モノが溢れている生活から一変、モノが0の状態からスタートして100日間過ごせるかを競い合う男性2人。なんでそんなことを始めたのかと思ったら、動機は勢いでしかないのですが、男の意地がぶつかりあって、熾烈な闘いへと発展します。本作はフィンランドで一大ムーブとなったドキュメンタリー映画『365日のシンプルライフ』をベースに大胆に脚色。自分の所有物は家から離れた倉庫に全部保管され、彼等は1日1アイテムだけ取り戻すことができます。寒い冬の日に部屋で真っ裸の状態から、彼等は1日いちにち生きていくために必要なものを優先して選んでいくので、文明の発達の過程をショートカットで観ているような感覚になります。モノを買うこともルール違反になるので、食は人からごちそうしてもらったり、会社の冷蔵庫のものを食べ漁ったり、あの手この手で生きていくのですが、消費活動が自由にできない日々の中で、彼等は徐々に「幸せって何だろう?」と考え、自分の今までの生活を見つめ直します。そんな彼等の会話の中には、幸せの定義がいくつか出てくるのですが、私達はモノを得ると同時に何を得て、何を失っているのか、改めて考えさせられます。
そんな深いテーマもありながら、1日目は文字通りスッポンポンからスタートして、その後もちょいちょい全裸シーンが出てくるので、肉体美が存分に披露されています(笑)。また、アホらしいやり取りが満載で、笑いを誘います。予想外のラストも、ある意味爽快で、いろんな意味で心の栄養補給になる映画です。
生きる姿勢、価値観に変化が起こることで、恋愛も変わってくる様子が見られます。なので、本作をデートで観た場合、ロマンチックな関係から現実的な関係に移り変わる展開を、それぞれどう受け止めるかで、相性がはっきりするかもしれないし、今は良くても長くは続かないと気付くかもしれません。逆に感覚が合うとわかったら、より心の距離が近づくのではないでしょうか。
本作は「モノやお金は人を幸せにするのか?」という究極の問いを追究する物語ですが、コミカルな人間ドラマなので、気楽に観ることもできます。主人公2人はもういい歳の大人ですが、子どもっぽいところも多く、幼馴染みの2人のやりとりには、キッズやティーンの皆さんも親近感がわくと思います。自分のお金で生活するようになったら、より心に刺さる物語なので、今1回観て、大人になって自立してしばらくしてからもう1回観てみると、見え方が全然違ってくると思います。
『100日間のシンプルライフ』
2020年12月4日より全国順次公開
PG-12
トランスフォーマー、フラッグ
公式サイト
© 2018 Pantaleon Films GmbH / Erfttal Film & Fernsehproduktion GmbH & Co. KG / WS Filmproduktion / Warner Bros. Entertainment GmbH © Anne Wilk 2018 / Pantaleon Films GmbH / Erfttal Film & Fernsehproduktion GmbH & Co. KG / WS Filmproduktion / Warner Bros. Entertainment GmbH
TEXT by Myson