REVIEW
冒頭から何が起きたのかわからないゾワゾワした空気で一気に物語に引き込まれます。そして、市子に何が起こったのかだけでは収まらず、謎が謎を呼び、複数の時間軸を行き来しながら、徐々に真相が明かされていきます。
市子はとてもおとなしく、影のある女性に見えて、芯の強さと大胆さも感じられます。本当は明るい子なのかもしれないけれど、何かが感情を抑えているようにも見えます。そんな複雑な内面を杉咲花が見事に演じています。また、大人びているようであどけなさもある市子の掴みどころのない色気も印象的で、杉咲花が役にピッタリとハマっています。
市子の厳しい立場は、私達の“当たり前“がいかに価値のあることかを教えてくれます。彼女の涙とふとした笑顔を観ると、世の中にはこういう現実があり、人知れず苦しんでいる方がどれだけいるのだろうと考えさせられます。見事なストーリーと演出、演技力が結集した本作はとても見応えがありますよ。
重い内容ではあるので、ウキウキした気分で過ごしたい日のデートには向きません。ただし、市子の恋人が、何かに苦しんでいる市子を救おうと奔走する場面など、大事な人がいる方にとっては共感ポイントもあります。もし自分が同じような立場になったらどうするか考えてみると、相手への気持ちが本気かどうか確かめられるかもしれません。
社会の構造など背景を想像できるようになってから観たほうが、より理解が深まると思うので、中学生くらいになってから観ると良さそうです。市子に何が起こったかを辿る上で、子ども時代から現在までを描いているので、ティーンの皆さんにとっては身近に感じられる部分もあるでしょう。今当たり前に思っていることが尊いことだと気付くきっかけになると良いなと思います。
『市子』
2023年12月8日より全国公開
ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト
©2023 映画「市子」製作委員会
TEXT by Myson
本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2023年11月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。