REVIEW

アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』セバスチャン・スタン/ジェレミー・ストロング

REVIEW

タイトルの“アプレンティス”は、“見習い”という意味です。副題の「ドナルド・トランプの創り方」からも本作がどんな内容であるかイメージできるでしょう。そして、このタイトル自体にかなり皮肉が込められています。本編を観ると、もっと辛辣な皮肉であると確信します。さらにふと思い出したのは、以前ドナルド・トランプ自身がホストを務めていた『アプレンティス セレブたちのビジネス・バトル』という番組があったことです。その点も踏まえると、本作はかなり風刺が効いていると感じます。
物語の始まりは1970年代、トランプ家の不動産事業が窮地に追い込まれていた頃です。ドナルド・トランプ(セバスチャン・スタン)は、やり手の弁護士ロイ・コーン(ジェレミー・ストロング)と出会います。ロイに気に入られ、窮地を救われた若きドナルドは、ロイのやり口を間近で見て“自分のもの”にしていきます。だから、本作でドナルドは“見習い”と称されているのです。つまり、ドナルドのやり口はロイ・コーンの受け売りであり、それ以外にも他者のいいとこ取りをしている点が本作には描かれています。

映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』セバスチャン・スタン

今のドナルド・トランプがどうできあがったのかは本作を観ていただくとして、合わせて鑑賞をオススメしたいのは、『トランプ帝国のすべて』というヒストリーチャンネル制作のドキュメンタリーです。同ドキュメンタリーは、ドナルドの祖父がどのように“帝国”を築き、父がどのように引き継ぎ、息子達を育ててきたかを辿っています。本作ではあまり深掘りされていませんが、同ドキュメンタリーでは、兄のフレッド・トランプ・ジュニアに何が起こっていたかも詳しく語られています。もちろん、ロイ・コーンにも触れており、同ドキュメンタリーと本作を合わせて観ると背景がより捉えやすくなると思います。

映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』セバスチャン・スタン/マリア・バカローヴァ

本作を観ていると、ドナルドがなぜ政界に進出したのか、想像を掻き立てる要素が複数含まれます。言い換えると、ドナルド・トランプだけに関してというよりも、アメリカ社会の構造が見てとれるといったほうが正しいかもしれません。つまり、アメリカが想像以上に資本主義に冒されているという証拠だと思います。本作は政財界で名を馳せてきたドナルド・トランプと、法曹界の悪名高き存在ロイ・コーンの変遷を追うだけではなく、彼等に焦点を当てることで、アメリカの闇をあぶり出している点で秀逸です。

映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』セバスチャン・スタン/ジェレミー・ストロング

本作の監督を務めるのは、『ボーダー 二つの世界』『聖地には蜘蛛が巣を張る』を撮ったアリ・アッバシ。生物としての人間と、社会的な存在としての人間を鋭い描写で描いてきたアッバシ監督は、本作でも見事な手腕を発揮しています。そして、セバスチャン・スタンが演じるドナルド・トランプの精度が高い!特殊メイクも相まって、ドナルドが完全に乗り移って見えます。また、ジェレミー・ストロングが演じるロイ・コーンは貫禄と不気味さが相まって印象深いキャラクターとなっています。題材そのものが強烈だからこそ、彼等の演出力、演技力で成立しているともいえて、まさに秀作です。ビジネスや政治に関心がない方にもぜひ観ていただきたい1作です。

デート向き映画判定

映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』セバスチャン・スタン/マリア・バカローヴァ

とてもロマンチックでドラマチックな恋愛物語もありつつ、最終的には苦い展開のほうが印象に残ります。金や名誉がある相手と交際中の場合は、いろいろと想像が膨らんでしまうのは否めないでしょう。ドナルド・トランプと比較するのは極端だとしても、似たような状況は万国共通、時代も問わずよくあることだと思うと、反面教師として参考にできるともいえます。なので、デートで観るよりは、1人で観るか、仲の良い友達と観るほうが気楽そうです。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』セバスチャン・スタン

ドナルド・トランプは一度大統領になり、2024年に再当選したので、ジョー・バイデンの任期が終わると、再び大統領を務めます。良くも悪くも世界的に大きな影響をもたらしている点でも現代史で必ず語られる人物だといえます。ドナルド・トランプがなぜビジネスで成長したのかというカラクリもわかります。社会科の授業では語られないであろう部分の社会勉強として若い皆さんにも観て欲しいと思います。

映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』セバスチャン・スタン/ジェレミー・ストロング

『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』
2025年1月17日より全国公開
R-15+
キノフィルムズ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

© 2024 APPRENTICE PRODUCTIONS ONTARIO INC. / PROFILE PRODUCTIONS 2 APS / TAILORED FILMS LTD. All Rights Reserved.

TEXT by Myson


関連作

『トランプ帝国のすべて』
Amazonプライムビデオで観る U-NEXTで観る

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年1月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『プラダを着た悪魔』アン・ハサウェイ/メリル・ストリープ 元気が出るガールズムービーランキング【洋画編】

正式部員の皆さんに“元気が出るガールズムービー【洋画編】”をテーマに、好きな作品を選んでいただきました。果たしてどんな結果になったのでしょうか?

映画『けものがいる』レア・セドゥ けものがいる【レビュー】

毎度ながら前情報を入れずに観て、最初のシーンで「?」、次のシーンでも「?」となりながら、徐々に…

映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』ケイト・ウィンスレット 『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』プレミアム先行試写会 10名様ご招待

映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』プレミアム先行試写会 10名様ご招待

映画『けものがいる』レア・セドゥ 『けものがいる』鑑賞券(ムビチケ) 3組6名様ご招待

映画『けものがいる』鑑賞券(ムビチケ) 3組6名様ご招待

生き別れた兄弟のような関係、ニコラス・ウィンディング・レフン、小島秀夫がプラダ青山店にて展覧会【SATELLITES】を開催!

ニコラス・ウィンディング・レフンと小島秀夫による展覧会【SATELLITES】が、プラダ青山店にて2025年4月18日から8月25日まで開催されます。開催を記念して、ニコラス・ウィンディング・レフンと小島秀夫がトークイベントを行いました…

映画『マインクラフト/ザ・ムービー』ジェイソン・モモア/エマ・マイヤーズ/ダニエル・ブルックス/セバスチャン・ハンセン マインクラフト/ザ・ムービー【レビュー】

「2009年に誕生し、2011年に正式発売されて以来、瞬く間に世界を席巻」している大人気ゲーム“マインクラフト”(通称:マイクラ)が…

映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』萩原利久/河合優実 今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は【レビュー】

いつもの通り、前情報を極力入れずに本編を観て、特に独特なセリフと掛け合いが…

映画『52ヘルツのクジラたち』小野花梨 小野花梨【ギャラリー/出演作一覧】

1998年7月6日生まれ。東京都出身。

映画『パリピ孔明 THE MOVIE』向井理 パリピ孔明 THE MOVIE【レビュー】

REVIEW発行部数240万部を超える同名コミックを原作とし、最終回放送時はSNSトレンド…

Netflixシリーズ『アドレセンス』オーウェン・クーパー アドレセンス【レビュー】

物語はまだ13歳の少年ジェイミー・ミラー(オーウェン・クーパー)が殺人容疑で…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『プラダを着た悪魔』アン・ハサウェイ/メリル・ストリープ 元気が出るガールズムービーランキング【洋画編】

正式部員の皆さんに“元気が出るガールズムービー【洋画編】”をテーマに、好きな作品を選んでいただきました。果たしてどんな結果になったのでしょうか?

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス
  2. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  3. 映画『風たちの学校』

REVIEW

  1. 映画『けものがいる』レア・セドゥ
  2. 映画『マインクラフト/ザ・ムービー』ジェイソン・モモア/エマ・マイヤーズ/ダニエル・ブルックス/セバスチャン・ハンセン
  3. 映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』萩原利久/河合優実
  4. 映画『パリピ孔明 THE MOVIE』向井理
  5. Netflixシリーズ『アドレセンス』オーウェン・クーパー

PRESENT

  1. 映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』ケイト・ウィンスレット
  2. 映画『けものがいる』レア・セドゥ
  3. DMM TVオリジナルドラマ『ドンケツ』伊藤英明
PAGE TOP