特集

映画に隠された恋愛哲学とヒント集65:結婚はあくまで選択肢の1つ

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ずっと独身でいるつもり?』田中みな実

ネタバレ注意!

ずっと独身でいるつもり?

ライターの本田まみ(田中みな実)は以前執筆したエッセイで自立した女性の本音を書き人気を得たが、それ以来ヒット作を書けず10年が経っていた。まみは36歳になり周囲も結婚しないのかと迫るなか、配信番組の出演をきっかけに心が揺らいでいく。

映画『ずっと独身でいるつもり?』田中みな実/稲葉友

タイトルにもある通り、本作は結婚がテーマの1つとなっています。同時に世代が異なるキャラクターが登場することで、年を経ていく過程で女性がどんな選択をしていくのかが描かれています。主人公のまみが自立した女性の本音を書いたベストセラーを出したのは26歳。いち女性として客観的に見ると、まだまだ若い彼女には気持ちに余裕があっただろうし、未来に可能性をいっぱい感じて結婚を意識することも少なかったと思います。でも、時代が変わってきたように見えて、やっぱり今でも30歳を超えると結婚する友人も増えてきて、なぜか焦ってしまう方も少なくないのではないでしょうか。

映画『ずっと独身でいるつもり?』松村沙友理

私自身の経験を振り返っても、30歳に近づくにつれ周囲からの「いつ結婚するの?」オーラは強くなったと思います。相手がいなければ紹介しようかというお節介が増えるし、いたらいたで「いつ?」「まだ?」と聞かれる。私の場合、東京の友人や知人はいろいろなライフスタイルの方が多いせいかプレッシャーをかけられていると感じることはあまりありませんでしたが、地元に戻ると友人に既婚者が増えていたこともあり、自分で勝手にそういうプレッシャーを感じてしまっていた部分もあったと思います。でも、そのプレッシャーは30代後半になると気のせいではなくもっと露骨になり、当時既に今の夫と長年交際中だったこともあり多くの方に「なぜ結婚しないの?」と聞かれることに疲れていました。内心「私達のタイミングでするからほっといて」と思っていましたが(苦笑)、なぜか結婚に関する質問については、デリカシーを気にしない風潮が未だにあるように感じます。

映画『ずっと独身でいるつもり?』田中みな実

20代後半から30代というと責任ある仕事を任されておもしろくなってくる時期。だから仕事か結婚かみたいな選択を迫られると、仕事を続けたい方にとってはもう絶望的です。今は共働き夫婦も増えてきたので新婚のうちは仕事を続けられるだろうと思いますが、本作のなかでまみに対する婚約者やその両親の勝手な未来予想図を知ると、結婚することで女性が犠牲にするものは大きいなと実感します。男性ももちろん結婚することで背負わされるものが大きいとは思いますが、未だに結婚には必ず子を産んで育てるというルートが紐付けられており、女性は出産に伴う休職は避けられず、かつ子育ては女性が主体でやるものという価値観が流布している点で、どうしても女性のほうが結婚によって縛られる部分があるように感じます。

これは相手に寄るところがとても大きいので、理解ある方と結婚するならば一概にそうとは言えませんが、結婚する必要があるのかは一度考えても良いと思います。それは一概にその相手と別れるかを考えろという意味ではなく、なぜその人と一緒にいるのか、その人とその先どうなりたいのかというところがお互いにハッキリすれば、自分達が取るべき選択肢が見えてくるように思います。そのためにはまず自分の幸せとは何かを知ることから始めなければいけないはず。本作では、そんな過程をさまざまなキャラクターを通して観ることができます。

映画『ずっと独身でいるつもり?』田中みな実/稲葉友

この記事を書くには自分の経験も少しお伝えしたほうが良いと思いますが、私も振り返るといろいろ焦ってもがいた時期もありつつ、アンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピットの関係(結婚せずにパートナーだった時期)を見て、結婚にこだわる必要はないのかもと思ったこともあります(笑)。うちも長らくの事実婚状態を経て結婚しましたが、それが自分達のタイミングだったと思います。結局、いつ結婚しようが、もしくは結婚してもしなくても、自分にとっての結婚とは何かを真剣に考え始めた時に見えてくるものもあると思います。それは本作を観ていても伝わってくると思うので、最初から結婚がアリかナシかではなく、一旦真剣に考えてみるのも1つの手なのかもしれません。

映画『ずっと独身でいるつもり?』田中みな実

『ずっと独身でいるつもり?』
2021年11月19日より全国公開
公式サイト REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

© 2021日活

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト HERE 時を越えて【レビュー】

映像作家としてあらゆる挑戦を行ってきたロバート・ゼメキス監督は、本作でも新たな挑戦の成果を見せてくれています…

映画『アンジェントルメン』ヘンリー・カヴィル/エイザ・ゴンザレス/アラン・リッチソン/ヘンリー・ゴールディング アンジェントルメン【レビュー】

本作は「近年機密解除された戦時中の極秘ファイルを後ろ盾にしたダミアン・ルイス著 『Churchill’s Secret Warriors: The Explosive True Story of the Special Forces Desperadoes of WWII』」を原作としており…

映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年3月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年3月】のアクセスランキングを発表!

映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス 社会的成功が本当の幸せをもたらすとはいえない事例【映画でSEL】

昨今、ウェルビーイングという概念が広まりつつあり、社会的な成功は必ずしも幸福をもたらすとは限らないという見方も出てきました。その背景を、「自己への気づき」(SELで向上させようとするスキルの一つ)に紐づけて考えてみます。

映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶 片思い世界【レビュー】

広瀬すず、杉咲花、清原果耶がトリプル主演を務める本作は、『花束みたいな恋をした』の脚本を手掛けた坂元裕二と、土井裕泰監督が再タッグを組んだ…

映画『神は銃弾』マイカ・モンロー マイカ・モンロー【ギャラリー/出演作一覧】

1993年5月29日生まれ。アメリカ出身。

映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』 ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース【レビュー】

“ハッピー”や“ゲット・ラッキー”をはじめとする大ヒット曲を多数生み出し、他のビッグ・アーティストへの楽曲提供やプロデュースでも並外れた偉業を成してきたファレル・ウィリアムスの人生が初めて映画化…

映画『ANORA アノーラ』ユーリー・ボリソフ ユーリー・ボリソフ【ギャラリー/出演作一覧】

1992年12月8日生まれ。ロシア出身。

映画『片思い世界』公開直前イベント、広瀬すず/杉咲花/清原果耶/土井裕泰監督 存在するということに対しての肯定を、ここまで実験的に描いた物語もなかなかない『片思い世界』公開イベントに広瀬すず、杉咲花、清原果耶が揃って登壇

劇場公開を目前に控え、本作でトリプル主演を務めた、広瀬すず、杉咲花、清原果耶と、土井裕泰監督が舞台挨拶に登壇しました。

映画『おいしくて泣くとき』長尾謙杜/當真あみ おいしくて泣くとき【レビュー】

タイトルを聞いただけで泣いちゃいそうな作品だと予想できるので、逆に泣かないぞと…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス
  2. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  3. 映画『風たちの学校』

REVIEW

  1. 映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト
  2. 映画『アンジェントルメン』ヘンリー・カヴィル/エイザ・ゴンザレス/アラン・リッチソン/ヘンリー・ゴールディング
  3. 映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬
  4. 映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶
  5. 映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』

PRESENT

  1. 中国ドラマ『柳舟恋記(りゅうしゅうれんき)〜皇子とかりそめの花嫁〜』QUOカード
  2. 中国ドラマ『北月と紫晴〜流光に舞う偽りの王妃〜』オリジナルQUOカード
  3. 映画『ガール・ウィズ・ニードル』ヴィク・カーメン
PAGE TOP