サンダンス映画祭で撮影賞を受賞した『ル・コルビュジエの家』(2009)を撮ったガストン・ドゥプラットとマリアノ・コーンが監督を務める本作は、期待通りクセの強い作品となっています。ある大富豪が世間の自分に対する評価を上げようと、出資して映画を作らせます。監督に抜擢されたのは、数々の映画賞を受賞しているローラ・クエバス(ペネロペ・クルス)。そして彼女が主演に選んだのは、ベテランで演技派のイバン・トレス(オスカル・マルティネス)と、大衆に人気のスター俳優フェリックス・リベロ(アントニオ・バンデラス)でした。イバンとフェリックスは全く正反対のタイプで最初からウマが合いません。それでもローラは風変わりな手法で自分が求める演技を彼等から引き出そうとします。ただ、3人の個性があまりにも強すぎて、なかなかまとまらないなか、時間だけが過ぎていきます。
この後は本編でご覧いただくとして、本作にはブラック・ユーモアがたっぷりと入っています。映画が制作されるなかで起こるさまざまなカオスを映し出していて、それはかなり滑稽です。また、ローラ、イバン、フェリックスのキャラクターがそれぞれ濃くて魅力的です。間に入ってくる、一見どうでもよいシーンも笑いを誘います。個人的に爆笑してしまったのは、“ダンス”のシーン。2回出てきますが、めちゃめちゃシュールですごい角度から笑いのツボを狙ってきます。またメインキャストの3人の演技が最高です。ほぼ3人芝居といってもよい構成なので、これは実力派でないと成立しません。映画制作という真剣勝負を描くと同時に、プライドや野心に駆られた人間のおバカな一面をこんな風に描くとは、スタッフもキャストもお見事です。
映画好きにとっては、本作の題材そのものが興味深いのはもちろん、映画が好きだからこそ、作り手達の裏側を覗いて「この人達、何やってんの(笑)!」という感覚で楽しめます。映画好きの皆さんは特にハマる作品ではないでしょうか。
ブラック・ユーモアも好きなカップルなら、一緒に笑いながら観られると思います。映画好き同士なら鑑賞後にいろいろ語りたいことが出てくるでしょうし、そこまで映画に詳しくない方が観ても普通におもしろいので、気楽な気持ちで観るのもアリですよ。クセが強い作品なだけに、2人とも本作が気に入ったならそこそこ相性が良いといえるかもしれないですね(笑)。
いい大人が意地とプライドを張り合う姿はある意味反面教師として見られる部分もあります。ただ、内容的に大人になってから観たほうがツボにハマると思います。でも、映画制作やクリエイティブな仕事に興味がある方は、現場見学の感覚で観てみるのも良いかもしれません。実際の現場はここまでではないことを祈りますが、ショービズ界のクレイジーな一面を垣間見ることはできそうです。
『コンペティション』
2023年3月17日より全国公開
ショウゲート
公式サイト
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関連作:ガストン・ドゥプラット/マリアノ・コーン監督作
『ル・コルビュジエの家』監督
DVD発売中
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定
TEXT by Myson