PARCO劇場お披露目&オープニング・シリーズ記者会見(以下、上演作品順)
- 「ピサロ」渡辺謙、宮沢氷魚(出演)
- 「佐渡島他吉の生涯」森新太郎(演出)、石田明(出演)
- 「大地」「三谷幸喜のショーガール」「三谷文楽 其礼成心中」三谷幸喜(作・演出)
- 「大地」大泉洋、山本耕史、竜星涼(出演)
- 「ゲルニカ」長田育恵(作)
- 「獣道一直線!!!」(じゅうどういっちょくせん)宮藤官九郎(作)、河原雅彦(演出)、生瀬勝久、池田成志、古田新太(出演)
- タイトル未定:前川知大
- 「藪原検校」(やぶはらけんぎょう)杉原邦生(演出)、市川猿之助(出演)
- 「レディ・マクベス」天海祐希(出演)
- 「月とシネマ」G2(作・演出) ※動画コメント:中井貴一(出演)
- 藤井隆(司会) ※「大地」出演
2020年1月15日、新しくなった渋谷PARCOの8階にあるPARCO劇場で、お披露目&オープニング・シリーズ記者会見が行われました。2020年3月から来年2月にかけて上演される作品のキャスト、スタッフが登壇。こんな機会でもないと一堂に会することはない豪華メンバーが会見を開きました。
司会を務めたのは藤井隆。一見真面目に司会をするのかと思いましたが、やはりフツーにやるわけはなく、ちょいちょい笑いを誘うトークで進行しました。司会の藤井はこの場ではPARCO側の人間として、執行役の井上氏を「イノウエ」と敬称なしで舞台へ招き、さっそく会場から笑いを誘いました。
株式会社パルコ執行役エンタテインメント事業部担当の井上肇氏は、「3月の13日からオープニング・シリーズがスタート致します。これからご登壇頂きます素晴らしい皆様によります14作品、2021年の5月まで、1年2ヶ月間で展開して参ります。どうぞご期待ください。PARCO劇場は客席数も増えまして、舞台も広くなり、設備も新しくなりました。楽屋も充実しております。このように新しい器に魂を込めるためには素晴らしいスタッフ、キャストによる作品の上映に加えて、たくさんのお客様にいらしていただいて、成り立つものだと思っております。どうぞ今後とも新しいPARCO劇場にご来場頂き、ごひいき頂きますようどうぞよろしくお願いいたします」と挨拶しました。
藤井はこれに対して「私も先ほど楽屋を使わせて頂きまして、実感しております。前回は2つの楽屋で、照明の横にも無理矢理楽屋を作ったりしておりましたけれど、解消されましたよね」とコメント。そして、藤井は「あの喫茶はどうなったでしょうか?」と問うと、井上氏「カフェも開業になります」と返し、藤井「良かった。じゃ、小さな腹の足しにならないホットドッグは…」、井上氏「それはちょっとメニューが新しく…」、藤井「じゃあ新しいメニューも期待して頂きましょう!井上でした」と、漫才のようなやり取りで会場を湧かせました。この後も、記者会見中は,何度も“イノウエ”いじりで笑わせてくれました。
「ピサロ」で、これまで山崎努が演じていたピサロを演じる渡辺謙は、「ほんとにこの劇場は僕にとっての、演劇人生にとってのエポックとなる劇場です。(中略)この舞台に立ってみると、本当にまたPARCOに戻ってきたんだなと、喜びと緊張とない交ぜになった、そういう今日は朝を迎えました。(中略)とにかく僕達は万全の準備をして、初日を迎えたいと思います。お客様にこの席を埋めて頂いて、一緒にこの劇場を作り上げていきたいと思います」と述べました。
今回の「ピサロ」では、渡辺謙がこれまで演じていたアタワルパを演じる宮沢氷魚は、「僕が初めてPARCOプロデュースの作品に出たのが、2018年の『豊饒の海』という作品でした。その作品で東出昌大さんと共演し、昨年は杏さんと(ドラマで)共演し、2020年は本丸の健さんとご一緒できるということでこれ以上光栄なことはありません。(中略)新しいPARCOらしい作品になると思います。劇場でお待ちしてますのでよろしくお願いいたします」とコメントしました。
佐々木蔵之介が主演する「佐渡島他吉の生涯」に出演するNON STYLEの石田明は、「登壇をする出演者としてのスケールダウンがいかついなと皆さん思っていらっしゃると思うんですけども、今日は僕を蔵之介さんだと思って頂けると有り難いんですが…。今回、関西の昔ならではのすごい貧乏町で育ったというところで、僕も大阪の貧乏な町で育ちましたので、そういったところもいろいろ出せたらなと思いますし、新生PARCOの顔に泥を塗らないように頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします」と挨拶しました。
3作品を手掛ける三谷幸喜は、「新しくできたPARCO劇場のシステムについてお伝えしたいと思います。皆さん座ってらっしゃる椅子なんですが、本番中に携帯電話を鳴らした瞬間8万ボルトの…」というと、すかさず藤井が「やめてください!」とストップ。さらに三谷は続けて、「それから、後方にレーザー銃が設置されております。これは招待されていたにも関わらず本番中寝てしまったマスコミ関係者を狙い撃ちするようになっています。それからですね、舞台のほうに目を向けて頂きたいんですが、この上に緞帳があるんですけども、必要のないカーテンコールが3回以上続いた時には自動的に降りてくる、そういう仕組みです」と説明すると、また藤井が「有り難いカーテンコールですよ」とツッコミ、寸劇が行われました(笑)。さらに三谷は「そんな新生PARCO劇場で、僕は3本の舞台をやらせて頂きます。関係者の皆さんに嬉しいニュースがあります。もう本(脚本)はできています」と話すと、会場から一旦拍手が起きましたが、「…頭の中に。あとは書くだけです」と続き、“そっか〜”という空気が流れました(笑)。
三谷幸喜の「大地」に出演の大泉洋は、最初楽屋についていろいろ話していると、藤井からそれよりも抱負を述べるように促され、「抱負と言われましてもですね、どんな話かも何にも知らないわけです。脚本家の頭の中にはあるらしいんですけど、それも教えられてないですし、先ほど脚本家にお会いしたところ、僕の顔を見てビックリされたんです。“何でいるんだ?”みたいな顔をされるんです。“いや、出るんですけど”って言ったら、“まだ決めてないのに”って、脚本家いわく、今日が私の最終審査だということで、今日のこの会見で私はこの壇上に出られるかどうか決まるそうです。何とか出たいなと思います。脚本家はすべて頭の中にあるとおっしゃっていましたが、私は頭の中にすらないと思っております。どんな舞台になるのか、とにかくおもしろい舞台になることを祈るばかりでございます。どうぞよろしくお願いいたします」と、出演への思いをアピールしました。
「獣道一直線!!!」の宮藤官九郎は、「“獣”がついてれば何でもいいのかなと(笑)。内容はこの後、打合せをして決めます。よろしくお願いします」と笑顔を見せました。
生瀬は「今インターネットで調べると、AVの「獣道一直線!!!」っていうのが出ます。一応それを舞台化したものだとイメージして頂ければといいと思います」と笑いを誘いました。
古田は「我々はどれだけ下品なことができるかと企んでおりますので、芝居が大好きな人は観に来てください」とコメントしました。
「藪原検校」主演の市川猿之助は、「2月と聞いて、演劇界では一番客が入らない月で、杉原というそんなにまだ有名でもない演出家で、一番貧乏くじのような芝居をやりますけれども、まあ入らない月でもせいぜい頑張って、客席の半分くらいは招待者なしで埋めたいと思います。できればほんとは三谷さんの作品に出たかったです」と自虐ネタで会場に笑いを起こしました。ちなみに杉原氏とは歌舞伎座の弥次喜多シリーズで4年間、スーパー歌舞伎でも共に演出をしたり息はピッタリということです。
「レディ・マクベス」に出演する天海祐希は、「PARCO劇場には、21年ぶりに出演させて頂きます。宝塚(歌劇団)をやめて、初めての舞台はこのPARCO劇場でした。またこうして新生PARCO劇場に立たせて頂けるということは、とてもとても幸せで、きっと大きな私のターニングポイントになるんだろうなと期待しています。シェイクスピアの“マクベス”に出てくるマクベス夫人をなぞるだけでなく、マクベス夫人の人となりと言いますか、なぜ彼女がその人生をそのように歩んだのかというところにフォーカスするということで、新作でございます。私もとても楽しみに、ドキドキしながら待っています」とコメントしました。
「月とシネマ」の中井貴一は登壇ができなかったので、コメント動画で登場しました。急遽コメントをもらったということで、舞台のスクリーンに映すというのが間に合わず、iPadで流すというある意味斬新な方法がとられました(笑)。中井は「初めてストレートプレイを観に行ったのがPARCO劇場でした。その劇場にいる時間がとっても宝箱の中にいるような気がしていて、この気持ちは何なんだろうととても不思議に思ったことがあります。その経験をした時から、自分がもし舞台に乗るようなことがあったら、PARCO劇場に乗せて頂きたいというのが私の夢になりました。そして、旧PARCO劇場では何本もお芝居をさせて頂いて、夢のような時間を過ごさせて頂きました。その劇場がなくなるときは悲しかったですけど、今度新しい劇場ができ、来年になるんですけど、その舞台に乗せて頂くことになって、ここからまた新しいPARCOの歴史を作っていくんだなという思いでいっぱいです」と、振り返りつつ、今後の期待を言葉にしました。
この時点では、だいぶ先に上演の舞台もあり、まだ何も出来上がっていなかったり、稽古も始まっていないので、質問への返しも難しい部分があるようでしたが、「お互いに聞きたいことはありますか?」という質問では、三谷が宮藤に、「台本はいつ頃から書き始めますか?」と聞きました。自身の作品は10月から上演の宮藤は「いつ頃からですかね〜?4月、いや3月くらいでいいですかね」と回答。三谷は「僕は5月の頭から稽古なんですが、まだ本は僕の頭の中にあるんですが、まだできていない状態なんです。これってそんなに大変なことじゃないですよね?」と同意を求めると、宮藤が「常識の範囲内だと思います」と答え、三谷を安心させました。
こんなに豪華な面々が揃って、PARCO劇場さんの気合いも大いに感じられました。魅力的な作品がズラリ揃っていて、どれも観てみたいですね。映画で活躍する俳優の方々を舞台で観るのも新鮮です。映画好き女子の皆さんもたまには舞台を観に行ってはいかがでしょうか。
PARCO劇場お披露目&オープニング・シリーズ記者会見:
2020年1月15日取材 PHOTO&TEXT by Myson
PARCO劇場オープニング・シリーズ
2020年3月13日から上演開始
公式サイト