REVIEW
イスラエル出身のガイ・ナッティヴ監督と、イラン出身のザーラ・アミール監督が共同監督を務め、本作を制作した意義の大きさは、本作を観ると実感します。

主人公はイラン代表の柔道選手レイラ・ホセイニ(アリエンヌ・マンディ)。レイラはジョージアの首都トビリシで行われる女子世界柔道選手権に出場し、序盤から金メダルを狙えるほど好調な戦いぶりを見せます。そんななか、レイラと二人三脚でこの大会のために尽力してきたマルヤム・ガンバリ監督(ザーラ・アミール)は、政府からレイラを棄権させるよう命じられます。それは、政治的に敵対するイスラエルとの対戦を避けるためでした。さらにレイラとマルヤムはイラン国内にいる家族が危険にさらされる状況に陥り、難しい決断を迫られます。

オリンピックをはじめとする世界的なスポーツの大会に政治が絡む事例はこれまでもニュースや映画などで知ってはいても、改めて本作で生々しい状況を目にすると、あまりの理不尽さに言葉を失います。そして、本作ではイランとイスラエルの政治的敵対関係に焦点が当てられつつ、宗教的背景を持つ女性差別が根底にある状況も物語の細部に描かれていて、レイラやマルヤムがどれだけがんじがらめにされているかが伝わってきます。

また、本作の公式資料にある中西久枝教授の解説では、「不適切なヘジャブ」の着用により警察に連行され拘束中に亡くなった女性マフサ・アーミーニーの事件が発端で2022年9月に起こった大規模な反政府デモや、「イスラエルによるパレスチナ人に対する人権侵害」が取り上げられています。このことから、2025年に日本で公開される『聖なるイチジクの種』や『ノー・アザー・ランド』で描かれている問題は繋がっていると考えられます。これらの作品を観ると、諦めずに戦う個人の存在の大きさを感じます。日本にもさまざまな政治的問題があります。本作は政治の問題がいかに個人の問題となるかを証明しています。
デート向き映画判定

とてもシリアスな内容なのでデートを盛り上げるテンションではないものの、レイラと夫が夫婦で支え合う姿は良いお手本となるでしょう。恐怖に陥ると、自分の意志を貫き通すのは難しくなります。でも、夫婦で同じ価値観を共有し、逆境に立ち向かう姿がとても素敵です。
キッズ&ティーン向き映画判定

レイラには幼い息子がいるので、皆さんは子どもの立場で親がレイラのような状況だったらと想像しながら観たり、スポーツをやっているティーンの皆さんなら自分がレイラの立場だったらと考えながら観るかもしれません。スポーツはスポーツと割り切れない状況に驚く方もいるでしょう。日本では政治的な事情から直接影響を受けている実感があまりないかもしれませんが、本作を観ると政治への関心が高まるのではないでしょうか。

『TATAMI』
2025年2月28日より全国順次公開
ミモザフィルムズ
公式サイト
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TEXT by Myson
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情報は2025年2月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。