『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督とティモシー・シャラメが再タッグを組んだ本作は、なんと人喰いのお話です。ただ、映像のテンションからは、まさかこれが人喰いの話とは思わないでしょう。人を喰らうシーンはありつつも、そうしなければ生きていけない者達の孤独感と葛藤を丁寧に描いていて、ベースは主人公マレン(テイラー・ラッセル)の成長物語、マレンとリー(ティモシー・シャラメ)のラブストーリー、そしてマレン、リーそれぞれの家族の物語といえます。ホラー映画で起きる出来事を描きながらも、完全に家族の物語、そしてラブストーリーとして描けるルカ・グァダニーノ監督の手腕に改めて驚きます。
この物語は、家族や大切な人を傷付けてでも生きていかなければいけない、そして逆に自分も自己犠牲を払ってでも愛する人を守る、そういった究極の状況を人喰いという比喩で表しているのではないでしょうか。なぜなら、現実に置き換えてみると、生きることに精一杯な人達が置かれている状況を想起させるからです。マレン達が空腹になっても、闇雲に「誰でも…」とはならないところにも、生存本能と、人間としての尊厳の間で揺れる複雑な心境が読み取れます。
描写は全然異なりますが、ラストシーンでは『君の名前で僕を呼んで』に通じる部分を感じます。『ボーンズ アンド オール』というタイトルは、愛してるからこそ、骨まで丸ごとという意味であり、“愛する人の中”で生き続けたいというある種の愛情表現に思えるのは私だけでしょうか。ぜひ、いろいろな方々の感想、解釈を聞いてみたい作品です。
本作はラブストーリーともいえますが、人喰いのお話なので、人によっては苦手かもしれません。安易に『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督とティモシー・シャラメが再タッグ作品とだけ話して誘うとビックリさせてしまうので、きちんと主人公が何者かを話した上で一緒に観るか決めましょう。
主人公マレンが18歳というところで、ティーンの皆さんも等身大で観られるところがあると思いますが、残念ながら18歳にならないと観られません。また、刺激的なシーンもあるため、映画を観慣れていない状態で何も知らずに観ると衝撃が大きいでしょう。その衝撃が感動に繋がるか、ストーリーに入り込む前にシーンが観られないと思うかは2つに分かれそうです。18歳以上の方は人喰いの話ということを覚悟した上で観てください。
『ボーンズ アンド オール』
2023年2月17日より全国公開
R-18+
ワーナー・ブラザース映画
公式サイト
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TEXT by Myson