本作は、1968年にニューヨークで上演された、マート・クローリーの舞台演劇“The Boys in the Band(真夜中のパーティー)”が原作となっており、本作(映画版)の脚本も原作者のマート・クローリー(ネッド・マーテルと共同脚本)が手掛けています。舞台初演当時の1968年はゲイが違法とされていて、カミングアウトする人もほとんどおらず、ゲイを真っ向から描いた革新的な作品として伝説となっています。
同じNetflixで配信されている『制作・出演陣が語るボーイズ・イン・ザ・バンド』によると、この戯曲は、“ストーンウォールの反乱”の前年となる1968年に、ニューヨークの小劇場で初演されました。3人のストレートと、6人のゲイの役者が所属事務所の反対を押し切って出演し、初演から50年経った2018年にブロードウェイでリバイバル上演された時には、全員ゲイをカミングアウトした役者が演じました。リバイバルされた舞台は2019年に第73回トニー賞を受賞し、このキャストがそのまま映画版となる本作でも同じ役を演じています。本作を観る前または後に『制作・出演陣が語るボーイズ・イン・ザ・バンド』を観ると、本作が辿ってきた時代背景はもちろん、ショービズ界の変遷、ゲイをカミングアウトした制作者や出演者の思いも知ることができるので、ぜひ合わせて観てください。
本作はある人物の誕生日パーティーに集まった、全く異なるタイプの9人のキャラクターが織り成す会話劇。ちょっとしたことが火種となって論争が起き、一見何気ない言葉で人間の奥深いところにまで切り込んでいく展開が何とも見事です。舞台と同じメンバーが演じているとあって息もピッタリで、全キャラクターがとてもリアルで活き活きとしています。セリフの一つひとつが本当に魅力的で、会話劇の醍醐味を味わうことができます。これがまたブロードウェイで上演されるなら、舞台でも観てみたくなる、素晴らしい作品です。
パーティーでの9人の会話を大きく展開させるテーマの中に愛があります。そのやり取りからは、彼らが愛にまつわるどんな経験をしてきたか、そしてこれからはどんな自分になろうとしているか、どう愛に向き合おうとしているかが描かれています。彼らが愛に臆病になりながらも一歩踏み出そうとする姿に、誰もが共感できるはずです。好きな人と一緒に観るのもアリだし、今の恋愛に疑問を感じている人は1人でじっくり観るのも良いでしょう。
原作舞台演劇が初演された1968年がどんな時代だったのかを知った上で観て欲しいので『制作・出演陣が語るボーイズ・イン・ザ・バンド』と合わせて観ることをオススメします。初演当時、この作品を作ることも上演することも、それに出演することも、観ることも大きなリスクを伴う行為だったと思います。でも、彼らのような人達のチャレンジが社会を大きく変えるきっかけとなったと思うと、作品の意義を実感できると思います。本当の自分を偽っていることに辛い人もぜひ観て観てください。
『ボーイズ・イン・ザ・バンド』
2020年9月30日よりNetflixにて配信中
※15歳未満の未成年者の視聴は推奨しません。
公式サイト
Brian Bowen Smith
TEXT by Myson