映画業界人インタビューVol.1 ギャガ株式会社 映画宣伝部 宣伝プロデューサー 竹本誠吾さん【後編】

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映画『ホース・ソルジャー』クリス・ヘムズワース

映画業界人インタビューVol.1 ギャガ株式会社 映画宣伝部 宣伝プロデューサー 竹本誠吾さん【後編】

前回に引き続き、ギャガ株式会社、宣伝プロデューサーの竹本さんのインタビューをお届けします。インタビューを担当したのは、エージェントのらいらいとサンです。

 

宣伝方法に正解はない。だから楽しい

らいらい:年間どのくらい映画を観られるんですか?

映画『ホース・ソルジャー』クリス・ヘムズワース

竹本さん:昔は結構観てました。毎週土日に2、3本はしごしたりとか。多い時では、劇場鑑賞とビデオ鑑賞合わせて200本くらいは観てたと思います。今は子どもが小さいので、やや劇場での観賞機会は減りましたが、宣伝に紐づくものを観ますね。今僕が担当している『ホース・ソルジャー』は戦争映画なので、最近はいろいろな戦争映画を観なおしました。作品だけでなく、どんな風に宣伝してたのかなってチラシ予告も研究したりします。

らいらい:お仕事相手の方と、よく映画のお話はされるんですか?

竹本さん:人にもよりますが、やっぱり今公開している作品については詳しく話しますし、それに紐づく旧作の話はしますよ。あとは飲み会とかで好きな映画の話になることもありますが、好きな映画っていっても、答えるのが意外に難しいんです。基本どんな映画も好きなので。そういう点では自分のイメージも持ってもらう意味で、好きな映画は『ロッキー』って言ってます。会社でもよく『ロッキー』のTシャツを着てるんですけど、「ぽいでしょ?」って感じになるから(笑)。

サン:映画宣伝の仕事をしていて良かったと思える瞬間は何ですか?

竹本さん:ありがちですけど、自分が宣伝している作品がヒットすることです。達成感という意味では、設定した目標が達成できたとき、プランしたプロモーションが形になったときは嬉しいです。映画の宣伝は劇場公開日に向けて、宣伝をしていきます。その過程で、例えば雑誌なんかに掲載をお願いして載せてもらって、そこでちゃんと映画の内容が語られて、お客さんに届けられるきっかけを作れたりすると、良かったなと思います。ポスターや邦題など、「こう伝えたいから、こうしたい」と思ったものが採用されるのも、もちろん嬉しいです。映画を人に届けるにあたって、配給宣伝は映画の中身は作ってないけど、フィルムメイカーの意思を尊重し相談しながら、伝える内容を噛み砕いたり、何かプラスオンができたり、それが形になっていくのも嬉しいです。時に世の中の反応によって、凹むこともあるけれど、人によっていろいろな考え方があるので、それを受け入れながらやるのはやり甲斐があります。扱っている商材が楽しいものだからっていうのもあるかも知れません。

らいらい:宣伝する際に映画を観て、個人的におもしろくないと感じた作品でも宣伝しなければならないと思うんですが、そういう時はどうやってモチベーションを維持されるんですか?

竹本さん:宣伝って「宜しく伝える」ことかなと思っています。どんな映画にも良いところは必ずあるので、それを見つけて、膨らませてあげるのも、楽しい作業です。ある人がおもしろそうじゃないと感じても、別のある人はおもしろそうと感じるかも知れない。おもしろそうと思ってくれる人に一人でも多く伝えることが良いと思うので、つまらない、嫌だということはありません。ただジャンルの得意不得手みたいなのはあると思います。

らいらい:ご自身の好き嫌いは介入させないんですね。

竹本さん:そうですね。宣伝は映画を広めていく過程ですし、その過程は一通りしかないってことではないと思います。宣伝とは、フィルムメイカーの想いをくみ取りながら、観てもらうべき人を想像(あるいは創造)し、形にして伝えていく仕事かと。映画が公開したとき、観客の数が一人でも多くなるよう選択しながら進めていますが、最終的には蓋を開けてみないとわからないところもあります。確かに好みの映画なら自分=観客と想像しやすいことはあります。ただ映画にはいろいろな考え方や見方があって然るべきなので、それすらそれだけが正解とも限らない。どんなお客さんにどう届けるかを提示する仕事として、やり甲斐がありますし、日々難しいとも感じます。

今回の記事担当:らいらい
■取材しての感想
映画宣伝について語る竹本さんの表情がとても楽しそうだったのが印象的でした。その表情は“好き”を仕事にされているからこそなのだと思いました。映画宣伝の魅力が大いに伝わってくる時間でした。ありがとうございました。

取材日:2018年5月10日

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映画『ホース・ソルジャー』クリス・ヘムズワース/マイケル・シャノン/マイケル・ペーニャ/トレバンテ・ローズ/ロブ・リグル/ウィリアム・フィクトナー★竹本さんがご担当の映画
『ホース・ソルジャー』
好評劇場公開中
公式サイト
監督:ニコライ・フルシー 製作:ジェリー・ブラッカイマー
出演:クリス・ヘムズワース/マイケル・シャノン/マイケル・ペーニャ/トレバンテ・ローズ/ロブ・リグル/ウィリアム・フィクトナー/エルサ・パタキー
配給:ギャガ

これまで秘密にされてきた、9.11直後にあった衝撃の事実を映画化。敵勢5万人に対し、たった12人で戦いに挑んだ米軍騎馬隊の活躍を描く。アベンジャーズ“ソー”としてお馴染み人気俳優クリス・ヘムズワース主演、実妻との夫婦役での共演も話題になっている。

映画『ホース・ソルジャー』クリス・ヘムズワース

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講師マイソンPROFILE

トーキョー女子映画部主宰/学生映画宣伝局・局長。
映画分野を中心に、紙媒体、WEB媒体の編集者、ライター歴は約25年(2024年11月現在)に及ぶ。また、大手教育系企業の紙媒体、WEB媒体でも約10年間、ディレクターとして従事した。
インタビューはハリウッドスターを含め、国内外の映画人はもちろん、宇宙飛行士や各分野の専門家、経営者、一般の方まで600名以上に取材経験あり。保有資格等は、認定心理士、キャリアコンサルタント/ビジネス著作権検定上級。
同志社大学文学部英文学科卒業。一般企業勤務を経て、2010年に株式会社TSトーキョーを起業(現職)。社会人学生として、武蔵野大学人間科学部人間科学科心理学専攻(通信制)3年編入にて卒業。その後、某大学院に進学、2024年現在は博士後期課程に在学中。研究専門分野は心理学と映画。資格の学校で臨床心理学の講師歴あり,某大学でアカデミックライティングの指導員も務める。


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私も学生の頃に、こんな企画があったらやってみたかったな〜という思いも込めて立ち上げました。学生の間にしかできない体験をしてもらい、その体験を通して発せられる情報が、映画ファンの拡大に繋がればステキだなと思います。学生の皆さんだからこそ出てくるアイデアやエネルギーに触れて、私達スタッフも一緒に宣伝を楽しみたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします! 私は物心がついた頃から映画が大好きで、大学を卒業すると同時に大阪から上京し、ただ映画が好きという気持ちだけで突っ走ってきました。これまで出会った多くの方のおかげで、今は大好きな映画のお仕事をさせて頂いています。地方の学生の皆さんもぜひ参加してください。課題以外でも、皆さんと集まってお話ができる機会も作りたいと思いますし、少しでも皆さんの将来のお役に立てれば嬉しいです。