本作に登場するメインキャラクターの女性達はとても美しいのですが、中でもやはり主演のディーピカー・パードゥコーンは、知性で闘う絶世の美女パドマーワトというキャラクターを演じるにふさわしい美しさです。インド映画史上最大級の製作費で作られた本作を、同系のインド超大作として“バーフバリ”シリーズと比較してみると、戦闘シーンは正直やや地味ではありますが、本作は女性が主人公ということもあり、衣装や宮殿の装飾、ダンスシーンの演出などに力を入れている印象です。団体で踊るシーンが複数ありますが、集団という特性を活かした演出や、カメラアングルで、こだわりを感じます。すごく華やかで圧巻なので、164分という上映時間もあまり感じないでしょう。
物語は、パドマーワトとラタン・シンのラブストーリーと、権力を誇示したいがためにパドマーワトを自分のものにしようとするアラーウッディーンとの戦いが軸になっていますが、それぞれのキャラクターで勝利の概念が違う点がポイント。そこで、窮地に陥った女性達が愛する者のためにどういう選択をとるかがドラマチックに描かれていて、決して望まれる手段ではありませんが、女のプライドや意地、愛する者への最大級の敬意と思いを感じさせる選択に共感せずにはいられません。本編の冒頭にインドの宗教的、社会的、歴史的背景に配慮するメッセージが出てきたのも印象的ですが、そこまで述べてから本編を流すという点でも、物語の重みが伝わってきます。
戦闘シーンは大人しめと前述しましたが、とはいえ多少刺激的なシーンが出てくるので、バイオレンス要素が苦手な人を誘うのは要注意です。その点で大丈夫なら、とても華やかなシーンとダークなシーンでメリハリがあるので、上映時間はそれほど感じないはず。価値観を問う物語なので、誰と観ても感想を語るとおもしろいと思います。
ここ最近、日本で公開されるインド映画が増えたので、以前よりも身近になってきたと思いますが、上映時間が長いものが多いので、キッズやティーンの皆さんはまだ手を付けてない人も多いかも知れませんね。本作も上映時間は長めですが、物語がシンプルな点では観やすいほうだと思います。インドの歴史にも興味が湧く内容なので、中学生以上の人は観たいと思ったらチャレンジしてみてください。
『パドマーワト 女神の誕生』
2019年6月7日より全国順次公開
SPACEBOX
公式サイト
©Viacom 18 Motion Pictures ©Bhansali Productions
TEXT by Myson