映画業界人インタビューVol.4 株式会社TSUTAYA 映像レンタル 邦画MD 宮田武雄さん【前編】
Category : 映画業界人インタビュー , 劇場映画 , ブルーレイ/DVD , 大学生・専門学校生
【映画業界の方にインタビュー】第4弾は、エージェントのおこめとパンが単独で担当しました。2回に渡ってお届けします。
入社していろいろな仕事を経て、今の仕事のおもしろさに気付いた
おこめとパン:この業界に入ろうと思ったきっかけと、どういう経緯で今のお仕事に就かれたかお聞かせください。
宮田さん:子どもの頃から映画は好きだったんです。それこそTSUTAYAに行ったりしてたんですけど、あまり明確に「映画業界に絶対入るんだ!」とは考えていませんでした。新卒で入った会社も全然映画に関係のない会社で、営業職として入ったんですね。それで、1年半くらいして、転職をしようと思いまして。その会社がいやだった訳ではないんですけど、一人前になるのに10年くらいかかる業界だったんです。どの業界もそうかもしれないし、それはそれで素敵な業界なんだけど、10年かけて自分はこれをやりたいんだろうかと、ふと思いました。転職先を探していた時は、映画という括りより、新店インストラクターっていう部分を見て「なんかコレ、ちょっとおもしろそうだな」と思ったんです。 “新店インストラクター”っていうのは、例えばTSUTAYAの新しいお店が北海道、愛媛県にできますっていう時に、オープン直前1週間から2週間くらい前に現地に入るんです。何にもないガラーンとした店内に什器を組み立てて、商品を段ボールから開けて陳列してポップをつけて、いわゆるTSUTAYAをつくる。あとはアルバイトさんにレジを一から教えたりして、オープン日に去る。そのようなお仕事だということは後からわかったんですが(笑)。
一同:あはははは(笑)。
宮田さん:教えることに携われたら良いなという切り口と、「映画も嫌いじゃないしな」くらいの感覚で、たまたまTSUTAYAに入ってみたら、実際はTSUTAYAでアルバイトをしたこともないし、レジの打ち方もわからないし、「何をアルバイトさんに教えるんだ?」という状態でした。もちろん、最初は先輩のインストラクターについていきながら、東京にいる時は自分も店舗の研修に行って、まず自らレジを打って接客や売り場もつくって覚えました。翌日には、さも元から知っているかのように昨日自分が教わったことを、他の人に教えるということを3年くらいやって、100店舗くらいは行きましたね。その後、実際に静岡と東京の店舗で店長をやったり、同時にバイヤーもやりました。その後、“Filmarks(フィルマークス)”という映画アプリのTSUTAYA側の窓口に携わって、ひょんなことから今のお仕事になりました。
当時はどちらかと言うとお店に自分が入って、売り場を作ったり、お店を経営する立場で数字を見たり、お客さんと接するなかで、仕掛けた企画が当たったおもしろさを感じたり、「コレ良かったけど、他にもっとないの?」と言われたりして、それから「作品に関わるのって、おもしろいな」と思い始めました。その時は入社して既に5年くらい経ってたんですが、こんなことに興味を覚えるなんて、自分でも思いもよらなかったです。
おこめとパン:そういったお仕事の中で、今までで一番楽しかったお仕事と、ご自身のお仕事のやりがいをお聞きしたいです。
宮田さん:今やっている邦画のマーチャンダイズ(MD)っていう仕事の中では、やっぱり自分が挑戦した作品がうまくお客さんに気に入ってもらえて、たくさん借りられると単純に嬉しいですよね。あまりまだ世間の人に知られていない小規模の作品でも、良いものは大きく展開して、それがたくさん借りられた時はやっぱり嬉しいです。
局長:DVDになってからが強い作品って結構ありますよね。ご自身で印象に残っているタイトルはありますか?
宮田さん:『全員死刑』という映画がありまして、イケメン俳優の間宮祥太朗さんが主演で、結構激しい、エッジの効いた作品です。『冷たい熱帯魚』のプロデューサーの千葉善紀さんが関わっていて、とにかく小林勇貴監督の才能がすごいなと思って、カルチュア・パブリッシャーズ(TSUTAYA独占・先行タイトルを扱う会社)に掛け合いました。最初は担当者もビックリしていたみたいで(笑)、言い出した自分は責任重大だなと思いました。でも、5月にリリースされて結構レンタルされています。一年くらい前から動いていたので、今までMDをやった中で一番長く関わった作品かも知れません。
局長:今は、TCP(ツタヤクリエイターズプログラム)*もありますね。
宮田さん:そうですね。あれも本当に長いプロジェクトで、今度第1回TCP作品の『嘘を愛する女』が7月18日にリリースされるんですけど、2015年のグランプリ作品なので、もう足掛け3年ですよね。次は『ルームロンダリング』っていう、2015年の準グランプリ作品が7月7日から劇場公開されます。この後2016年、17年の作品が複数ありますし、今TCP2018が動いています。長期プロジェクトになりますが、俳優さんも含めてここから大きく羽ばたいていく監督がいたら良いなあって思います。
*TCP(ツタヤクリエイターズプログラム)とは <公式サイトより引用>
TSUTAYAには、毎日のように数多くの映画ファンのお客さまが来店されます。そんな映画を愛するお客さまに、もっと新しい感動を、もっとワクワクする作品をお届けしたい。TSUTAYAでは、オリジナル映画企画とクリエイターの発掘を目的に、「良質な映画企画=名作のタネ」を募集しています。2015年から始まり、以降毎年開催しているTCPでは、これまでに総応募数(3年間)1,164もの作品企画の中から、11作品が受賞作に選ばれ、映画化にむけて動き出しています。→2018TCP公式サイト
今回の記事担当:おこめとパン
取材日:2018年5月16日
後編では学生のうちにやっておいたほうが良い事などをお聞きしました。→【後編を読む】
★TCP(ツタヤクリエイターズプログラム)最新作
『ルームロンダリング』
2018年7月7日より劇場公開
公式サイト
監督:片桐健滋
出演:池田エライザ/渋川清彦/健太郎/光宗薫/オダギリジョー
配給:ファントム・フィルム
5歳で父親と死別し、翌年に母親が失踪した後、祖母に引き取られて育った八雲御子は、18歳で祖母が亡くなり、叔父に面倒をみてもらうことに。度重なる不幸で自分の殻に閉じこもってしまった御子は、叔父の仕事を手伝うが、それはワケあり物件に自分が住み‟物件を浄化する“ルームロンダリングの仕事だった。幽霊が見えてしまう御子は、そのワケあり物件で、さまざまな霊に頼られることになり…。霊としか交流しなかった主人公が、ルームロンダリングを通して、人間として成長していくハートフルな物語。
©2018「ルームロンダリング」
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