『JSA』での素晴らしい共演がいまだに印象に残るソン・ガンホとイ・ビョンホンが揃って出演するとなれば、見逃すわけにはいきません。本作は、飛行機でバイオテロに遭遇した乗客と乗務員、地上で捜査をする刑事、被害者の運命を握る決断を下す政府関係者達の混乱と奮闘を描いた物語です。ソン・ガンホは刑事、イ・ビョンホンは乗客、キム・ナムギルが副機長を演じ、国土交通省大臣はチョン・ドヨンが演じていて、名優揃いの最強の布陣となっています。さらに、イム・シワンがテロ事件の鍵を握る人物を見事に演じ、観る者を恐れさせ、苛立たせます。
もうキャストの演技だけでも大満足なことがおわかりいただけると思いますが、ストーリーも抜群におもしろい!一難去ってまた一難で、気を抜く暇がありません。そして、情報が筒抜けになる現代だからこその混乱もリアルで、さらにバイオテロというところでも昨今のコロナ禍の混乱を彷彿とさせ、他人事として観られません。また、展開の仕方と人間ドラマの重ね方が絶妙で、緊張感があるだけでなく、ウルウルさせられます。『新感染 ファイナル・エクスプレス』『奈落のマイホーム』などにもいえますが、韓国映画って、パニック映画と人間ドラマの配合が絶妙なんですよね。今回もその手腕に感銘を受けました。
ラストは映画ファンとして眼福なシーンもあるので、観ないともったいないですよ。
カップルで観て気まずいシーンもなく、ハラハラドキドキの吊り橋効果も期待できるストーリーなので、デートで観るのもありでしょう。ただし、少々刺激の強いシーンが出てくるので相手の好みやこれまでの映画鑑賞歴を確かめてから誘うほうが無難です。夫婦愛も描かれているので、お互いの存在の尊さにも改めて気付くきっかけになるかもしれません。
上映時間が141分と長めですが、あっという間です。子どもも重要な役割で登場するのでキッズも親近感を持って観られそうな部分はありますが、少し刺激が強いかもしれません。せめて中学生くらいになってから観るほうが良いと思います。本作を観ていると、自分の命が危険にさらされた時にどんな行動を取るのかで人間性が表れるのもよくわかります。自分だったらどうするか、どうありたいかを考えるきっかけにもできそうです。
『非常宣言』
2023年1月6日より全国公開
クロックワークス
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TEXT by Myson