レミニセンスとは、ジーニアス英和辞典(大修館書店)で調べると、回想、追憶、思い出、思い出させる物[事、人]とあります。またレミニセンスという心理現象があり、心理学辞典(有斐閣)によると「記憶の保持は時間経過とともに一般的に減少していくが、時に記憶直後よりもある時間を経過した方が再生が良い場合がある。その現象をレミニセンスという」とされています。映画では記憶潜入と翻訳されており、文字通り記憶の中の世界に潜入していきます。本作はサスペンスということで、主人公ニック(ヒュー・ジャックマン)が装置によってレミニセンスという現象を引き起こし、事件の関係者の記憶を辿って真相を追うストーリーとなっています。
その装置は人の記憶を投影して第三者がそれを見られるので、捜査で防犯カメラの映像を調べるよりももっと高度なことができるというわけです。すごく画期的な技術ですが、いつか誰かが生み出しそうですね。あとおもしろいのは、記憶はあくまで記憶している人が見ているものであり、その人の主観や感情が入ったものであるということに忠実な点です。そこが客観的に事象をそのまま映しているだけの防犯カメラとは異なる点で、そういうところに人間ドラマが織り込まれていて、丁寧にストーリーが作られていると感じます。また、ラブストーリーの要素も重要な役割を果たしていて、ヒュー・ジャックマンが演じるニックとレベッカ・ファーガソンが演じる謎の女性の美しいシーンによって観る者をこの世界に没入させます。物語の舞台となる水没しつつある世界もとても幻想的で、観客を一気に映画の世界に引き込む吸引力を持っています。
本作は、クリストファー・ノーランの弟で、これまで『ダークナイト』『ダークナイト ライジング』『インターステラー』の脚本を手掛けたジョナサン・ノーランが製作、その妻リサ・ジョイが監督を務めています。2人は海外ドラマ『ウエストワールド』でもタッグを組んでいて(製作総指揮、監督、脚本)、今後も夫婦での活躍に期待が膨らみます。すごく独特な空気感があるので、彼等が作り出す世界観、作品にハマる人もまだまだ増えそうです。
とてもロマンチックなシーンが何度も出てくるので、デートにピッタリのムードです。切ない展開も出てくるので、主人公の気持ちにシンクロしながら観ると、相手への思いも一層盛り上がりそうです。ちょっとだけ頭を使う内容ではあるので、その得手不得手で観終わった後の充実感はズレが出るかもしれません。そういう点では、過去にどんな作品を観たことがあるかなどを聞いた上で誘ったほうが良いでしょう。
キッズにはちょっと難しいところもありそうなのとPG-12でもあり、落ち着いた大人のムードが漂う作品なので、もう少し大きくなってから観るほうが楽しめるかもしれません。ティーンはだんだんこういった作品に興味が湧く人も出てくると思うので、映画にハマり始めた方にもオススメです。後半はいろいろな推理ができるので頭の体操にも良さそうです。恐らくなかなかあの結末は想像できないと思いますが、先読みをするのが得意な方はどんな風にストーリーが終わるのか考えながら観てみてください。
『レミニセンス』
2021年9月17日より全国公開
PG-12
ワーナー・ブラザース映画
公式サイト
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TEXT by Myson