感動という単純な言葉で言い表したくないくらい、いろいろな意味ですごく心に刺さりました。映画そのものもとても素晴らしいし、私自身のパーソナルな部分にもすごく響くところがあって、何とも言えない心境になりました。人生に何かしらのインパクトを与えてくれるくらいの作品で、良い意味で観てから何日も引きずってしまうほどのパワーがあります。そして、ブラッド・ピットの演技が最高で、カッコ良すぎました!壮大な宇宙を舞台にしながらも、1人の男の心の旅を描いていて、アップのシーンがすごく多いんですが、細かい表情が主人公ロイの心の奥を映し出していて、観ているこちらも自然に同調できます。と同時に、ブラピのカッコイイ表情に見とれるわけです(笑)。で、彼の細かい心の動きを映し出すことの重要性でいうと、人間にとって感情がいかに大事かということです。ロイは感情を押し殺していて、それが宇宙飛行士として有能であることの一つの利点にはなっていますが、彼が“人間らしい”幸福な人生を受け入れられずにいる側面を表してもいます。彼が感情を手放してしまった背景には、父との関係が大きな影を落としているわけですが、父と同じく宇宙飛行士になり、宇宙で消息を絶った父を探しに行くことで、長年の彼の問題と向き合うことになります。この物語を象徴するすごく良いセリフがあるのですが、ネタバレになるので敢えて書かないことにしてテーマだけを明かすと、これは人間の孤独とは何かを知る物語になっています。孤独が好きと言えるのは、本当の孤独を知らないからであり、本当の孤独を知ると、人と生きることの尊さを知るんだなと思いました。宇宙の壮大さ、厳しさ、静けさが、人間の個としての存在とのコントラストになっていて、人間という生き物のあるべき姿を浮き彫りにするストーリー、演出も本当に見事です。これから先、何度でも見返したい1作です。
愛する人と生きることについても考えさせられるストーリーで、ぜひカップルで観て欲しい作品です。特にこれから人生を共にしたいと考えるくらいの相手と観て、共有して欲しいテーマが描かれています。正直ど派手な演出はあまりなく、とても静かに展開していくストーリーですが、誰にでも共感できます。オススメの対象は老若男女問わずではありますが、特に大人のほうがリアルな自分の実体験を通じて、心に響くと思います。
キッズにはまだ難しい内容で、いろいろな経験を経て観たほうが、リアルな感覚でいろいろと想像できる部分があると思いますが、主人公が子どもの頃に体験したことが、彼の人生に大きなインパクトを与えていることを考えると、若くして観ても、大人とは違うところで刺さる部分があるように思います。誰かと一緒に観るとしたら、ストーリーからして親子で観ることをオススメします。
『アド・アストラ』
2019年9月20日より全国公開
20世紀フォックス映画
公式サイト
© 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation
TEXT by Myson