塩田武士の「罪の声」を映画化した本作はフィクションですが、モデルにされている事件は昭和史最大の未解決事件で、映画を観ればすぐに「あの事件だ!」と思い出すはずです。そして衝撃なのは、タイトルにもなっていますが、事件に関わる“声”に隠された真相です。私はいつものように前情報を入れずに観たのですが、皆さんにもぜひそれをオススメしたい。「『罪の声』って何のこと?」と思いながら観始めて、まず驚きというか、星野源が演じる曽根俊也と同じショックを体感できます。物語の中では、曽根俊也の他、新聞記者の阿久津英士(小栗旬)も真相を追っていて、全く接点のない2人がどうやって繋がっていくのかも見どころの1つとなっています。
その“声”が何なのかを序盤でわかった瞬間から、真相に近づく度にドキドキが増すと同時に、得も言われぬ複雑な感情がずっとつきまとい、最後もズシンと重みを感じるストーリーになっています。そして、マスコミが及ぼす影響、責任、罪にも言及している点で、ただ犯人捜しをするだけのストーリーになっていない点も本作の魅力となっています。また、善と悪の定義は人それぞれで、罪を犯している自覚もなく人を傷つけていることがあるかもしれないことを気付かせてくれる作品です。事件の巧妙な仕掛けや、キャラクター設定、俳優達の演技、スリリングな演出もすべてを堪能してください。
終始ハラハラドキドキはありますが、吊り橋効果とは違って、自分があの人の立場だったらといろいろとイメージを巡らせて、不安をリアルに感じるというタイプのものだと思います。ただ、劇中で登場する夫婦のやり取りには、夫婦円満の秘訣がちらっとうかがえる部分もあります。すごく集中して観てしまうはずなので、鑑賞中は隣の人のことを気にかけている暇もないはずですが(苦笑)、映画そのものはとてもおもしろいので、誘ってハズレとはならない点で、デートで観ても良いと思います。
ネタバレになるので具体的には言いませんが、キッズ、ティーンの皆さんもとても感情移入できる内容になっています。事件のからくりが巧妙なので、キッズにはちょっと難しい部分もありますが、小学校高学年以上で、大人も観る一般の映画を観るようになっていたら、十分ついていけると思います。悪意はないとしても、自分の欲望、都合だけで、知らずに誰かを巻き込み傷つけていることがあるかもしれないことに気付かせてくれるストーリーなので、いろいろと考えさせられはずです。
『罪の声』
2020年10月30日より全国公開
東宝
公式サイト
© 2020 映画「罪の声」製作委員会
TEXT by Myson