ジェーン・バーキンとシャルロット・ゲンズブール、実の親子である2人の対話を描いたドキュメンタリーです。監督は娘のシャルロットが務めています。2人ともショービズの世界で第一線で活躍するスターでありながら、映し出されているのはごく普通の親子の姿。印象的なのは、冒頭のシーンでジェーンがシャルロットに対して抱いていた本音を語るシーンです。親子でありながら、向き合う2人の間には恥じらいのようなものも見えて、何ともいえない距離感が伝わってきます。きっとそれは、お互いへの尊敬の念からくるものでしょう。そんな2人が本音をぶつけて語りあうシーンには、哲学的な会話も多くあり、観ている側も、女性として、母として、娘として、さまざまな思考や思いが込み上げきます。
また、シャルロットでなければ引き出せないようなジェーンの素顔が多く映し出されると同時に、シャルロットが撮る母ジェーンの写真がとても美しく、シャルロットが母に対して抱く愛、尊敬、憧れが強く伝わってきます。
本作には親子だからこそ語られる本音が多く映されています。特にジェーンは、スターとして活躍しながらも大きなプレッシャーを感じていたこと、自分はいい母親ではなかったという思いを吐露しています。そんな母に返すシャルロットの言葉はとても優しく、等身大の親子の姿にとても親近感が湧くと同時に共感を覚えます。また、ジェーンがこれまでいかに波瀾万丈の人生を歩んできたかも語られています。私は本作で知りましたが、事前にお知りになりたい方が映画公式サイトのプロフィールを参照してから本作を観るのもアリでしょう。とにかく本作を観ると、ジェーン・バーキン、シャルロット・ゲンズブールのことをもっと好きになるはずです。2人のことをあまり知らない方にも、純粋に親子の姿を観て共感していただけると思います。
本作が日本で劇場公開を目前に控えた2023年7月16日、ジェーン・バーキンさんは逝去されました。ご冥福をお祈りいたします。
自然に家族の話をしたくなるので、自分のことを話すきっかけとして、本作を好きな人と一緒に観るのも良いでしょう。映画好きのカップルは、本作を観つつ、ジェーン・バーキン、シャルロット・ゲンズブールの出演作を一緒に振り返って観るのも良いですね。
大人になってから観るほうが深いところまで理解して観られそうとは思いつつ、中学生、高校生くらいの思春期の皆さんが敢えてお母さんと観に行くのもありでしょう。普段は話しづらいことや聞きづらいことも、本作の鑑賞をきっかけに話してみてはどうでしょうか。もしくは具体的に語らずとも、お互いに空気で感じ取れることが出てくるかもしれません。
『ジェーンとシャルロット』
2023年8月4日より全国順次公開
リアリーライクフィルムズ
公式サイト
© 2021 NOLITA CINEMA – DEADLY VALENTINE PUBLISHING / ReallyLikeFilms
TEXT by Myson
本ページの情報は2023年8月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
- イイ俳優セレクション/ジェーン・バーキン
- イイ俳優セレクション/シャルロット・ゲンズブール(後日UP)