ピアニストの苦悩を描いた作品は数多くありますが、何を観てもやはり過酷な世界で、本作でも同じように感じます。才能に気付いた人はそれを極めることに全力をかけて、幼少の頃から脇目もふらずピアニストになることを目指していきます。でも狭き門なだけに激しいサバイバルが繰り広げられていて、やめる勇気も必要だし、続ける勇気も必要になってくる。本作は4人のキャラクターを軸にストーリーが展開し、ただの競争を描いているだけでなく、それよりもお互いが切磋琢磨してそれぞれの答えを見つけていく姿によりフォーカスしている点で共感できます。好きなことを見つけてその道をずっと進んできた人、これから進もうとしている人、これ以上進むか迷っている人…と、対象が何であれ、同じ思いを抱える人は多くいると思います。そんな人達に一度立ち止まって、自分の本心と向き合うきっかけをくれる映画です。
またキャストが豪華な点も魅力で、特に本作が俳優デビュー作となる鈴鹿央士が他の人気俳優に負けじと存在感を発揮している点、英語が堪能な森崎ウィンが彼にしかできないキャラクターを好演している点にもぜひご注目ください。
複数のキャラクターの心の内面を細かく描いた作品で、1人でじっくり観るか、気を使わなくて良い仲の良い相手と観るほうが向いている作品のように思います。なので、そういった点では初デートが向いているかどうかが微妙ですが、内容としてデートで観て気まずいことはないので、相手の好みに合うようなら誘っても良いのではないでしょうか。これまでずっと頑張ってきたことや、諦めてしまったことなどを鑑賞後に話せると、よりお互いを知られるというメリットはありそうです。
キッズやティーンの皆さんは、まさに今何か才能を見つけたばかりか、見つけようとしているか、既に見つけて追究していこうとしている時期ですよね。いずれにしても、何かやりたいことを見つけて最初は楽しく打ち込んでいても、いつか必ず迷う時がやってきます。そんな時にどういう気持ちになるのか、シミュレーションできるストーリーだと思います。でも、恐れずにそれぞれのキャラクターがどんな風に前に進んでいくのかを観ることで、勇気や元気が湧いてくるはずです。
『蜜蜂と遠雷』
2019年10月4日より全国公開
東宝
公式サイト
© 2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会
TEXT by Myson