ネタバレ注意!
※肝心なところはネタバレせずに書いていますが、何も知りたくない方は鑑賞後にお読みください。
今回は、高木ユーナによる同名コミックを原作とし、松居大悟監督が10年以上温め続けてきたという『不死身ラヴァーズ』を題材に、恋愛における過去・現在・未来の重要性について考えます。
現在にフォーカスする?過去・未来にフォーカスする?
まずは『不死身ラヴァーズ』の簡単なあらすじからご紹介します。主人公の長谷部りの(見上愛)は、幼い頃に出会った“甲野じゅん”(佐藤寛太)に運命を感じてから、彼との再会をずっと夢見て過ごしています。そして、中学生になったりのは、遂にじゅんと再会。直球で好きという気持ちをぶつけ、両思いになるものの、じゅんはりのの前から消えてしまいます。その後も、再びじゅんに出会うものの、両思いになると、この世に存在すらなかったようにじゅんは消えてしまいます。そうして、何度も同じ現象に疲れたりのは、また甲野じゅんに出会います。
甲野じゅんにやっと出会ってもどうせ彼は消えてしまうと恋愛意欲が失せていたりのは、大学で甲野じゅんに出会っても恋する気はない様子。でも、2人はある出来事を通して、心の距離が縮まり、やっぱりりのはじゅんに恋をします。相変わらず、りのはじゅんにストレートに思いをぶつけていくわけですが、今度はこれまでとは違う葛藤をすることになります。
本作で描かれているのは、まず「今」という瞬間の輝きです。どんな恋愛も、出会った当初は2人とも一緒にいるだけで満足なんですよね。そんな時期を経てずっと一緒にいたいと思うようになるからこそ、未来はどうなるのかと考えるのは当然です。そして、長く一緒にいればいるほど、良い出来事も悪い出来事も過去に蓄積されていきます。
りのというキャラクターは恋愛における過去と未来を重んじる人の象徴、じゅんは恋愛の現在を重んじる人の象徴と考えてみると、りのとじゅんのやり取りは、恋愛においてよくある風景に見えます。たとえば、自分にとっては大きな出来事が相手にとって小さな出来事だった場合、過去の認識の食い違いによって、価値観の差を感じて不安になることもあるかもしれません。また、生きていれば、就職、結婚、出産など、将来のことを考え、決めなくてはいけない場面に遭遇します。誰かと一緒に生きるなら、お互いの将来について話したくなることもあるでしょう。でも、逆の立場からすると、一緒にいる瞬間ではなく過去や未来のことばかり話題にされてもしんどい時がありますよね。
もっと本作の設定に寄せて考えると、毎日トキメキたい気持ちがある一方で、毎日気持ちを伝えないと伝わらないのも疲れるという喩えになっているとも受け取れます。出会った瞬間のキラキラも良いし、長く一緒にいる安心感も良い。結局、過去も現在も未来も大事だし、たまにはトキメキが欲しいのと同時に、黙っていても通じ合える関係でもいたいんですよね。でも、現実の恋愛ではそのバランスを保つのは難しく、お互いが努力しなければいけません。
本作は恋愛で必要なバランスをどうやったらうまく取れるのかを、ユニークな設定で描いています。ストーリーをそのまま楽しみつつ、皆さん自身の恋愛に落とし込んで観るのも良いのではないでしょうか。
『不死身ラヴァーズ』
2024年5月10日より全国公開
ポニーキャニオン
公式サイト
©2024「不死身ラヴァーズ」製作委員会 ©高木ユーナ/講談社
TEXT by Myson
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情報は2024年5月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。