かせるという意味で学園ものに出てみたいです。
シャミ:
それぞれぜひ観てみたいです!では最後の質問です。これまでで1番影響を受けた作品、もしくは俳優や監督など人物がいらっしゃったら教えてください。
南出凌嘉さん:
僕は一時期演じていても感情が全然動かなくなってしまい、泣けない時期があったんです。その時に克服できたきっかけが『ミッドナイトスワン』でした。作品を観た時に、綺麗だなと本当に感動して泣きました。昔の僕は泣き虫で、それで実は嫌な経験をしたこともあり、それから泣かないと決めていました。でも、そのせいか演技でしか泣けなくなってしまったんです。でも、ついに演技でさえ泣けなくなってしまい、そんな時に『ミッドナイトスワン』と出会い、人の感情の美しさみたいなものを再確認することができました。それからは素直に感情が動くようになりました。
シャミ:
すごく素敵なお話ですね!
近藤華さん:
私はファンタジー作品がすごく好きなんです。自分でもアニメを描くのですが、ファンタジーにはすごく夢があると思っています。特に“スター・ウォーズ”シリーズや、“メリー・ポピンズ”が大好きです。いろいろなファンタジーを観てきたからこそ想像する力が大きくなっていったのかもしれません。
シャミ:
それこそご自身でもファンタジー作品に出演したいと思いますか?
近藤華さん:
グリーンバックの撮影とかやってみたいです!
シャミ:
いつか実現する日が来るかもしれませんね!本日はありがとうございました。
2024年7月8日取材 Photo & TEXT by Shamy
『サユリ』
2024年8月23日より全国公開
R-15+
監督:白石晃士
出演:南出凌嘉/根岸季衣/近藤華/梶原善/占部房子/きたろう/森田想/猪股怜生
配給:ショウゲート
神木家は、夢のマイホームへと引っ越してきた。しかし、家族7人の幸せな時間も束の間。則雄は学校へ行くと、隣のクラスの住田に突如話しかけられ、「気をつけて」と言われる。困惑する則雄だったが、次第に理不尽な出来事が神木家を襲っていく…。
©2024「サユリ」製作委員会/押切蓮介/幻冬舎コミックス
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情報は2024年8月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。