優柔不断なモテ男と、彼を熱烈に愛する男性の激しい恋を描いた『窮鼠はチーズの夢を見る』で、キーパーソンとなる岡村たまきという役を演じた吉田志織さんにインタビューをさせて頂きました。複雑な関係のなかでもがくたまきというキャラクター、そして彼等の関係を、吉田さんはどう捉えていたのでしょうか?
<PROFILE>
吉田志織(よしだ しおり):岡村たまき 役
1997年3月21日生まれ、北海道出身。2017年に、テレビドラマ『クズの本懐』で女優デビュー。以降、ドラマ『突然ですが、明日結婚します』『モブサイコ100』『仮面同窓会』『湘南純愛組!』、映画『心が叫びたがってるんだ。』『honey』などに出演。2019年には、映画『チワワちゃん』のチワワ役に抜擢され注目を集めた。映画『窮鼠はチーズの夢を見る』では、岡村たまき役を好演。
※前半は合同インタビュー、後半は独占インタビューです。
自分のものにならないっていう、それが執着なのかも知れません
マイソン:
脚本を読んでいた時の印象と比べて、実際に演じてみて新たに発見したことはありますか?
吉田志織さん:
台本を読んだ時よりも、実際に演じてみて思っていた以上にたまきとして精神的に辛かったです。何とも言えない感じで恭一とずっと接していて、表向きは大丈夫と言いつつも、やっぱり求めてしまうので、彼を気遣って何も言えないのは、思ったよりも辛かったです。
マイソン:
恭一と今ヶ瀬の濃厚なラブシーンがあり、たまき以外のキャラクターとの間でもいろいろなことが起きていましたが、本編を観た時の印象はどうでしたか?
吉田志織さん:
私はラブシーンも含めて、本当に美しいなって思いました。私は人間同士が真剣な恋をして、相手を思う気持ち、思われる気持ちが、本当に繊細にリアルに描かれているなって感じました。映画が始まってからずっと引き込まれていって、台詞がすごく心にきました。心底惚れるとその人だけが例外になっちゃうとか、本当に節々に皆がハッとさせられるような台詞があって、そういうのを映像で観られるので、より一層入り込めるなと思いました。ラブシーンも美しくて、でも苦しいって思いながら観ていました。
マイソン:
本編を観る時は、誰に1番感情移入しましたか?
吉田志織さん:
たまきがメインで今ヶ瀬の気持ちもわかるかなって。
マイソン:
いろいろな視点で観られそうですね。
吉田志織さん:
そうですね。
記者A:
今ヶ瀬のメンタルってある意味すごいじゃないですか。あの執着って女性の吉田さんから見て、どう感じましたか?
吉田志織さん:
心底惚れているってことじゃないですか。心底惚れているっていうのは一人ひとりの基準になってしまうけど、自分のものにならないっていう、それが執着なのかも知れません。狩狩猟本能というか、獲物を仕留めていないから、気持ちもあるのかなって。仕留めたらそれはそれで良いのかも知れないけど、もしかしたら意外と今ヶ瀬のほうから飽きちゃうのかなとも思います。実ってもあのままなのかわかりませんが、執着の他にも何かあるのかなって思います。
記者A:
個人的な恋愛観としてはどうですか?
吉田志織さん:
私は諦めます。友達とかに「もう無理だわ!」って言って、本当に好きだったら泣いてすっきりして終わらせます。
記者A:
今回女優として1つ得られたものがあるとしたら、どんなことですか?
吉田志織さん:
ずっとカメラを意識して今までいっぱいいっぱいで、経験がなくて自分の中でできていなかったことを教わったり、良い刺激を受けて、今までよりも少し自分の気持ちに余裕が出たと思います。すごく考えることも多くて、たぶん今までで1番大変だったと思うんですけど、どこかで客観的に見ることができている自分がいたり。そういうことが今まで本当に小さかったというか、そこの幅が大きくなった気がします。
物心が付いた時に初めて観た映画は今も…
マイソン:
芸能界は端から見るとすごく刺激的な世界だなって思うのですが、入ってみて1番驚いたことはありますか?
吉田志織さん:
北海道にいる時は本当にキラキラして見えていて、町を歩いていて「キャー」って言われるのとかすごいなって思っていたけど、現実にこうして入ってみると、プライベートがないっていうのは実際すごく大変だろうなって思います。そういうテンションの差はビックリしました。
マイソン:
キラキラしているけど、実際はめちゃめちゃ大変なんだなって。
吉田志織さん:
はい。本当に皆さん影なる努力をしていてそこに立っているんだなって思いました。
マイソン:
俳優さんのお仕事をやっていて、演技がおもしろいと思ったきっかけはありますか?
吉田志織さん:
作品毎に思います。何回も撮って、自分の中でもがいてもがいて「じゃあ、どうすれば良いんだろう」ってことを考えて、やっとOKをいただいて、監督が「今の良かったよ」と言ってくださった時にやっぱり楽しいなって思います。あとは誰かとぶつかり合ってお芝居をする時はすごく楽しいなって思います。
マイソン:
日常で思わずこういうところに目が行くとか、例えば映画を観客として観ていて、こういうところをすごく観てしまうということはありますか?
吉田志織さん:
表情ですね、目とか。洋画は字幕と役者さんの表情を同時に追うのが大変で、だったら吹き替えで観たら良いじゃんって。話がズレちゃいましたが、1番表情を観ています(笑)。
マイソン:
確かに字幕で観る時は忙しいですよね(笑)。観る映画を選ぶ時はどう選んでますか?
吉田志織さん:
パッケージとかポスターを調べて、「なんかおもしろそう」っていう直感で選んでいます。あと「この監督の作品が好きだな」って、いろいろ観たり、もちろんその時の気分で選ぶ時もあって、「今日は重いのが観たい」ってなったらそれを観たりもします。
マイソン:
1番影響を受けた作品というか、印象に残っている作品はありますか?
吉田志織さん:
私は小さい時から『タイタニック』が大好きで、それが女優さんを目指すきっかけになったというか、この中に入りたいと思ったのがきっかけです。キャラクターもストーリーも音楽もすごく好きなんです。私は音楽が好きなので、映画と音楽の好みがバンと合っていると余計に「好き!!」ってなっちゃうんです。だから『タイタニック』は本当に好きです。物心が付いた時に初めて観たのが『タイタニック』だったからというのも絶対にあると思います。「この2人はすごく愛し合っているんだ」とか、「この人が好きなんだ、この人と結ばれたいんだ」とか、幼いながらにズーンと来て、その衝撃がずっとあるんだと思います。
マイソン:
大人になってからまた観たりしますか?
吉田志織さん:
観ます。やっぱり観ちゃうんですよね。
マイソン:
大人になってから観て、子どもの時にはわからなかった発見などはありましたか?
吉田志織さん:
私の中で『タイタニック』は一緒かも知れません。ピュアなまま観られて、嫌味なものがない感じが好きなんです。
マイソン:
じゃあ初心じゃないですけど、原点に返るような感じですか?
吉田志織さん:
はい。今も観たいなと思ったら、家でストレッチをする時とかでも観ます。
マイソン:
じゃあずっとお供の映画ですね!ありがとうございました。
2020年8月13日取材 PHOTO&TEXT by Myson
『窮鼠はチーズの夢を見る』
2020年9月11日より全国公開
監督:行定勲
出演:大倉忠義/成田凌/吉田志織/さとうほなみ/咲妃みゆ/小原徳子
配給:ファントム・フィルム
学生時代から「自分を好きになってくれる女性」と受け身の恋愛ばかりを繰り返してきた、大伴恭一は、ある日、大学の後輩・今ヶ瀬渉と7年ぶりに再会。「昔からずっと好きだった」と突然想いを告げられる。ただひたすらにまっすぐな今ヶ瀬に、恭一も少しずつ心を開いていくが…。
©水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会