冤罪事件を再捜査するクセモノ刑事(田中圭)が活躍する本作で、主人公を支える警察官を演じた前田敦子さんにインタビューをさせていただきました。アイドル時代と今についてのお話や、演技のために普段やっていることなどをお聞きしました。
<PROFILE>
前田敦子(まえだ あつこ):南川メイ 役
1991年7月10日生まれ。千葉県出身。AKB48のメンバーとして活躍し、2012年に卒業。AKB48在籍中の2007年に『あしたの私の作り方』で映画デビューを果たし、2011年の映画『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』で初主演を飾った。その後もNHK大河ドラマ『龍馬伝』、フジテレビ系ドラマ『花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス~2011』などに出演。主な映画出演作は、『苦役列車』『もらとりあむタマ子』『クロユリ団地』『さよなら歌舞伎町』『イニシエーション・ラブ』『モヒカン故郷に帰る』『探偵はBARにいる3』『町田くんの世界』、ロカルノ国際映画祭で上映された主演映画『旅のおわり世界のはじまり』などがある。
※前半は合同インタビュー、後半は独占インタビューです。
アイドル時代から培ってきた●●には自信しかない(笑)
記者A:
田中圭さんが演じた儀藤(ぎどう)と対峙してみてどんなことを思われましたか?
前田敦子さん:
すごくお茶目なところがあるのが“死神さん(儀藤)”のおもしろさかなと思います。同じトーンなのにふざけていたり、それは一緒にお芝居をしていてもおもしろかったです。
記者A:
前田さんが視聴者として観ても儀藤と南川メイの2人の対比というのは魅力的だなと思われますか?
前田敦子さん:
そうですね。全然混じり合うつもりはないみたいな(笑)。
記者A:
ちなみに田中圭さんは現場に一緒にいていかがでしたか?
前田敦子さん:
すごく器用な方だなって。台本の台詞を覚えるのが本当に早いんです。私は結構躊躇してしまうタイプなので、合っているかなと不安になってしまうんですが、田中さんはその躊躇がないんです。だから10ページくらいの台詞もすぐ覚えられる方なんだと思います。
記者A:
俳優さんとしての才能があると言いますか。
前田敦子さん:
それは才能ですよね。舞台役者さん達もそういう方が多いと思うんですけど、それは持って生まれた才能だと思います。
記者A:
「こう演じるんだ!」と驚いたところなどはありますか?
前田敦子さん:
おもしろいところはもっとおもしろくしようという企みも持っている方なので、たぶん楽しいのがすごく好きな方なんだろうなと思いました。真剣なところこそすごく淡々と演じられていて、おもしろいところを一癖二癖足そうとしていたので、すごく押し引きが上手い方だと思いました。
マイソン:
AKB48の時からすごくいろいろな経験をされていると思いますが、アイドル時代の経験が俳優業で役立っていることはありますか?
前田敦子さん:
体力というものに関しては自信しかないですね(笑)!
一同:
ハハハハハ!
前田敦子さん:
でもそれは心の体力のほうもそうかもしれません。私は自分で勝手に落ちたりしないんです。仕事の時は全然ですね。人間なのでプライベートで小さいことを気にするというのはもちろんありますが、仕事で「もうダメだ」みたいなモードには絶対に入ったりしません。それは自分の持っている才能かなと思います。そういう部分で図太くないとこの世界ではちょっと難しいのかなって。打たれ強いです(笑)。
マイソン:
すごい!!
前田敦子さん:
どんな環境でもっていうのもあります。
マイソン:
普段、俳優としての芸の肥やしというか、引き出しを増やすためにやっていることはありますか?
前田敦子さん:
すごく仲が良い人達と話している時の感じとか、普通に喋るってこんなに早口だよねとか、そういうことを日頃ふと思ったり、自分のことをたまに観察しています。お芝居では普通の会話が1番難しいと思っていて、ちゃんと人の話を聞いて一つひとつキャッチボールをすることって普通はあまりないですよね。作品を観ている人にとってはそれをしないと成立しないと思うので、そこは自分でも理解できていますが、それが友達と喋っているシーンになったらどうするんだろうとか、日頃の自分を客観視して突然そうだよなと思うことがあります。仲が良い人と喋っていると、マシンガントークになったりするじゃないですか(笑)。句読点なんかないんですよね。
一同:
ハハハハハ!
マイソン:
息が続く間は一気に喋りますよね(笑)。
前田敦子さん:
あとは、ちょっとおもしろい人を見つけたりしたら「ちょっとおもしろいな」「そうだよな、こういう人もいるよな」って思ったりもします(笑)。
時間が解決するって何でもそうだなと思いました
マイソン:
今でも“AKB48のあっちゃん”というイメージを持っている方が多いと思うんですが、俳優さんをやる上で苦労したことはありますか?
前田敦子さん:
自分の中で慣れるまでには時間がかかりました。どうしても自分が1番そう思っていた時期はありましたね。“AKB48だった私”というのがなかなか消えなくて。でもそれは何でもそうだと思うんですけど、時間が1番の解決策だったと思います。ここまで来ちゃうと1人の時間のほうが長いので、「AKB48にいた自分もあったな」と懐かしく思うというか、違和感が自分の中からなくなったので、「どうしたらそう見えなくなるんだろう?」って余計なことを考えなくなりました。時間が解決するって何でもそうだなと思いました。
マイソン:
周囲の皆さんがというよりご自身の内面で感じられてたんですね。
前田敦子さん:
そうですね。今は自分がそう思わなくなったので生きやすくなりました。
マイソン:
30代に入られて、役者さんとして新たにこういう役がやりたいとかありますか?
前田敦子さん:
どういう役がやりたいかな〜。夫婦役とかやってみたいですね。以前NHKのドラマでやったと言えばやったんですが、その作品はファンタジーだったので、普通の夫婦や家族の役をやってみたいです。
マイソン:
今まで学生とか若い役も多かったですよね。
前田敦子さん:
まだまだ学生はありそうな気がしておかしいなと思っています(笑)。今年もそういう作品があるんですが、「私はまた制服を着るのか!?」みたいな。でもそれはこの仕事の特権だと思って楽しもうと思います。
マイソン:
ファンの皆さんもまだ制服姿を観たいと思います(笑)。では、ちょっと話題が変わりますが、普段映画をご覧になる時はどんなところに目が行きますか?
前田敦子さん:
本当に何も考えずに演じているんだろうなという方を観た時にやっぱり素敵だなと思います。お芝居をする時は、自分との戦いだと思うんです。雑念がなくそつなく馴染めている方を観ると、とても素敵で尊敬します。すごく考えながら演じているのかなというよりは、ただその場にいるような、本当に考えていないんだなという人のほうが観ている方にも伝わるんだろうなと、邦画を観ると特に思います。
マイソン:
ご自身としては、これまでいろいろな作品に出られて今どうですか?
前田敦子さん:
この16年間はあっという間でしたね。あっという間過ぎて、またこの先の時間もすぐにきて30周年とかになるんだろうと、ちょっと焦っています(笑)。そうなる前にもう少しちゃんと噛みしめられるようになりたいなと思います。今はまだすごいスピードで過ぎていく感じがあるんですよ。もうそろそろ1つずつを記憶に残していきたいというか、しっかりと噛みしめて、落ち着いていられるようにするのが目標です。何かせわしなさが当たり前になってやってきちゃっているので、その癖が付いているんですよ。どんなに忙しくても全然大丈夫って。ペース配分みたいなものはこの数年で考えないといけないなと思います。
マイソン:
では最後の質問で、これまでいち観客として影響を受けた映画や監督、俳優さんがいらしたら教えてください。
前田敦子さん:
皆さんそうですね。誰というのは決められないです。でも1番好きな役者さんは若尾文子さんなんです。若尾さんの作品は本当に癒やされます。すごく華があるし、コミカルな作品もすごく大人な作品もどちらも似合う色気のある方なので、いつまでも私のミューズです。
マイソン:
若尾さんに注目したきっかけの作品はありますか?
前田敦子さん:
レンタルDVD店で特集されていた時に知りました。その時に『青空娘』がポスターになっていて、当時まだ10代なのに大人っぽいし、ずっと変わらないんですよね。あとは『東京おにぎり娘』の若尾さんの可愛さがたまらないです!
マイソン:
私も観てみたいと思います。本日はありがとうございました!
2021年9月7日取材 PHOTO&TEXT by Myson
『死神さん』
2021年9月17日よりHuluで独占配信中
毎週金曜、新エピソード配信(全6話)
監督:堤幸彦(第壱話・第弐話・最終話)/藤原知之(第参話・第肆話)/稲留武(第伍話)
出演:田中圭 前田敦子
ゲスト:小手伸也 蓮佛美沙子 りんたろー。 長谷川京子 竹中直人 他
“死神”と呼ばれる儀藤堅忍(田中圭)は、被疑者が無罪になった冤罪事件の再捜査を専門にしている警視庁の変わり者。そんな彼は、警察官の南川メイ(前田敦子)の協力を得ながら、毎回異なる相棒と共にさまざまな冤罪事件の真犯人と真相を解明していく。そんな儀藤にやがて、警察を挑発し続ける謎の架空テロ犯・エンジェル伊藤の魔の手が忍び寄り…!?
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