“ドラキュラ伯爵”の原点とされる、ブラム・ストーカーの小説「吸血鬼ドラキュラ」の中の”デメテル号船長の航海日誌(キャプテンズ・ログ)”を映画化したのが本作です。ロンドンへ向かう船の積み荷には、不吉な模様が描かれた木箱がありました。その木箱が船に載せられているのを知り乗船を拒んだ船員もいるなか、予定よりも早くロンドンに着けば多くの報酬をもらえると聞き、喜んで乗り込んだ者もいます。そんななか、航海に出てさっそくデメテル号の船内では不可解な出来事が次々と起こります。
観る前から”ドラキュラ”が出てくることはわかってはいるものの、最初は姿を隠していて、どういういきさつで登場するのかが読めない点でハラハラします。また、現代の私達にとっては”ドラキュラ”はお馴染みの吸血鬼であり、弱点も把握していますが、劇中の船員達にとっては未知の敵ということで、為す術を知らない彼等がどう対処するのか緊張感なしには観られません。さらに、ドラキュラの風貌も想像とは異なる点で、馴染みのあるドラキュラという存在とはいえ、とても新鮮に感じます。
大海原に浮かぶ逃げ場のない船上で、ひたすらドラキュラの恐怖に震えるというシンプルな内容でありつつ、状況が二転三転するなか、他者の命を救うか見捨てるかという究極の選択が何度も出てきます。ただの船員だけならもっとシンプルな判断になりそうなところを、たまたま今回乗り合わせた医師(コリー・ホーキンス)がいたり、船長が孫を乗せていたり、情や別の使命感で動く人物が含まれている点も物語の構成の巧さを感じます。ドラキュラの原点を真っ新な気持ちで観てみてはいかがでしょうか。
現代の私達が数々の映画やドラマで観てきたドラキュラの中には、セクシーなキャラクターも含まれてはいたものの、本作のドラキュラはきっと皆さんの想像とは違うと思います。見た目という意味での正体も徐々に明かされていくので、「そういう感じ!?」というリアクションになるでしょう。とにかく、ロマンチックな要素のある吸血鬼ホラーではないという点を念頭に入れて、相手の許容範囲に収まるかどうか検討してください。
キッズも登場して活躍するものの、ドラキュラは大人にも子どもにも容赦がないので、キッズキャラを”ごまめ”感覚で観るのが難しく、安心感はありません。なので、逆にキッズは本作を観て、ドラキュラがもっと怖くなってしまうかもしれません。怖い話に興味を持ち始めるお年頃でチャレンジしたければ観るのもアリですが、怖いのがまだ苦手で寝る時などに思い出してしまうのが嫌な方は、もう少し免疫が付いてから観ると良いでしょう。
『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』
2023年9月8日より全国公開
東宝東和
公式サイト
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TEXT by Myson
本ページの情報は2023年8月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。