時代劇と言えば、どっぷり武士道を描いたもの、悲恋を描いたもの、政治を描いたものと、それぞれに特化した作品はたくさんありますが、本作はその3要素をバランス良く盛り込んだ作品です。和やかに始まったと思ったら、冒頭からドラマ的にショッキングで、アクション的にも激しいシーンがあり、ベースにはラブストーリーが流れつつ、中間は金融問題を軸に物語が進んでいくので、観る者を飽きさせません。1点だけ、「結局あれは何だったの?」というポイントがあり、原作では語られているのか、もともとそれほど伏線ではなかったのかが気になるところですが、一つひとつの出来事が磐音(いわね)という1人の男の人生を変え、こういうことになりましたとシンプルに解釈してしまうのもアリなので、考え過ぎずにフラットに観てもらうほうが良さそうです。
殺陣のシーンも要所、要所で見せ場を作っているので、アクション映画としても見応えがあります。磐音のキャラクターも魅力的で、まっすぐでとても穏やかな性格でありながら、一度剣を振るうと圧倒的な強さを発揮する姿は、そのギャップに男女問わず心を掴まれるはず。金融問題を解決していくカラクリも痛快です。やはりお侍が主人公というところで男性ウケが良さそうに思えますが、松坂桃李が主演を務め、ラブストーリーの要素がベースにあるので、女性でも楽しめます。
本作は、ちょっとした誤解から大きな問題に発展してしまい、恋愛だけでなく人生も思わぬ方向に進んでいく様子が描かれています。でも、時代劇ということで一定の距離感を持って観られるので、生々しくて気まずいということもなく、キャラクター達の失敗から学べる部分があるので、デートで観るのも良いと思います。周囲の声に翻弄されて、恋愛がうまくいかないなと悩んでいるカップルには特にオススメです。
殺陣のシーンがしっかり描かれている分、キッズにはちょっと刺激が強いかも知れません。金融問題のところも、取引や駆け引きを数字的に理解できたほうが物語についていけるので、全体的に考えて、せめて中学生以上になってから観たほうが楽しめると思います。男の友情、姉妹の絆なども描かれているので、皆さんの世代に響く要素も見つけられるでしょう。
『居眠り磐音』
2019年5月17日より全国公開
松竹
公式サイト
© 2019映画「居眠り磐音」製作委員会
TEXT by Myson