ラブストーリーなのかなと思いきや、ただのラブストーリーではなく、軸はエマという女性がある問題を解決するために戦う物語で、またその戦い方が独特過ぎて、ラストであんぐりとなります(笑)。でも、あんぐりとしてしまう結末こそ、エマというキャラクターを象徴していて、自分の欲望に正直に生きる彼女の姿は観ていて爽快でもあります。常識的に考えてその展開はないはずと思えることが起きてしまうのが本作の魅力で、結末はシュール過ぎて「まじか!」と、呆れるを通り越してとてもコミカルにも見えます。ある出来事のためにエマは責められ、それが発端でエマは行動を起こすのですが、一見常識的に振る舞おうとしている人達が彼女の策略にハマり、結果それぞれに罪な行為をしてしまったり、男性キャラクター達が結局エマに振り回されて情けなく見える様子など、皮肉がいっぱい詰まっている点も本作の魅力となっています。エマというキャラクターに見る個人主義について賛否両論あるとは思いますが、エマが現実社会で弱者になり得る存在を象徴していると思うと、弱肉強食を壊す、これまでの常識を覆す存在として、ある意味ヒーローと言えるかも知れません。皆さんもいろいろな観方で楽しんでください。
ベッドシーンやヌードが出てくるので、初デートだとちょっと気まずいでしょう。そしてキービジュアルのロマンチックな雰囲気とは裏腹に、複雑な関係が描かれているので、ムーディな雰囲気を期待すると裏切られます(笑)。でも、予想外の展開だからこそ、自分達とは割り切って観られる部分でもあり、これまでの一緒にいろいろな映画を観てきたカップルなら、普通に楽しめると思います。喧嘩ばっかりでギクシャクしているカップルには、ある意味で良い刺激になる部分もあるかも知れないので、試しに観てみてはどうでしょうか。
R-15なので15歳にならないと観られませんが、高校生でもこのストーリーを観たらどう思うんだろうと反応が気になる内容です。でも、エマの中にあるまだ子どもっぽい、ある意味純粋ともとれる部分は、ティーンの皆さんが共感できるところかも知れません。真似しちゃダメと言いたい部分は多々ありますが、一方的に責められて終わるのではない、エマの行動力は見習うべき部分もあると思います。
『エマ、愛の罠』
2020年10月2日より全国公開
R-15+
シンカ
公式サイト
© Fabula, Santiago de Chile, 2019
TEXT by Myson