タイトルに“大戦”とありますが、戦争映画そのものではなく、戦争を起こさせまいと奔走した天才数学者の物語です。史実を基にしていますが、フィクションということで、歴史に詳しい人が観るのと、そうでない人が観るのとで、良い意味でおもしろみを感じるポイントが違うでしょう。私は日本史には疎く、観る前にできるだけ情報を入れないで観るので、実際の歴史に照らし合わせて観るというより、知らないお話として観たので、最後の最後で「あっ!その話に繋がるのか!」という衝撃を味わいました。物語の9割くらいは、主人公の天才数学者、櫂直が、戦争に結びつく巨大戦艦の建造を数学で食い止められるかどうかにフォーカスされていて、その部分もかなりスリリングでドラマチックなのですが、「もうこのお話、決着が着いたよね」と気を抜いた頃、この物語に隠された最大の秘密が明かされて、ドッヒャーとなるんです。なので、この辺りが歴史に詳しい人は想像をつけながら観て楽しむのではと思いますが、歴史がざっくりとしか頭に入っていない私のような状態で観ると、その恐ろしさにおののいてしまうはずです。そして、「戦争を止めよう」というテーマから、最後の1割の部分で「国を司る上で、戦争というものをどう捉えるか、どう利用するか」という次元の違うテーマに変わってしまう部分も見どころの一つ。山崎貴監督が手掛けるVFXはもちろん、今回は脚本の素晴らしさをより実感しました。物語の舞台は1933年ですが、今こそ考えるべきテーマが描かれた作品です。
露骨にラブストーリー的なシーンはなく、健全な男女関係が描かれていて、デートで観ても気まずくなるような要素はありません。戦闘シーンは多少ありますが、メインは巨大戦艦を作るべきか否かという議論における頭脳戦なので、老若男女問わず観やすい内容になっています。初デートで観るには少々堅い内容だと思いますが、2人とも興味があれば観ても問題ないでしょう。
130分と上映時間が長く、大人社会の駆け引きが多く出てくるので、キッズにはまだ難しいかなと思います。中学生以上なら、日本史も多少頭に入っていて、登場する人物の名前も聞いたことがある程度には知った上で観られるので、理解に苦労することは少ないはず。歴史を学ぶという構えたスタンスで観なくても、主人公の天才数学者が奮闘する姿そのものに感情移入できる部分もあります。このお話は史実を基にしたフィクションなので、観た後にでも史実を調べて、照らし合わせると、より頭に入るので、勉強にも役に立つのではないでしょうか。
『アルキメデスの大戦』
2019年7月26日より全国公開
東宝
公式サイト
©2019「アルキメデスの大戦」製作委員会 ©三田紀房/講談社
TEXT by Myson