これは実話ですが、国家権力をかざす人達に対して腹立たしいやら怖いやらで、よくこの女性は戦い抜いたなと尊敬します。2003年1月、英国の諜報機関GCHQ(政府通信本部)で働くキャサリン・ガンは、米国の諜報機関NSA(国家安全保障局)から送られた、イラク侵攻強行を左右する指示が書かれたメールを受け取ります。不当な理由で戦争が始まってしまうかも知れないと危機感を持ったキャサリンは、職務上の契約を破り、国家を敵に回すとわかっていながら黙っていられず、情報のリークを試みます。でも思ったように事が運ばず、やがてGCHQ内では情報をリークした犯人捜しが始まります。同僚にも迷惑がかかり、自分も黙っていられなくなったキャサリンは自分がやったと名乗り出るのですが、ここから国とキャサリンの頭脳戦といえる攻防が始まります。キャサリンの夫の事情なども絡み、余計にキャサリンは窮地に立たされるのですが、いやらしい方法でキャサリンを追い込んでいく国の汚い手口が本当に怖くて腹立たしく、どこの国でも同じなんだろうなと、他人事には思えません。それでも折れず、国民にとっても戦うべきだと決意し、無罪を諦めないキャサリンの姿に共感し、彼女を助ける弁護士の見事な手腕に、最後は爽快感を味わえます。でも、ラストに明かされるある真相に再度ゾッとさせられるところがミソで、腐った政治体質を変えるのは並大抵のことではないと思い知らされます。
パートナーがキャサリンのような立場にあったら、支えることができるのかなと考えながら観ることができます。やろうとしていることは正しいとわかっていても、国を敵に回すのは相当怖いことです。それでも身の危険を覚悟して、真実を世に知らせようとしたキャサリン。そして、彼女の夫の心配は計り知れず、こういうところで夫婦の絆が試されるんだなと感じるはずです。同じようなことは滅多に起こりませんが、映画を観た感想を話すことで、お互いの価値観が見えると思います。
イラク戦争の背景として、アメリカとイギリスの関係などを簡単にでも理解できていないと、ちょっと物語についていけなくなりそうなので、中学生以上向けかなと思います。国を相手にということでなくても、自分よりも大きな存在に意義を唱えるのは難しいことです。自分ならどうするか、考えながら観ると、自分の価値観が見えてくると思います。
『オフィシャル・シークレット』
2020年8月28日より全国公開
東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
公式サイト
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TEXT by Myson