言語学の天才が作り出す物語というところが、トールキンの作品がただの小説とは違う彼独特の世界観のルーツになっていることが本作からよくわかります。若くして父と母を亡くした彼が、並々ならぬ才能でオックスフォード大学に入学し、生涯の友を見つけ、お互いの存在が自分達の道を貫く勇気と行動力に繋がっていく友情物語としてまず心を打たれます。さらに「宝物を見つけて」という亡き母の言葉にならって、彼にしか得られない“宝物”を見つけていくという成長物語としてもすごく共感できて、悲しみをバネに強くなるという王道のストーリーでありながら、やはり重みを感じます。本当に言語の研究が好きで、その熱い思いで道を切り拓いていく姿にもとても勇気をもらえて、彼の辛い半生のなかのサクセスストーリーとなっていて、ラストは清々しい気持ちになれます。資料によると、第一次世界大戦で従軍したトールキン自身は、「指輪物語」のいろいろな出来事は世界大戦の実話からとったものではないと明言しているそうですが、戦争体験だけでなく、子どもの頃からも含めたいろいろな経験が、彼が生んだ物語のルーツになっている部分はあるんだろうなと本作を観て感じました。そう考えると、小説や映画化された作品のファンとしても余計に感慨深く本作を観られると思います。
ラブロマンスも重要な鍵を握っているので、デートで観るのもアリだと思います。思うようにいかない人生の中で、恋に苦しみ、愛に救われていく姿が描かれているので、ロマンチックなムードになれるはずです。気まずいシーンはないので、初デートで観ても大丈夫ですよ。
トールキンが書いた小説がどんなものか知っておいたほうがより感慨深く観られると思うので、できれば小説を読んでみるか、映画の“ロード・オブ・ザ・リング”シリーズや“ホビット”シリーズを先に観ておくと良いでしょう。その点も踏まえつつ、本作を等身大で感情移入できそうなことを考えると、中学生以上向けかなと思います。
『トールキン 旅のはじまり』
2019年8月30日より全国公開
20世紀フォックス映画
公式サイト
© 2019 Twentieth Century Fox
TEXT by Myson