個性的なメイド服に三味線を持っている少女の姿はとてもインパクトがあり、一見破天荒な少女の物語なのかなと思いきや、青森県に住む素朴な1人の少女の等身大の物語であり、女性として成長し生きていく姿に共感できます。そして、青森の方言は外国語並に難解ながらどこかほっこりさせる魅力があって、主人公いとの朗らかさも伝わってきます。でも、そんないとがアルバイトを始めたことで、社会の荒波に揉まれていく場面では一気に緊張感が高まり、社会の厳しさや歪みも見えてきます。その背景には偏見や先入観などがあり、それは内容は違えど私達の身の回りにも当たり前にあることで、身近な物語に感じられます。またいとが自立しようとしている一方で、親の心配は尽きず、お互いの思いがすれ違う光景にも親近感が湧き、子ども目線、親目線のどちらでも観られます。そんななか、いとはどういう選択をして、どう自分らしく成長していくのか、その姿を観てください。
デートで観てロマンチックなムードになるようなタイプの映画ではありませんが、地方から出てきた方だったら地元の話をしたくなると思うので、鑑賞後はお互いの故郷の話で盛り上がれるかもしれません。方言も印象的に描かれているので、お互いの地元の方言を教え合うなどすると盛り上がれそうですよ。
ティーンの皆さんは等身大で観られる物語です。高校生以上ならアルバイトを始めようとしている方もいると思いますが、どんな仕事でも端から見るだけのイメージと実際に働いてわかる難しさや楽しさがあることがわかるでしょう。まだ未成年なので、何かやりたいことが出てきた時に保護者の許可や理解を得ないと取り組みづらいこともあると思いますが、本作の主人公いととその父の様子を見て、自分ならどうするか作戦を立てるのも良いと思います。
『いとみち』
2021年6月18日青森先行上映、6月25日より全国公開
アークエンタテインメント
公式サイト
© 2021 「いとみち」製作委員会
TEXT by Myson