『HOMELAND/ホームランド』のエグゼクティブ・プロデューサーを務めたラン・テレム製作総指揮のもと、さまざまな国の実力派キャストが集結した大型国際連続ドラマ、Huluオリジナル『THE HEAD』。今回はSeason2のメインキャストの一人、ユウト役として出演した福士蒼汰さんにお話を伺いました。念願の初海外作品ということで、撮影秘話やユウトの注目ポイント、さらに海外の現場を経験して、海外作品の観方が変わった部分について聞いてみました。終始笑顔でお話される福士さんの様子から撮影現場の楽しさが伝わってきました!
<PROFILE>
福士蒼汰(ふくし そうた):ユウト 役
1993年5月30日生まれ。東京都出身。2011年に俳優デビューを飾り、『好きっていいなよ。』『イン・ザ・ヒーロー』『神さまの言うとおり』で第38回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その他の近年の出演作に、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』、『ちょっと今から仕事やめてくる』『曇天に笑う』『ラプラスの魔女』『BLEACH』『旅猫リポート』『ザ・ファブル』『カイジ ファイナルゲーム』、ドラマ『神様のカルテ』『アバランチ』『大奥』『弁護士ソドム』などがある。海外ドラマ『THE HEAD』Season2では海外作品に初挑戦し、エンジニアのユウト役を好演。また、11月にはW主演映画『湖の女たち』が公開予定。
※前半は合同インタビュー、後半は独占インタビューです。
ユウトが決して主観的になることなく、常に客観視している部分は僕と似ています
シャミ:
本作では巨大貨物船が舞台となっており、巨大なセットも組まれたそうですが、初めて撮影現場を訪れた時の印象はいかがでしたか?
福士蒼汰さん:
撮影前に製作総指揮のラン・テレムさんと一緒に見学に行ったのですが、本当に大きな船があり、見た瞬間にすごく大きな規模の作品だと実感しました。その時にちょうどマギー役のキャサリン・オドネリーさんがいて、僕を発見すると「あなたがユウト役の方よね!」と笑顔で駆け寄ってきてくれました。本物の船なので、オイルがたくさん塗られていて、うっかり触ってしまった人達は「うわっ!」と驚いていたことは良い思い出です(笑)。
シャミ:
最初から和気あいあいとした現場だったんですね。大きなセットを目の前にして、プレッシャーは感じませんでしたか?
福士蒼汰さん:
プレッシャーもありましたが、ここでお芝居をできるんだという喜びのほうが大きかったです。現場のスタッフはスペイン人、プロデューサーはイスラエル人、キャストはいろいろな国から来ているので、どんな現場になるのか不安に思っていたのですが、製作総指揮のランさんがとても優しくて、皆に紹介してくださいました。現場に日本人は僕1人しかいなかったので、僕を見つけると皆が「ユウト!待っていたよ」と言って歓迎してくれました。
記者A:
日本と海外とでは撮影の進み方が違うと思いますが、海外で撮影をしてみて違いや難しさを感じたことはありましたか?
福士蒼汰さん:
撮影という意味では変わりませんが、1番大きなことはやはり言語の差です。スペイン人のスタッフの方々も不慣れな英語で指示を出す必要がありましたし、監督も英語で演出し、こちらも英語で返さないといけません。でも、母国語も文化もバラバラの環境のなか、皆がお互いを理解しようと思いやる素敵な現場でした。
ひとつ日本の撮影と違ったところは、スタッフチームがAチームとBチームに分かれていたことです。基本Aチームが重要なシーンを中心に撮り、Bチームは台本にはないけど使うかもしれないというエキストラショットを撮っていました。実際に使われないこともあるのですが、キャラクターを深めるために一応余分に撮っておき、後から編集ではめ込んでいくそうです。日本では台本以上のものを撮ることがないので、僕にとっては初めての経験でした。今回は自分の日本語吹き替えもさせていただいたのですが、その時エキストラショットが使われている場面を見つけて、嬉しい気持ちになりました。
記者B:
ユウトを演じる上で監督やスタッフの方と何か話し合ったことはありますか?
福士蒼汰さん:
特に監督とはたくさん話しました。また、僕はアーサー役のジョン・リンチさんとのシーンが多かったのですが、彼はアドリブが多く、現場でセリフが変わることもあったので、前日はすごくドキドキしていました(笑)。アーサーのセリフも覚えるくらいの気持ちでないとダメだと思って臨みました。
記者C:
アドリブは当然英語で対応していたということですよね?
福士蒼汰さん:
そうです!アーサーのセリフを聞いて、それに合った返しをしないといけないので緊張しましたが、アドリブがあることで、すごく生きたシーンになったと思います。ジョンは自分が今思った感情でどんどん作っていきたいという方だったので、英語でお芝居をリアルにしたという感覚になれたのはジョンのおかげでした。
シャミ:
ユウト役を演じる上で、最も大変だったこと、意識されたことなどは何かありますか?エンジニアのユウトの注目ポイントも教えてください。
福士蒼汰さん:
ユウトは船の中にいるメンバーで1番年下のキャラクターです。楽観的なところもあるのですが、そんな彼が殺人犯のいる船上でどう生きていくのかというところが、僕自身演じていておもしろいと感じました。論理的に思考する性格なので、怯えてしまったり、怒ったりする登場人物が多いなかで、ユウトは比較的冷静だと思いました。目の前に問題があった時に、解決して早く船から出ようという気持ちがすごく現実的なんです。エンジニアで常にパソコンを相手にしているからか、決して主観的になることなく、常に客観視していて、そういう部分は僕とも似ていると思いました。
記者D:
ユウトとご自身とで似ているということでしたが、演じるなかで福士さんらしさという点は意識されましたか?
福士蒼汰さん:
お芝居の仕方が日本と海外で違うと感じる部分もありました。日本だと少し誇張して演じて欲しいとリクエストされることもあるのですが、今回の作品ではリアリティを要求されることが多かったです。例えば懐中電灯で物を探す状況になった場合、お芝居だとパッと照らしてしまうのですが、現実だと物と物の間まで照らして細かく探したりしますよね。それがライトの動きに出ているそうです。“探している”というお芝居をしているのと、実際に本当に小さい物を探している時の自分が全然違うので、後者をお芝居で表現できることが大事なんだと思います。そういう意味で、ユウトには僕らしさというものが反映できたのかなと。当然役の背景もありますが、その背景に則って演じているなかに自分自身が出るという感覚です。
記者E:
念願の海外作品に挑戦して得たもの、今後課題だと感じることは何かありますか?
福士蒼汰さん:
どちらの意味でも英語力です。もっと必要だと思いましたし、今回の撮影で伸ばすことができたという実感もありました。今までは自分が持っている英語力を出せず縮こまってしまうことがありましたが、今回の撮影を経てちゃんと自分を表現できるようになったと感じました。まだまだつたない英語ですが、この作品を通して少し自信がつきました。
記者F:
本作は今後の福士さんご自身にどう影響してくると思いますか?
福士蒼汰さん:
本当にこの1歩を踏み出せたことは大きかったと思います。年をとればとるほど1歩が重くなりますよね。絶対に若いうちに何でもやるべきだという気づきにもなりましたし、この作品を経験したことで、海外作品の2本目に対しても1歩が踏み出しやすくなる気がします。これからも若い気持ちを持ちながら、海外作品に限らず、いろいろなことに挑戦したいと思います。
やればやるほど俳優のおもしろさを実感するようになりました
シャミ:
本作の撮影に入るにあたって、英語以外で何か事前に準備されたことはありましたか?
福士蒼汰さん:
ユウトはパソコンを使うキャラクターだったので、タイピングの世界選手権の映像を観ました。エンターキーを早く押すコツなどもあることを知りました。あと、競技が始まる直前まで皆さんカイロをずっと持っていて、始まると一気にタイピングをするんです。とにかく早く動かしたいから、寒くて手がかじかんでしまうことを避けるための対策なんだと思います。皆さん手をこすったり、息を吹きかけたりしていて、それが特徴的だと思ったので、僕もそういった仕草をお芝居に取り入れました。
シャミ:
寒い地域だったら余計に手を温めたいですよね。撮影時のスペインの気候はいかがでしたか?
福士蒼汰さん:
すごく暑かったです。6月はテネリフェ島、7月はマドリードにいました。マドリードは気温40度くらいで熱波が来ていて、外出禁止令も出ていたほどです。
シャミ:
気候に慣れるのも大変そうですね。
福士蒼汰さん:
そうですね。でも、日本の夏のように湿度があるわけではないので、カラッとしていて気持ち良かったです。
シャミ:
それは良いですね!本作で海外の現場を経験して、海外作品の観方が変わった部分などは何かありますか?
福士蒼汰さん:
アジアの方が出ている作品はより気になるようになりました。日本人はもちろん、他のアジアの方が何に出ているのか観てしまいます。
シャミ:
今回の経験を経て日本の現場でも活かしたいと思ったことはありますか?
福士蒼汰さん:
今回演技にリアリティを追求していくことを学んだので、それは日本でももっと取り入れたいですし、そのバランスを考えて役を演じるようになりました。でも、日本の作品ではリアリティだけでなく、わかりやすい部分があるほうが好まれる傾向もある気がするので、考え方や価値観も違うのかなと思います。
シャミ:
本作の福士さんを観ていて、英語が流暢なことはもちろんですが、役にすごく馴染んでいて、日本の作品の時ともまた違い、本当に別人のように感じました。
福士蒼汰さん:
ありがとうございます!
シャミ:
この作品に入る前にしっかりと切り替えて臨んだということでしょうか?
福士蒼汰さん:
そうですね。この作品の直前は舞台に出演していて、舞台だとさらに誇張が必要なので、そういう意味ではしっかりと切り替えて臨むことができたと思います。
シャミ:
前の作品に引っ張られてしまうことなどはありませんでしたか?
福士蒼汰さん:
今回は言語も環境もまったく違ったので、引っ張られることなく演じることができました。
シャミ:
なるほど〜。福士さんご自身についても聞かせてください。俳優のお仕事に興味を持ったのはいつ頃だったのでしょうか?
福士蒼汰さん:
17歳の時に事務所に入りました。はじめは特別な目標もなかったのですが、続けているうちに徐々におもしろいと思うようになって、『仮面ライダーフォーゼ』への出演が決まった時に責任も生まれて、皆さんに観てもらう喜びも感じました。その後の仕事もありがたいことにいろいろな作品に出演させていただいて、やればやるほど俳優のおもしろさを実感するようになりました。
シャミ:
先ほど今後も海外作品に挑戦したいというお話もありましたが、チャレンジしたい役やジャンルなどありますか?
福士蒼汰さん:
やっぱりアクションが1番興味のあるジャンルです。僕は英語と同じくらい体を動かすことが好きなので、楽しそうだなと思います。
シャミ:
では最後の質問です。これまでで1番影響を受けた作品、もしくは俳優や監督など人物がいらっしゃったら教えてください。
福士蒼汰さん:
大森立嗣監督です。『湖の女たち』(11月公開予定)という作品で大森監督の演出を受け、自分の役者としての考え方が180度変わるような感覚がありました。大事なことを学ばせていただいたし、お芝居をより楽しいと感じられるようになりました。
シャミ:
本日はありがとうございました!
2023年5月23日取材 PHOTO&TEXT by Shamy
Huluオリジナル『THE HEAD』Season2
2023年6月17日よりHuluにて独占配信中
製作総指揮:ラン・テレム
監督:ホルヘ・ドラド
出演:ジョン・リンチ/キャサリン・オドネリー/福士蒼汰/オリヴィア・モリス/エンリケ・アルセ/ホヴィク・ケウチケリアン/モー・ダンフォード/ジョゼフィン・ネルデン/ティリエ・ゴダールほか
舞台は、南太平洋を航行する巨大貨物船、アレクサンドリア号。その船は、天才生物学者のアーサーと彼が率いる優秀な科学者チームが乗る秘密研究基地だった。彼らは気候変動から地球を救う調査をしていたが、ある日研究員の1人が、首<THE HEAD>の無い死体として見つかる。さらに、不可解な出来事が次々と起こるなか、研究員や船の乗組員達は次第にお互いを疑うようになり…。
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本ページの情報は2023年6月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。