「食」をテーマにシリーズ化し、第一次産業の活性化を応援する“種まく旅人”シリーズ第4弾となる本作で、農家を継がずに都会に出て働きながらも実家の窮地に大きな選択を迫られるキャラクターを演じた平岡祐太さんにインタビューをさせていただきました。お話をうかがっていると平岡さんの穏やかな雰囲気も役柄に重なり、癒されました(笑)。
<PROFILE>
平岡祐太(ひらおか ゆうた):山田良一 役
1984年9月1日生まれ、山口県出身。2002年、第15回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリに輝く。2004年、映画『スウィングガールズ』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2009年、ドラマ『ゴッドハンド輝』で連続ドラマ初主演を飾る。2010年には大河ドラマ『龍馬伝』、2016年にはNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』に出演し、その後もドラマ『東京タラレバ娘』(2017)、『ホリデイラブ』(2018)、『警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室 THIRD SEASON』(2018)、NHK BSプレミアム『ファーストラブ』(2020)、『今野敏サスペンス機捜235』(2020)など多くの作品で活躍。『新・浅見光彦シリーズ』(2017〜)では4代目浅見光彦を演じる。
まだ知らないことってたくさんある
マイソン:
今回、れんこん畑に入って撮影もされていましたが、腰まで泥で浸かるような畑に入ってみていかがでしたか?
平岡祐太さん:
まず、れんこん畑がすごく泥臭いんですよ(笑)。
マイソン:
「臭い」っていうセリフもありましたけど、やっぱりそうなんですね!
平岡祐太さん:
映像だと伝わりにくいのですが、本当に想像していたよりも泥の香りがすごくて、まず鼻がやられてしまって、ちょっと畑から離れたいなと思った時もありました(笑)。あと、畑の下まで泥でできていて、そこに長靴で入っていくので、歩き方を変えないとどんどん埋まって靴が抜けなくなるんです。だから僕は結構つま先立ちで歩くようにしていましたね。
マイソン:
なるほど〜。じゃあ足腰を結構使うんですね。
平岡祐太さん:
そうですね。あとホースの使い方もすごく難しかったです。すごい水圧なので、そこは大変で、農家の方に方法を教わりました。
マイソン:
畑のシーンを観ていて、慣れない頃は転んでしまったりしなかったのかなと思いました。
平岡祐太さん:
胸くらいまであるつなぎを着てたんですけど、尻もちでそれがギリギリ埋もれるくらいになった時がありました(笑)。
マイソン:
あれは観ていてコツがいりそうだなと思いました(笑)。
平岡祐太さん:
難しかったです。
マイソン:
れんこん料理を食べたりもされたんですか?
平岡祐太さん:
たしかお弁当がほぼ毎日れんこんだった気がします(笑)。
マイソン:
アレンジというかバリエーションもあったんですか?
平岡祐太さん:
どうでしたかね。ほぼれんこん、またれんこんっていう記憶です(笑)。
マイソン:
私は正直これまでれんこんにあまり注目したことがなかったのですが、今作がきっかけでれんこんの違いとかはわかるようになりましたか?
平岡祐太さん:
そうですね、加賀れんこんはモチモチ感があって、あとは割った時に糸を引くっていう他のれんこんとはちょっと違う特徴があると知りました。僕も今まではれんこんに興味がなかったんですけど(笑)、今回やってみてれんこんのきんぴらが好きになりました。コロナ禍の自粛期間中には、買ってきたれんこんのきんぴらを細かく切って、ご飯に混ぜ合わせて食べてましたが、これがすごく美味しいんですよ。
マイソン:
美味しそう!!それはやってみたいです。そして、今回は“農業女子”というキーワードが出てきたり、農家に嫁ぐかどうかのシーンでは、女性が自分の意志で人生を選ぶ権利があるんだというメッセージも受け取れたんですが、男性目線で今作のテーマをどう感じましたか?
平岡祐太さん:
やっぱりこれだけ便利になった世の中で、農業もいろいろハイテク化されているとは思うんですけど、それでもまだ大変な手作業をするような農業の世界に入るっていうのは、僕が逆の立場だとしても最初は抵抗があるなと思いました。「突然言われても…」ってなるだろうし、「私は私のやりたいことがある」ってなっちゃうだろうなって思います。
マイソン:
両方難しい立場でしたよね。
平岡祐太さん:
そうですね。
マイソン:
良一に共感した部分はありますか?
平岡祐太さん:
僕の親はサラリーマンだったので、彼のように家を継ぐとかはないんですけど、祖父の家が農家で、親戚のおじさんが継いでいるというか、米を作っていたりするので、そういうところは自分も親族を見ていて、継ぐ側の苦悩みたいなのは共感できるなと思います。レールが決まっているとそれは抜け出したくなるよなっていうのは感じました。
マイソン:
新鮮だった部分はありましたか?
平岡祐太さん:
今回は農業がテーマですが、自分の中ではヒューマンドラマに近づけたくて、そこで起こる人間ドラマにフィーチャーしたかったんです。そういう今まで自分がやってきたアプローチとは違う感覚で挑めたことが新鮮でした。
マイソン:
確かに銀行員としてのエピソードは特にドラマチックですよね。
平岡祐太さん:
この作品はどういう風にやっていこうかなっていう時に、池井戸潤さん原作の『空飛ぶタイヤ』っていうドラマを観て、こういう作品に寄せられないかなと考えたりしていました。ただの地域密着再生物語ではなく、そこで起こるヒューマンドラマの要素を入れたいなと思いながらやっていました。
マイソン:
なるほど。今コロナ禍で皆が辛い状況にも重なりますよね。
平岡祐太さん:
そうですよね。やっぱり皆苦しいというか、必死というか、皆そうやって頑張っていると思うので。
マイソン:
そうですね。あと恋人の凜とのやり取りで、良一が優しすぎるせいか、複雑な女心が良一にはなかなか届かず、観ていて結構もどかしいところもありました(笑)。男性からすると、女性の本音を読み取るのってどうですか?
平岡祐太さん:
女性はわからないなって感じですね(笑)。
マイソン:
裏があるの?ないの?という感じですか?
平岡祐太さん:
わからないですけど、やっぱり全然違うんでしょうね(笑)。
マイソン:
生き物として(笑)。
平岡祐太さん:
もどかしさがあるっておっしゃっていただいたんですけど、今回敢えてバトルにのらないってことを意識してました。感情がぶつかり合うのも良いんですけど、良一としては敢えてぶつかりにいかないっていうのもアリかなと思いました。
マイソン:
その通りになっていましたね!
平岡祐太さん:
台本は決まっているので、強く出ようが弱く出ようが最後まで行くので、それだったら弱いほうでいってみようかなと。
マイソン:
なるほど、そうだったんですね(笑)!
平岡祐太さん:
争うくらいなら身を引くみたいなのが今っぽいのかなって。
マイソン:
確かに。でも最終的にはすごくバランスの取れたカップルだった気がします。女性が強かったので、女性からグイグイ行くのがおもしろかったです。次に、今36歳で30代後半に入られて、演じられる役の幅もどんどん広がっていくと思うのですが、楽しみにされていることとか、チャレンジしたいことはありますか?
平岡祐太さん:
やっぱりこれまでやってきて思うのが、人との出会いでいろいろな話が膨らむことが多いので、今回もそうですけど、自分がまだ知らないところの方達と出会えると、もっと楽しい役者生活を送れるんじゃないかなと思っています。まだ知らないことってたくさんあると思うので、知らない人ともお仕事できたらもっと楽しいだろうなって思います。
マイソン:
では最後の質問で、いち観客として大きな影響を受けた映画、もしくは監督、俳優がいらっしゃったら教えてください。
平岡祐太さん:
いっぱいあるんですけど、どれが良いかな〜(笑)。僕は10代の時に、『I am Sam アイ・アム・サム』を観て、DVDに付いていたメイキングも観たんですけど、ショーン・ペンの役と普段の幅がすごすぎて、そこに衝撃を受けました。
マイソン:
そこで役者に対しての興味もわいたんですね。
平岡祐太さん:
はい、見方が変わりました。
マイソン:
本日はありがとうございました!
2021年1月25日取材 PHOTO&TEXT by Myson
『種まく旅人〜華蓮のかがやき〜』
2021年3月26日より石川県先行公開、4月2日より全国順次公開
監督:井上昌典
出演:栗山千明/平岡祐太/大久保麻梨子/木村祐一(特別出演)/永島敏行/綿引勝彦/吉野由志子/柴やすよ/駒木根隆介/小久保寿人/平山祐介
配給:ニチホランド
配給協力:トリプルアップ
れんこん農家を継がずに大阪府堺市に出てきて銀行マンとして働く山田良一は、ある日、母から父が脳梗塞で倒れたと知らされる。そして良一以外に跡継ぎもおらず、育てるのが難しいれんこんを扱っている実家は財政難にも見舞われ、良一は究極の選択を迫られる。一方、農林水産省に務める神野恵子は、れんこん農家の視察のため、金沢を訪れていた。神野は農作業を楽しそうにこなす若い女性従業員達の姿を見て、希望を見出しつつあったが…。
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