『REBEL MOON:パート1 炎の子』来日記者会見:ソフィア・ブテラ、ペ・ドゥナ、エド・スクライン、デボラ・スナイダー(プロデューサー)、ザック・スナイダー(監督・脚本・製作・原案) /INI 池崎理人(特別ゲスト)
Netflixで独占配信される『REBEL MOON:パート1 炎の子』のPRのため、2023年12月11日、スタッフ、キャストが来日。記者会見には、アジア各国から取材陣が訪れ、 スタッフ、キャスト 一同はたくさんの質問にたっぷりと答えてくれました。今回はQ&A形式でご紹介します。
Q(ザック・スナイダー監督へ):企画の発端は?
ザック・スナイダー監督:
ストーリーは簡単で、遠い惑星の農村にいる人達が悪の帝国に侵略され、服従か戦うかという選択を迫られます。そして彼等は援軍を求めて銀河系を旅するというのが、この物語の前提です。この物語は長い時間をかけて開発してきました。アイデアの発端は、1977年まで遡るかなと思います。11歳の時に“スター・ウォーズ”を観て「僕にもこれ、作れるかも」な〜んて思ったかもしれません(笑)。“スター・ウォーズ”ほどではないにしても、立派な作品をね。1977年当時、私は11歳で何者でもなく、やんちゃな子どもでした。皆さんもそうだと思うんですけど、一番自分の美的意識、センスの土台が作られる年頃なんですよね。僕はクリエイターとしての土台が作られたのが“スター・ウォーズ”。あと、よく覚えているのは、僕は親にお願いをして黒澤明の『蜘蛛の巣城』を観に連れていってもらいました。13歳の時でした。それ以外に『七人の侍』、ジョン・ブアマン監督の『エクスカリバー』、ジョン・ミリアス監督の『コナン・ザ・グレート』といった作品を観てきたわけです。最終的にはデヴィッド・リンチの『ブルー・ベルベット』に行き着き、『オール・ザット・ジャズ』とか、さまざまな映画を観ていたんです。この作品に『オール・ザット・ジャズ』はあまり参考にしていないかもしれないですが。
本作はSFファンタジーですので、ジャンル的な話をすると、「ヘビーメタル」というコミック誌、これは子ども向けではないんですが子どもの頃から読んでいて、影響を受けているかもしれません。母が子ども用のコミック本だと誤って僕のために購読を申し込んでくれたんです。そんなところで僕の土壌が築かれて、いろいろなものからインスピレーションを受けて、今回の作品を作り上げました。
Q(ソフィア・ブテラへ):あなたは熟達したダンサーで、スタントを行う際にはキャラクターの肉体的な要素はもちろん完璧に、そして感情や心理的な部分にも注意を払っていらっしゃったと思います。本作では、英雄的な要素と反英雄的な要素もありますが、キャラクターの性質をどのようにアクションの振付に取り入れたのでしょうか?
ソフィア・ブテラ:
ダンサーであることは、私の人生の大きな部分となっています。常に私にとって何かの形で有益になっていて、私が行うことすべてに役に立っていると思います。特に自制心、規律です。たとえばワークアウトとして、ピラテスやいろいろなトレーニングをコンディショニングを整えるためにしましたし、食生活も大事です。また、ダンサーだった頃、身体は実際に動かしていなくても、他の人が何をやっているか見て覚えていくということを思考の中でやっていました。そこから自分の身体を使ってステップを踏んでいくので、そういった経験も有益です。私はダンサーとしてずっと自分の身体を使ってきたので、自分にとってとても役立つものでした。ただ、1つ自分が持ち合わせていなかった要素は、銃を持つということです。コラは若い頃から兵士だったのでその要素をちゃんと掴んでいられるように、非常に早い段階からスタントチームと一緒に、コラが銃を持ってどのように走るのか、歩くのか、立ち振る舞いを身につけるようにしました。幸いにザックはそれをわかっていて、私の肘の出方や角度を直してくれました。ですので、ダンスというのは、長年私の人生の大部分であり、永遠に役立つし、使い続けると思います。
Q(ペ・ドゥナへ):役作りをするなかで、韓国のルーツを活かした点はありますか?
ペ・ドゥナ:
特に意識的に韓国的な何かをというのはなかったのですが、映画をご覧になるとわかる通り、「なるほど、いかにも韓国っぽいな」というところがあります。それは衣装ゆえなんですね。彼女の衣装は韓国の伝統衣装で、帽子にも韓国の文化が色濃く反映されているんです。『キングダム』(Netflixオリジナルシリーズ/韓国ドラマ)を観た方はわかると思うんですけど、同じような帽子を被っています。これは当初は男性用のもので、女性は被ることができないものなので、私は被ることができて非常に興奮しました。衣装部門のステファニー・ポーターさんが提案してくれて、試着をする際、部屋に帽子があったので、私は非常に驚いてワクワクしたのを覚えています。衣装以外のところでは、ネメシスは私の身体、魂を通じて表現されているから韓国らしくなっているのではないかなと思います。私は生まれも育ちも韓国ですから、そういうのが滲み出ているのでしょう。それは避けようがないことですよね。
Q(エド・スクラインへ):逆境にいる者というのが、ザック・スナイダー作品のテーマにあると思うのですが、容赦ない極悪なノーブルを演じながら、このなかなか勝ち目のない人間の物語に対して、あなたは何をもたらしましたか?
エド・スクライン:
とてもおもしろい質問です。この作品は逆境に立たされた、勝ち目のない人達、農夫達、軍事的な歴史を持つ者達が、とてつもなく大きな軍、つまり、とても技術力がある人達を相手に挑む戦いです。とても勝ち目はなく、逆境に立たされた人間達には危険があり、恐れもあります。自分が役作りをしている時、脚本を理解しようとするなかで、キャラクターというのは、自然にその空間に1人で存在するということはできないと思うんです。何か理由があって、物語上、伏線上、何か意味があって存在している。ノーブルは弱者に脅威を表します。自分が提供したものは、非常に悪く、恐ろしく、邪悪で、酷く残虐です。可能な限りそういう面を出しました。本当に自分が観ても恐ろしいキャラクターです。私はどちらかというと、農夫のような人間ですけどね。
Q(デボラ・スナイダーへ):プロデューサーとしてどのようにして企画開発に携わられたのか?どういうところにこだわりましたか?
デボラ・スナイダー:
我々は本作を完全にオリジナルで作りました。他にはないような作品です。だからこそ、とてもチャレンジングでした。前例になるようなものがなくて、すべてがザックの頭の中にあるという状態ですから、それをどう映像化するかが非常にチャレンジングでした。脚本を書きあげてから、大勢のアーティストを雇って、そこからスケッチしていったんですけど、ザックはいろいろなものをオンラインで参考にしました。ファインアート、さまざまな芸術作品をリファレンス資料として用いました。それがプロダクションデザインだったり、コスチュームだったり、あるいはクリーチャー達、セットの参考になったわけです。ものすごい物量になったので、Netflixにプレゼンする段階では、サウンドステージが埋まるほどの量だったんですね。いろいろなイーゼルを立てて、皆にそのスケッチを見せて、こういうビジョンでいこうと思うんだというのをプレゼンしたんです。それがビジュアルエフェックス、ロケーション、すべての土台になりました。すべてゼロからこの世界を作ったわけですから、なかなかの作業でした。いろいろな言語も開発しました。目にしなくても、そこにはそういう世界が存在するんだというリアリティを持たせることが大事だったので、いろいろな面でディテールにこだわりました。
Q(ザック・スナイダーへ):あなたはこの作品で独自の世界観を作られました。今後も拡張できる準備ができていると思います。このような創造的な自由を持っているなか、何か自ら境界線を引いたり、ユニバース用のライン、ルールなどは設定されたのでしょうか?
ザック・スナイダー:
将来的なシナリオで自分が確立したルールを破らないように、ルールの扱いには細心の注意を払わなくてはいけませんでした。一度起こってしまうと、そこが崩れてしまうので、そのようなアプローチを取りました。何度も戻って、マザーワールドのオリジナルストーリー、歴史も考えていきました。映画の中で表現されていなくても、すべて辿っています。この作業はとても重要なんです。なぜなら、前に進んでいくには、常に計画し準備をしていかなくてはいけません。制限となるものが指針となるので、自分が向かおうとしているところへ到達できるよう取り組みました。
デボラ・スナイダー:
そして、ちょっと大変だったところは、グラフィック・ノベル化、ポッドキャストもあるということでした。その他の脚本家達もいて、彼等の作業、彼が提出してくださったものも素晴らしかったのですが、ザックがそれを見て「これはダメだよ、やってはいけない。これをやってしまうと自分が将来的にやろうとすることを変えてしまうから」ということもありました。だから、ライター達の作業にも気を付けなければいけませんでした。
ザック・スナイダー:
今はすべてこのモデルに関して一貫性を継続しなければいけないということがありました。
デボラ・スナイダー:
10年以上、DC作品でいろいろ厳しい制限を体験したなか、今回制限を受けることなく、自分達で独自に自由に描けることができたのは本当にワクワクする、今でもそう思う体験でした。
Q(キャスト全員へ):本作を観た感想と、サンパウロツアーでのファンからの熱狂的な反応を受けてどうでしたか?
エド・スクライン:
映画を作る時には、常にリレー競争の気分になります。プリプロから始まって、我々がバトンを受け取って走り始めて、100m全力投球をする。もしくは100マイルでしょうかね、この作品はそれくらい長かったので。とにかく懸命に努力をして、自分のキャラクターに没入して、キャストとクルーの皆さんと親密になり、それはとてもすごい経験になります。そして、ポスプロからは他の方が走る。ザックはすべての区間を走っていらっしゃいますが。サンパウロではブラジルの皆さんの独特な興奮、コミコン、ロンドンのプレミアでも、皆が息を呑むところを目撃したり、皆が応援してくださったと、(サンパウロのツアーに行けなかった)ドゥナさんにもお伝えしたんですけどね。今は完走してレースの見どころを観ているところで、次は我々の全員の努力と懸命な仕事を、(視聴者の)皆さんにバトンを渡すと。放たれた矢がどこに行くかは、我々にとっては喜びで、これを祝っているところです。
ペ・ドゥナ:
完成品を観て本当にビックリしました。我々はL.A.やいろいろなところで撮影していたのですが、やっぱりスクリーン上に映し出されたものは全く違うわけですね。CGも加わるし、背景の描写も素晴らしくて、想像だにしていなかったものになりました。脚本は読んではいましたが、実際に完成したものを観たらビックリしたので、早く皆さんに観て欲しいと思っています。自分の格闘シーンは予告篇で観ていたんですけど、予告篇だけでもビックリしちゃいました。「あれ?こんなことやったっけ?」って。ザックがポスプロでいろいろ工夫してくれたおかげでカッコ良くなってるんですけどね(笑)。だから、もう皆さんが観てくださるのが本当に待ち遠しいです。
ソフィア・ブテラ:
153日間の撮影を通して、本当に我々は自分達のいる空間に没入して、一緒に仕事をし、自分達が演じるキャラクター達と過ごしました。その結果を観て、本当にあまりにも魔法のように、めまいがするような素晴らしいものでした。空がどんなものになるのかもわかりませんでしたが、本当に私達の仕事、長い間頑張った結果を観ることができて嬉しいです。ブラジルでは、観客の皆さんの上映後の反応を観ることができて、まるでコンサート会場のような反応で本当に素晴らしかったです。
そして、記者会見の最後には、特別ゲストとして、INIの池崎理人が登壇しました。池崎理人は本作の感想を聞かれると、「想像の100倍くらいの大きなスケールで、仲間を探しに行く、日本のRPGのゲームのような要素も感じました。本当に美しい背景で戦うアクションシーンもド迫力で、めちゃくちゃ感動しました。2が楽しみです」と絶賛。
本作のヒットを願って、来日ゲストに半纏(はんてん)をプレゼントしました。このプレゼントには来日ゲスト皆喜んでいました。
本作は「他の人がやらないことをやる」(本作公式資料より)というザック・スナイダー監督の野心のもとに作られた意欲作です。「映画にするにはスケールが大きすぎるから、いっそ2部作にしてしまおう。そうだ、ディレクターズカット版も作って本編とは違うシーンを撮影しよう」(同資料より引用)というも目論見にあるようです。壮大なスケールはもちろんのこと、日本の作品からもインスピレーションを受けたとお話されていたように、日本人にとってどこか親近感のある作品としても期待が膨らみますね。今回来日したキャストの他、ミヒウ・ハウスマン(ミキール・ハウスマン)、チャーリー・ハナム、ジャイモン・フンスー、レイ・フィッシャー、アンソニー・ホプキンス(声の出演)と豪華キャストが勢揃いしています。ぜひ、本作にご期待ください。
『REBEL MOON:パート1 炎の子』来日記者会見:
2023年12月11日取材 PHOTO&TEXT by Myson
『REBEL MOON:パート1 炎の子』
2023年12月22日よりNetflixにて独占配信開始
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