押しては引いて、引いては押してが何度もあって、恋の駆け引きが忙しいラブストーリーです(笑)。そんな2人のやり取りを大人目線で観ると「若い、若いな!」と思いながらニヤニヤしてしまいます。主人公は、高校生で子役としても活躍する15歳のゲイリー(クーパー・ホフマン)と、25歳のアラナ(アラナ・ハイム)。ゲイリーはアラナに初めて会った瞬間から積極的にアプローチしますが、アラナはゲイリーを子ども扱いして相手にしません。でも、無邪気で自信満々なゲイリーにアラナはだんだん興味を示していきます。
これが大人同士の恋愛なら、2人はただ素直になれないのだという解釈もできそうですが、まだ若いがゆえに恋愛においても好奇心いっぱいなのは当然です。若いうちは“運命の出会い”に期待を持っていて、実際に運命の相手に出会ったという感覚があったとしても、どこかで「まだ1人に決めるのは早い」みたいな心理があるのかもしれません。一方で大人に近づくにつれて真剣な交際を考えているとしても、先が読めなさすぎて飛び込んで良いのかわからないという心理もありえます。そんな若者達の恋愛を等身大に描いた本作は、主人公と同世代の若い皆さんが楽しめるのはもちろん、大人もすごく懐かしく思いながら観られると思います。ポール・トーマス・アンダーソン監督のこれまでの作品からは毛色が異なるように思いますが、こんなに爽やかでキュートなラブストーリーも撮るなんてさすがだなと感服です。
さらに本作は要注目のキャストが名を連ねています!アラナを演じるアラナ・ハイムは、姉のダニエルと“ハイム”というバンドを結成し活躍中のアーティストで、本作で映画デビューを果たしました。本作にはハイム一家が揃って出演しているのも見どころです。さらに脇役にはショーン・ペン、トム・ウェイツ、ブラッドリー・クーパーが名を連ねています。特にブラッドリー・クーパーはかなりぶっ飛んだ役柄で登場し、わずかな登場シーンで強烈な印象を残しています。彼の登場シーンはクスクス笑えますよ。そして、ゲイリーを演じるクーパー・ホフマンは故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子で、本作で映画デビューを飾りました。お父さんに負けない味のある演技を見せていて、デビュー作とは思えない存在感を放っています。
ストーリー、演出、キャストと魅力が詰まっている本作は、映画好きにはたまらない作品となっています。ぜひこの世界観に浸ってください。
お互いに好きなことは何となくわかっているのに一歩踏み出せない、ついつい駆け引きをしてしまってスリリングな関係から抜け出せないという状況なら、ぜひ本作を2人で一緒に観てください。自分達のことを観ているような気持ちですごく共感できると思います。本作を良い刺激にできれば、2人の関係を進展させられるかもしれませんよ。
ティーンの皆さん、大学生の皆さんにピッタリのラブストーリーです。自分のことを好きだと思ったらプイっとされたり、次の恋を見つけようと思ったらヤキモチを焼いているような素振りを見せられたり、「もう〜、どっちなんだよ!」の繰り返しです(笑)。まさに今恋愛に振り回されている方は、自分や相手を客観視できますよ。まだ恋をしたことがない方も疑似恋愛をして、初恋に備えましょう。
『リコリス・ピザ』
2022年7月1日より全国公開
ビターズ・エンド、パルコ
公式サイト
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TEXT by Myson