『ザ・ファイター』『世界にひとつのプレイブック』『アメリカン・ハッスル』のデヴィッド・O・ラッセル監督が手掛ける本作は、実話を基に描かれています。ただし、キャラクター名は実在の人物とは変えていたり、複数の人物を統合したキャラクターを形成していたりという構成になっています。まず目に付くのは、豪華過ぎる俳優陣です。メインキャストのクリスチャン・ベール、マーゴット・ロビー、ジョン・デヴィッド・ワシントンに加え、ラミ・マレック、ロバート・デ・ニーロ、テイラー・スウィフト、アニャ・テーラー=ジョイ、マイケル・シャノン、マイク・マイヤーズ、アンドレア・ライズボロー、ゾーイ・サルダナ、マティアス・スーナールツ、アレッサンドロ・ニヴォラ、クリス・ロック、ティモシー・オリファントといった面々が脇を固めています。これだけでも映画ファンにはたまりませんね。それぞれに名演を見せる中、個人的にはアニャ・テーラー=ジョイ、アンドレア・ライズボローのある意味不気味な演技がとても印象に残りました。大勢登場するのでそれぞれの登場シーンは限られていますが、キャラクターが皆クセが強い点も見どころといえます。
物語は、1930年代のアメリカ。第一次世界大戦時に強い絆で結ばれた3人、バート(クリスチャン・ベール)、ハロルド(ジョン・デヴィッド・ワシントン)、ヴァレリー(マーゴット・ロビー)が大きな陰謀に巻き込まれる様を描いています。その陰謀とは何かというところは本編で観ていただくとして、きっと同じような陰謀は途切れることなく今もどの国にも受け継がれているように思えてゾッとします。それは本来国民を守るべき組織にも絡んでいて、撲滅するのはかなり難しいことも伝わってきます。
映画としてはシリアスなテーマを扱っていながら軽妙に展開していく点でエンタテインメント性もあり、誰でも観やすい描写になっています。多くの人がこういう実態を知るべきだからこそ、エンタテインメント性もしっかり盛り込んで制作したのだと解釈すると見事です。衣装やアートなどもインパクトがあり、特に女性キャラクターについてはヘアメイク、ファッションにも要注目です。世界史好き、映画好きに特にオススメの1作ですよ。
作品の世界観はスタイリッシュで、ロマンチックな要素もあるので、デートで観るのも良さそうです。世界史に絡んできますがそこまで知識が深くなくても、誰でもついていける内容だと思います。複数のカップルが登場し、一部関係が複雑化するような展開もありますが、内容的に自分達に置きかえて観て気まずいということはないでしょう。
登場人物が多く、展開も早いので、小学生にはまだついていくのが大変かもしれません。中学生くらいになって、自分で興味を持った映画を何作か観るようになってから観るほうが、世界史にさらに興味が湧いたり、陰謀の背景にどんな世界情勢が絡んでくるのかといった想像を膨らませる余裕を持てるのではないでしょうか。
『アムステルダム』
2022年10月28日より全国公開
ウォルト・ディズニー・ジャパン
公式サイト
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TEXT by Myson