今回は前回の続きで、日本の食料自給率低下の原因について考えていきたいと思います。
映画で“食”について考えてみよう20:日本の食料自給率を知って食事情の問題点を考えよう
食料自給率低下の2つの要因
食料自給率の低下には、食生活の大きな変化などの長期的な原因と、需要の変化に生産面が対応しきれていない短期的な原因が考えられます。
<食生活の変化による原因>
日本では、昔から主食のご飯を中心とした食生活が続いていましたが、欧米の食文化の影響を強く受けたことにより、次第にご飯を食べる量が減り、代わりに肉や油を使用したおかずを食べる機会が増えました。
例えば、1人あたりの品目別供給熱量を昭和35年と平成26年度とで比べてみると、米が1106kcalから539kcalと半分近く減少した一方で、肉類や乳製品、卵などの畜産物は85kcalから401kcal、油脂類は105kcalから357kcalと3倍以上になっています。このように40年の間に国産で自給可能な米の消費量が大きく減少し、大部分を輸入に依存しなくてはならない畜産物や油脂の消費量が増加したことにより、食料自給率が低下してしまったといえます。その傾向は現在も変わらず、長期的に低下傾向で推移していますが、カロリーベースでは近年横ばい傾向です。
<生産力の低下による原因>
日本の地形は急で険しい山間部が多く、国土面積の7割を森林が占めており、さらに経済の発展に伴い、住宅用地や工業用地の需要が伸び、農地の面積は縮小し続けています。また、戦後の高度経済成長に伴う社会基盤の変化が第一次産業(農林水産業)で働く人口の減少と高齢化に繋がり、日本の農林水産業の生産力そのものが弱体化しつつあります。さらに、近年は食の外部化が進んでいることから、外食における業務用食材の安価で大量な輸入食品の需要が高まり、国内生産では十分に対応しきれていないことも、食料自給率の低下の原因となっています。
現在(令和2年度)の食料自給率(カロリーベース)をチェック
原料の多くを輸入している砂糖、でん粉、油脂類等の消費の減少や、米の需要の長期的な減少、作柄が良かった前年に比べて小麦の単収(=ある一定面積当たりの収穫量)が減少したことにより、前年度より1ポイント低い37%となりました。また、畜産物の生産が増加したことにより、品目別自給率(重量ベース)は、牛肉が35%から36%に、豚肉が49%から50%に、鶏肉が64%から66%に、乳製品が59%から61%にそれぞれ上昇し、カロリーベース食料国産率(飼料自給率を反映しない)は前年度と同じ46%となりました。
日本では現在、令和12年度までにカロリーベース総合食料自給率を45%、生産額ベース総合食料自給率を75%に高める目標を掲げています。また、飼料自給率と食料国産率についても併せて目標を設定しており、飼料自給率と食料国産率の双方の向上を図りながら、食料自給率の向上を図っています。
食料自給率の問題はまだまだ課題が山積みで、国としても対策している最中ですが、まずは皆さんがこの事実を知るだけでも大切な一歩になるはずです。例えば、なるべく国産の食材を選んでみたり、外食を控えてみたりと、普段のちょっとした行動を変えるだけでも食料自給率の問題の改善に繋がると思います。今後10年、20年後に食料自給率がどのように変化していくのか、引き続き注目していきましょう。
<参考・引用資料>
三ッ井清貴「服部幸應の食育インストラクター養成講座 テキスト1、5」(がくぶん)
農林水産省Webサイト
本内容は、上記で語られている内容を一部引用しまとめたものです。
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© 2015安倍夜郎・小学館/映画「深夜食堂」製作委員会
TEXT by Shamy(NPO日本食育インストラクターPrimary)