戦時中の工作活動にまつわる実話はいろいろ出てきますが、本作を観ると特に、戦況を変えるためにこんなに細かいことまでやっていたのかと驚かされます。そしてやっぱり時代は違えど、戦いの勝敗の鍵を握るのは情報戦なのだなと実感させられます。
本作の舞台は第二次世界大戦中の1943年、イギリス。チャーチル首相が率いるイギリスは、ナチス・ドイツを倒すため、イタリアのシチリアを攻めようとしていましたが、ドイツ軍が守りを固めていました。そこで英国諜報部(MI5)は、ヒトラーを欺くために高級将校に仕立てた死体にニセの文書を持たせ、ナチスが勢力を振るう圏内の海岸に漂着させる作戦“オペレーション・ミンスミート”を発案します。この作戦名を名付けたのは、なんと“007”シリーズ、ジェームズ・ボンドの生みの親イアン・フレミング(ジョニー・フリン)。緊張感が終始あるなか物語は進んでいきますが、ちらっと出てくる作家いじりのシーンにはユーモアがあって印象に残ります。そして、戦後にこのミンスミート作戦を指揮した元弁護士のモンタギュー(コリン・ファース)がノンフィクションを出版したことで、当時の真相が明らかになりました。さらに21世紀に入るとMI5が機密ファイルを公開し、モンタギューが当時書くことができなかった秘密も含めて、英国の作家ベン・マッキンタイアーが「ナチを欺いた死体 – 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実」として出版しました。それが映画化されたのが本作です。
本作は戦争映画といっても戦闘シーンはなく、頭脳戦を描いています。作戦を立てていくなかで、それに関わる人間同士のドラマも丁寧に描かれていて、戦争映画の中でも良い意味で少し異質な作品と言えます。先入観を持たずに観てみてください。
ロマンチックなシーンもありますが、複雑な関係が描かれていて、普通に交際しているカップルからすると、共感できるようなできないような何ともいえない感覚になるかもしれません。できれば1人でじっくり観るか、友達と一緒に観るほうが余計なことを考えずに集中して観られるように思います。
ただ世界史を勉強しなければいけないとなると、苦手意識のある方は億劫に感じるかもしれませんが、こういった実話を知ると、当時世界はどういう状況だったのか自然に興味が湧いて、勉強にも役に立つのではと思います。二重スパイ、三重スパイと、かなり込み入った工作活動が描かれていますが、1度にたくさん出てくる人物名に少し混乱しても、ストーリーはシンプルなので気負わずに観てください。
『オペレーション・ミンスミート —ナチを欺いた死体—』
2022年2月18日より全国公開
ギャガ
公式サイト
© Haversack Films Limited 2021
TEXT by Myson
- イイ俳優セレクション/コリン・ファース
- イイ俳優セレクション/ジェイソン・アイザックス(後日UP)
- イイ俳優セレクション/ジョニー・フリン
- イイ俳優セレクション/マシュー・マクファディン