Review『真っ赤な星』
Category : エージェントによるオリジナル企画 , 劇場映画 , 大学生・専門学校生
心の拠り所を持たない14歳の少女が、愛に飢えた27歳の女性に、恋心に似た憧れを抱く。標準語が話される片田舎で、一見穏やかな退屈さを見せた夏休みが、急速に崩壊へと向かう。
大好きな誰かに近づきたくて、その人の癖を真似てみたり、最近読んだと聞いた本に手を出したり、LINEのプロフィールに設定された音楽をyoutubeで検索したり。その曲の良さがわかったら話しかけようと決めて…、でもある時突然ふとした瞬間に「その人は私とは全然違うんだ」と気づく。そういう経験が誰にでもあるんじゃないだろうか。大好きなんだけど分かり合えないと誰かに対して思うこと。運命の繋がりの不在を、ちょっぴり悲しんで終わること。
私はもう、そういうことに対して本当に諦めが早くて、違う人間なんだから仕方ないなと思ってしまう。そうあることが”大人”だと、どこかで決めつけている。けれどこの映画で、主人公の陽(小松未来)は易々と私の前に立ちふさがる壁を乗り越え、一直線に弥生(桜井ユキ)の人生に突っ込んでいった。
「もっと弥生ちゃんの近くに行きたい」
「弥生ちゃんは何が欲しい?」
私がそんなことを言われたら、一体なんて返事すればいいの?筋の通った答えを準備させる暇もなく、映画は全速力で101分を終えました。
これは、神様のいない国でしか撮り得なかった映画だ、と思います。この映画が抱えている、もう一つの大きな問題についても。でも神様の不在を嘆いたり、どうしようもないから諦めようとすることもなく、”本当に欲しいもの”に対して彼女たちは必死で貪欲です。だからひどく傷つきもする。「でも、生きるってそういうことでしょ?そうじゃなきゃ、生きてるって言えないでしょ?」と、監督や制作陣の叫びが、静かな画面の向こうから響いている。この映画は、諦めを覚えた私を許さない。
今この20歳の終わりに、この映画に出会えて良かったなと、私は心から思います。
不必要なものが何一つない感情のむき出しを、ぜひ劇場で目撃してください。
Review by 染井
『真っ赤な星』
2018年12月1日より全国順次公開中
監督・脚本:井樫彩
出演:小松未来/桜井ユキ
公式サイト
©「真っ赤な星」製作委員会