『ザ・スクエア 思いやりの聖域』のリューベン・オストルンド監督作ということで期待される方も多いでしょう。本作は、その期待に大いに応えてくれます。冒頭の男性モデル達のシーンからして皮肉たっぷり。その後に続く、ヤヤ(チャールビ・ディーン) とカール(ハリス・ディキンソン)のざわつくお金の話、ヨットの章、島の章と、それぞれの章で、私達が生きる世界の“トライアングル”が滑稽かつ辛辣に描かれています。
本作で観客は、状況の変化によって人間関係の“トライアングル”がいとも簡単に逆転する様を目の当たりにします。途中、皮肉たっぷりで爆笑してしまうシーンも出てきますが、もし自分が当事者だと思うとゾッとすることばかり(苦笑)。改めて、私達はこういう世界に生きているのだなと実感が湧きます。そして、“トライアングル”がどんな向きになったとしても、頂点とも底辺ともいえない位置で生きる、カールに象徴される立場も印象的です(あくまで私の解釈ですが)。
カールを演じるハリス・ディキンソンの美しさも際立つと同時に、その美しさゆえにカールというキャラクターが滑稽に見える点も本作の素晴らしいところ。ハリス・ディキンソンは他の作品でも演技の幅を見せており、本作でも改めて演技力を証明しています。ストレートにいって、本作はすごくおもしろいです!お見逃しなく。
ヤヤとカールのやり取りは、本作を理解する上でガイドの役割も果たしています。2人のセリフは、資本主義社会で生きていく私達の現実を象徴していて、とても現実的です。なので、ロマンチックになるどころか、めちゃめちゃ現実的な思考にさせられるでしょう。そういう意味で、カップルとして現実的で生々しい部分にも目を向ける必要性を感じている2人なら、敢えて一緒に観てみるのも良いかもしれません。
経済の話がいろいろ出てきたり、悪いお手本も出てきます。反面教師的に見て勉強になる部分も大いにありますが、幼いキッズにはまだ理解が難しい部分がありそうです。せめて中学生くらいになってから観たほうが、自分なりにいろいろな解釈をしながら楽しめるのではないでしょうか。
『逆転のトライアングル』
2023年2月23日より全国公開
ギャガ
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Fredrik Wenzel © Plattform Produktion
TEXT by Myson