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2023年の洋画人気作はどんな因子で構成される?因子分析をやってみた!【映画研究】映画人心解剖18

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映画『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』アン・ハサウェイ/アンソニー・ホプキンス

前回までの2023邦画ベストの分析に続き、今回から、2023年洋画ベストの投票で得たデータを分析した結果を発表します。

映画好きが選んだ2023洋画ベストの投票によるランキングはこちら

※説明が専門的になってしまう部分がありますので、ざっくりとした結果が知りたい方は、「まとめ」をご覧ください。
※データや方法については最後に記載しています。

最尤法、プロマックス回転とオブリミン回転で因子分析を行い、オブリミン回転の結果を採用しました。Table1が結果です。

2023年の洋画人気作はどんな因子で構成される?因子分析をやってみた!【映画研究】映画人心解剖18
Table1:2023洋画ベストの因子分析結果 
※投票によるランキング結果ではなく因子負荷量の順序です。
2023年の洋画人気作はどんな因子で構成される?因子分析をやってみた!【映画研究】映画人心解剖18
Table2:2023年洋画ベスト作品の因子間相関
2023年の洋画人気作はどんな因子で構成される?因子分析をやってみた!【映画研究】映画人心解剖18
Table3:回答者の映画鑑賞頻度

因子負荷量が0.35未満の作品、第1因子と第2因子両方の因子負荷量が同程度の作品は削除して、分析を行いました。Taeble1は因子負荷量が0.35以上ある作品のみを掲載しています。3因子の特徴がそれぞれ強く出た(=因子負荷量が大きく出た)作品を色分けしています。

投票時の配点は、その作品を観ていれば、好きか否かにかかわらず1点以上になります。その作品を観た場合は、1点=「観た上でまったく好きではない」から、5点「観た上でとても好き」の間で投票されています。ちなみにランキングは得点の合計で出しているので、多くの方に観られた作品はランキングで上位に入りやすくなる仕組みです。

グループ間で作品の規模感の違いが少し見えます。黄色のグループには超大作や有名俳優出演作、シリーズものが多く入っています。よって、因子名を「大衆ウケ」としました。

次に緑と水色のグループを観てみると、両方とも作品の規模やジャンルもまちまちです。でも、Table1の右側、「投票得点平均」の列を見てみると、水色のグループのほうが高めです。前述したようにその作品を観ていれば1点以上になるので、「投票得点平均」は多くの人が観ている作品ほど高くなりやすいといえます。逆にいえば、「投票得点平均」が低い要因は、その作品を観た人数そのものが少ない可能性も含まれます。よって、緑の「映画通好み」、水色のグループ、第2因子は「話題性」と因子名を付けました。

上記の根拠を付け足します。多くの人が観ている作品ほど票が分かれる、つまり好き嫌いが分かれる可能性が高いので、標準偏差が大きくなります。実際に黄色のグループの作品の標準偏差は他の因子の作品よりも大きい傾向にあります。緑のグループの作品は全体的に標準偏差が小さく、水色のグループの作品の標準偏差は緑と黄色の作品の間くらいになっていることからも、同じ傾向が読み取れます。

誤解のないように整理すると、すべての作品がどれか一つの因子だけに紐付けられるわけではありません。因子負荷量の大きさは、それぞれの因子の特徴がどの程度表れているかを示しています。例えば、水色のグループの一番下にある『ザ・ホエール』は第2因子「話題性」の因子負荷量が一番大きい値になっていますが、第1因子の「映画通好み」の因子負荷量も0.315あるので、第1因子に紐づく部分もあるといえます。

映画『ザ・ホエール』ブレンダン・フレイザー
『ザ・ホエール』

2023洋画ベストは、作品の規模に関わると考えられるユーザーの好みを背景とする3因子構造になりました。2023邦画ベストの因子分析結果も「インディペンデント系好き」「メジャー好き」という2因子構造だった点からも、人気投票を目的とした採点方法によって得たデータであるため、こうした因子構造になりやすいと考えられます。仮説に合わせて、作品のラインナップや質問、選択肢を変えて調査をすると、ストーリーや俳優、監督など、作品そのものの要素で因子が分かれるかどうかを調べられるかもしれません。

次回も、2023洋画ベストのデータを使って深掘りします。

まとめ

  • 2023洋画ベストに入れた作品を因子分析した結果、「映画通好み」「話題性」「大衆ウケ」の3因子構造となった。
  • 作品の規模とユーザーの好みに関連する3因子構造になった背景には、人気投票を目的とした採点方法が関係している可能性が示唆された。

データ:映画研究5:映画好きが選ぶ2023洋画ベスト
回答期間:2024/01/26〜2024/02/27
回答数:10代を含む297名の女性

<方法>
アンケートの中で下記の問いに対して、6択で答えていただきました。
Q:それぞれの作品について、該当する項目にチェックを入れてください

5点=観た上でとても好き
4点=観た上でやや好き
3点=観た上でふつう
2点=観た上であまり好きではない
1点=観た上でまったく好きではない
0点=観ていない

上記の回答データをもとに、因子分析(最尤法、オブリミン回転)を行いました。
※帰無仮説の有意水準:0.05(=5%)
※JASPを使った分析

注目の作品

映画『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』アン・ハサウェイ/ジェレミー・ストロング/バンクス・レペタ/ジェイリン・ウェッブ/アンソニー・ホプキンス

『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』
監督・製作・脚本:ジェームズ・グレイ
出演:アン・ハサウェイ/ジェレミー・ストロング/バンクス・レペタ/ジェイリン・ウェッブ/アンソニー・ホプキンス
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定
Amazonプライムビデオで観る U-NEXTで観る Huluで観る

© 2022 Focus Features, LLC.

映画『ザ・ホエール』ブレンダン・フレイザー

『ザ・ホエール』
PG-12
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ブレンダン・フレイザー/セイディー・シンク/ホン・チャウ/タイ・シンプキンス/サマンサ・モートン
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定 ブレンダン・フレイザー来日記者会見
Amazonでブルーレイを購入する Amazonプライムビデオで観る U-NEXTで観る Huluで観る

© 2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.

TEXT & ANALYSIS by Myson(武内三穂)

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  1. 映画『カーリングの神様』本田望結
  2. 映画『ザ・バイクライダーズ』オースティン・バトラー
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