夢中になる趣味を見つけて、同じ趣味の人達と出会い、居場所を見つける。これって究極の幸せですよね。でも、本作はそこに時間という概念を加えていることで、幸せの形は変化し続けるのだと気付かせてくれます。最初主人公は居場所を見つけて生気を取り戻しますが、仲間と一緒に過ごす時間が増えて長くそうしていることで、気持ちに変化が出てきます。彼の気持ちの変化はとてもリアルで、性別や年齢を問わず特に将来に迷っている時期には同じような体験をする人は多いと思います。居場所は大事だけれど、その中にいるだけではいられない時がきて、そこから一歩踏み出すかどうかは人それぞれ。そんな風に、趣味を自分の人生でどう位置づけるかというところもテーマになっていて、時間が経つにつれて、それぞれのキャラクターの選択が見えてくるところにドラマがあります。ただ何が正しくて間違っているということをいっているのではなく、どんな選択をしても同じ趣味の人達との交流が、心の拠り所となっていることが伝わってくる点で、愛が感じられる作品となっています。
キャスティングも絶妙でバランスもバッチリ、メインキャラクターは皆個性的で濃厚です。おバカなやり取りにホッコリできて、今泉力哉監督の作風を感じます。個人的には、若葉竜也が演じる西野のあるシーンがツボでしたが、良い意味でバカバカしいシーンが豊富で、難しいことを考えずに、作品の世界にどっぷり入るだけでも楽しい映画となっています。松浦亜弥など2000年代初頭のハロプロアイドルも懐かしみながら楽しんでください。
アクセント的に恋模様も描かれ、切ない展開もありますが、コミカルに描かれているので、その展開に感化されて変なムードになっちゃうような事態は心配しなくて大丈夫です。アイドルオタクでなくても同じ趣味に夢中になっているカップルなら、すごく共感できる内容なので、一緒に観ると盛り上がるのではないでしょうか。また、2000年代初頭のモーニング娘。や、同時期に活躍していた松浦亜弥などの“ハロー!プロジェクト”のアイドルが好きだった世代のカップルも、昔話に華が咲きそうですね。
キッズやティーンの皆さんは今まさにアイドルにハマっているお年頃ですよね。大人のハマり方とはちょっと違うところもあると思いますが、好き過ぎるがゆえの熱量は観ていて清々しくて、何だか楽しそうと思ってくれると良いなと思います。キャラクターそれぞれの生き方をどう受け止めるかは別問題として、今は気楽に観てもらえればOKです。もしかしたら皆さんの親御さんが本作に出てくるアイドル達をよく知る世代かもしれませんが、親子で一緒に観に行くと当時のリアルな話が聞けそうですね。
『あの頃。』
2021年2月19日より全国公開
ファントム・フィルム
公式サイト
©2020『あの頃。』製作委員会
TEXT by Myson