映画『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』来日スペシャルトークイベント:ポール・メスカル、デンゼル・ワシントン、コニー・ニールセン、フレッド・ヘッキンジャー/橋本愛(東京国際映画祭審査員)
2024年11月4日、開催中の東京国際映画祭で『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』の来日スペシャルトークイベントが行われ、ポール・メスカル、デンゼル・ワシントン、コニー・ニールセン、フレッド・ヘッキンジャーが登壇しました。デンゼル・ワシントンは11年ぶりの来日だそうです。
本作は、前作の『グラディエーター』から24年の時を経て制作され、1作目と同じくリドリー・スコットが監督を務めています。このリポートでは、本イベントで出た質疑応答をご紹介します。
Q(ポール・メスカルへ):前作のマキシマス(ラッセル・クロウ)は最初から英雄でした。しかし、ルシアスは想像を絶する苦難、試練を通らなくては英雄にはたどり着けないという環境にあります。ポールさんはこのような過程をどのように捉えて役作りに挑まれたのでしょうか。
ポール・メスカル:
おもしろい質問をありがとうございます。脚本を最初に読んだ時も同じように感じました。伝統的な英雄というより、どちらかというとアンチヒーローに近い印象を持ちましたし、最初の行動の動機には一部復讐もあったと思います。ですが、だんだん英雄的なキャラクターになっていき、自分の家系、レガシーを継ぐという変遷を遂げるわけです。その両面を演じられたのは、役者冥利につきました。
Q(デンゼル・ワシントンへ):非常にミステリアスで狡猾、そして1作目には登場しなかったタイプのキャラクターを見事に演じられておられます。あまたのオファーがあるなかで、オスカーを受賞した名作の続編となる本作のどういうところに魅力を感じて出演を決められたのでしょうか?
デンゼル・ワシントン:
本当におっしゃるように、1作目でオスカーを受賞している名作の続編ということに加えて、素晴らしい脚本でした。そして素晴らしい監督と組めるということが動機となりました。
Q(コニー・ニールセンへ):来日した4名の方の中で、24年前の1作目から唯一続けて出演されています。前作から比べ時代が変わり、撮影、撮影規模、技術も進化しています。スケールもスペクタクルな内容になっているこの変遷をどう捉えていますか?
コニー・ニールセン:
セットの大きさという点では前作とそんなに変わらないんですけれども、リドリー・スコット監督は、過剰な贅沢、政治の汚職、腐敗、すべて自分達のためだけに利己的な少数のエリートだけが私欲を満たしているような状況に変化した様をさりげなく映像の中で示しているんですね。ですので、崩壊しつつあるローマ帝国で、皆が囚われの身になっているということを、作品を観ていただけるとおわかりになるかと思います。そして、今このテクノロジーの進化があるからこそ、素晴らしい監督が頭の中で思い描いている本当に独創的な世界をそのままスクリーンに映し出すことが可能になりました。監督は今回、彼がずっと描きたいと思っていたローマ帝国の世界観をありのままに、今のテクノロジーを使って映し出すことができたと思います。
Q(フレッド・ヘッキンジャーへ):何か撮影のエピソードをシェアしていただけますか?
フレッド・ヘッキンジャー:
リドリー・スコット監督は、360度どこを見回しても現実の世界と全く同じような、ローマ市自体を建ててしまったんですね。どこを見ても古代ローマ人が歩いていたり、別の方向を見れば動物達がうじゃうじゃ暴れていたり、本当にリアルな世界を作ってくれました。さらにスコット監督は常に最低でも8台から12台というマルチカメラを使って、ありとあらゆるところでカメラを回していて、すべてのスケール感が圧倒的でした。
皇帝カラカラの衣装は、1作目の衣装デザインも手がけた素晴らしいコスチュームデザイナーの方が手がけてくださったんです。最初の衣装合わせの時に一目見て、何もかもがギラギラの金ピカで、これはとんだ派手な衣装だと思いました。いわゆる欲、底なしの腐敗、ローマがどんどん崩壊して落ちていったというのを表現するのに、まさにぴったりの素晴らしいコスチュームだなと思いました。
Q(ポール・メスカルへ):バトルシーンについて、最も記憶に残っているシーンは?
ポール・メスカル:
本当に撮影中3、4週間ほど身体的に自分がボロボロになった時がありました(笑)。ちょうどさまざまなバトルを撮影していた数週間でした。たとえば、模擬海戦、あるいはサイに乗ったグラディエーターの男性と戦ったり、ヒヒの群れと戦ったり、本当に次から次へとバトルシーンを撮影しました。2作目と1作目を比べると、やはりバトルという意味でもかなり今回はレベルアップしているなと感じましたし、それは先ほどコニーさんがご指摘くださったように、今だからこそ使えるツールがあるからだと思います。それを見事に使いこなすのがリドリー監督ですし、物語的にも非常に大きなものがかかっています。そういう状況で、お客様皆に本当に心から楽しんでもらえるエンタメ性を持った作品を作るのは、リドリー監督ならではだと思っています。
Q(デンゼル・ワシントンへ):リドリー・スコット監督とのお仕事は以前にもありました。奇しくもラッセル・クロウさんとの共演作『アメリカン・ギャングスター』でしたが、今回はいかがでしたか?
デンゼル・ワシントン:
今回のほうが前作より楽でした。というのも、僕は客席からバトルを見ている立場ですので、大変な思いをしているであろうボールをひたすら見ていれば良かったという意味では楽でした。しかし、何よりも巨匠が司る映画なわけですから、巨匠に全幅の信頼を寄せて、完全に身を委ねることができました。監督が今どういうカラクリで何をやっているのかって、別に我々が知らなくてもよくて、それはお任せすればいいわけなので、その分、キャスト陣は自分の役、演技に集中することができました。これは監督が言っていたことなんですけれども、映画の70%から80%ぐらいはキャスティングで決まってしまうということです。今回は我々キャストを選んでいただいたわけですけれども、あとは監督がどういったツールを使うのか、それに向けて我々も備えなければならない、そういう準備さえすればいいという感じでした。何台もカメラを回しているわけですから、どこのアングルから撮られているかわからないし、どう編集されるかわからないわけなんですけれども、わからない分、自由に演技をすることができました。
Q(コニー・ニールセンへ):実物大で、360度のコロッセオが新たに出現して、そこでの撮影だったということですけれども、改めてそのスケールはいかがでしたか?
コニー・ニールセン:
実際のコロッセウムの現場では、360度全部を再現したわけではないんですね。実は前作から比べて若干前のほうを付け足して、ちょうど半分ぐらいの形なので、両アングルから撮ることができつつ、逆側には実はないんですけども、カメラの使い方によって、あたかも360度、そこにコロッセウムがあるように、昔ながらのトリック、技術的なトリックが使われています。そういった引き出しの多さも、やはり巨匠リドリー・スコットならではの素晴らしさだと思います。
Q(フレッド・ヘッキンジャーへ):ロイヤルボックスでのシーンがとても印象的です。ローマ皇帝として実際にそこに立たれたお気持ち、そして映像としてご自分をそこから見るというのはどういう感覚なのでしょうか。
フレッド・ヘッキンジャー:
まず皇帝に設けられた特別な観覧席というのは日陰なので、ポールが一生懸命、日を浴びながらまぶしくて暑いなか戦っている様子を優雅に観覧できたのは最高でした。もう一つは、先ほども話したように、とにかくスコット監督はマルチカメラですべてのアクションを同時に一斉にいろんな方向から捉えることを好みます。普通の映画なら1台のカメラでいろんな角度から撮って、それを後で編集で繋ぎ合わせて、一つのアクション、シークエンスが結構ギリギリに刻まれちゃうってことが多いと思うんですけれども、この作品はいろんな人の視点で、皆が一つひとつの出来事にリアクションしている様をひと続きで一気に撮れて、それを観る側も一気に体験できるというのが非常に素晴らしいなと思います。
Q(ポール・メスカルへ):バトルシーンでものすごいアドレナリンを画面から感じました。どうやってアドレナリンをマックスに出していたのでしょうか?
ポール・メスカル:
リドリーのおかげです。本当にその瞬間瞬間、毎分、毎分アドレナリンを与えてくれるのが監督でした。そして素晴らしいトレーナーにもついていただきました。
デンゼル・ワシントン:
何せ君は26歳だからね。
ポール・メスカル:
(デンゼルの言葉を受けて)リドリーとトレーナーさんと26という年齢ですね。でも本当に夢のようなセットだったので、アドレナリンが出るのは普通でした。なんといっても再現されたコロッセウムの中でリドリーの本質を受けながら、たくさんの人が愛している作品の続編に主演をしていたわけですから、そこでアドレナリンが出ないようなら、たぶん仕事を間違っていると考え出したんじゃないかなと思います。
観客からのQ(コニー・ニールセンへ):先日、1作目の『グラディエーター』の4Kデジタルリマスター版が公開されたので24年ぶりに劇場で観ることができました。本当に24年前に観た時と同じように、それ以上に本当に感動して、映画が終わった後、動けなくなるぐらいに感動しました。その後、初めて2作目の予告を見て、ルシアスがマキシマスの息子だと初めて知って、あまりに驚いて持っていた飲み物をこぼしてしまいました。コニーさんは前作を撮った当時、その設定をご存知でしたか?もしご存知でなければ、もしかしたらそういう設定なのかもとなど思われたりしたのでしょうか?
コニー・ニールセン:
当時もそういう話だということは知らなかったですし、まさかこういう形でお話がまた続くとも想像していませんでした。ただ、撮影中に私の心の中、頭の中だけで誰にも伝えず、役作りの一環で想像して秘密にしていることがあるんです。それを心の中に留めておくことで、演技をする時に相手とのやり取りでちょっとしたニュアンスが生まれる。そういったことをやるんですけれども、ラッセル・クロウが演じたマキシマスに自分の幼い息子を紹介するシーンで、まさに自分の中に抱えていた秘密が、ルシアスでした。自分の叔父と16歳の時に結婚をさせられ、実は結婚させられる前にきっとマキシマスとちょっとした恋をして、でも彼は一匹狼の剣闘士という身分の違いから当然実らない恋だったわけです。そして、自分の周りの男性達によって、自分の人生を操られたことへのせめてもの抵抗として、そういうことがあったに違いないと自分の中で抱えながら、あのシーンを演じていたんです。で、結果として、こういうことになりました。
一通り、質疑応答が行われたあと、東京国際映画祭審査員の橋本愛が、来日ゲストに感謝の気持ちを伝えたいと会場に駆けつけ、花束を贈呈しました。そして、あまりに緊張する橋本愛を見て、デンゼル・ワシントンが肩に手を回して励ます微笑ましい場面もありました。
橋本愛は「本当に心から敬愛する皆様にこうやってお会いできているのが現実のこととは思えずに、本当に震えています。今回審査委員という役割を超越してこのような機会に立ち会えたことに本当に心から光栄に思いますし、皆様が日本に来ていただいて、お話をお伺いできて本当に嬉しいです。ありがとうございます」とコメントし、東京や日本の印象、この映画祭の印象を尋ねました。
ポール・メスカルは「フレッドさんとカラオケに行きました。ゴールデン街の近くだったよね。非常に楽しんでおります」と答えました。
コニー・ニールセンは「明治神宮に行きました。そこで七五三の着物を着た子ども達がたくさんいて、本当に美しくて感動しました」と話しました。
フレッド・ヘッキンジャーは「本当にもともと日本映画が大好きで、小津安二郎監督や黒澤明監督といった名匠の監督にすごく影響を受けていますので、ずっと行きたかった日本にこうやって初めて来て、この映画祭に参加でき、とても光栄に思っています」とコメントしました。
ポール・メスカルはカラオケで何を歌ったのかを聞かれると、「シャナイア・トゥエインの“you’re still the one”、クランベリーズの“ゾンビ”とか、ABBAの“ダンシング・クイーン”“キャバレー”のテーマ曲とか。あとはちょっと記憶がぼんやりしてた」と照れ笑い。ポールとフレッドのフツーの若者らしい一面も垣間見えました。
物語は続いているものの、24年ぶりの2作目ということでどんな作品になっているか気になる方も多いのではないでしょうか。このスケールは映画館で観なければもったいないですよね!ぜひ激しいバトルの臨場感を大きなスクリーンで味わってください。
『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』来日スペシャルトークイベント:
2024年11月4日取材 PHOTO&TEXT by Myson
『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』
2024年11月15日より全国公開
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情報は2024年11月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
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