本作は、2009年10月3日、アフガニスタンでタリバン精鋭部隊による総攻撃を受け、14時間にも及ぶ過酷な戦闘が繰り広げられたキーティング前哨基地にまつわる実話を映画化。その基地は敵にとって見晴らしの良い谷間に位置し、素人でも敵に狙われやすい危険な場所だとわかります。本作はそこに駐在する兵士達の日常を淡々と、そしてリアルに描いており、さっきまでのんびりと冗談を言い合っていたかと思うと突然山の上からタリバン兵の銃撃を受け応戦するという繰り返しの日々を観て、これが彼らの日常なのかと愕然とさせられます。また、この基地では、現地の人と平和的な関係を構築することも重要視されていて、相手が味方と敵のどちらになり得るのかを常に探りながら、国民性や宗教観の違いを超えて和平を結ぶ努力をしなければいけません。でも軍内の立場によって、そういった姿勢に不平不満を感じる者もいて、この基地に駐在する兵士達がいかに多くの複雑な状況を抱えていたかが伝わってきます。
クライマックスでは本当にすさまじい戦闘が生々しく描かれ、米軍兵士達の絶体絶命的な状況に圧倒されますが、その困難を切り抜けても素直に喜べることではないことは、エンドロールで流れるインタビュー映像で観ることができます(キャストの中には当事者の1人が本人役として出演)。このキーティング前哨基地での戦闘後に調査が行われ、その防衛力の脆弱性から多くの前哨基地も閉鎖されたようですが、なぜ多くの命が失われる前にそれができなかったのか、そもそも何のための戦争なのか、改めて考えさせられます。ラストで勲章の話も出てきますが、本作と同時期に劇場公開される『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』も観ると、勲章の授与がいかに難しいことかもわかるのでオススメです。
キャストも魅力的で、スコット・イーストウッド、マイロ・ギブソンと、名優、名監督の父を持つ2人が共演。スキンヘッドの兵士を演じるオーランド・ブルームも新鮮で、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズは特に個性が光るキャラクターを演じています。戦争映画をあまり観ない人も、キャストきっかけで観てみるのもアリではないでしょうか。
常に緊張状態にある基地の日常が描かれていて、デートのムードが盛り上がるような内容ではないのは想像がつくかと思いますが、兵士達にとって家族の存在、パートナーなど大切な人の存在がいかに大切かが伝わってくるシーンもあります。2人とも興味があれば観てみてください。
あまり露骨には映りませんが、やはり死亡者、負傷者の姿を観るのが辛くなるシーンもあります。兵士達が仲間内で下品な言葉を使うシーンもあるので、キッズが観るには早いと思います。中学生くらいになりアメリカと中東の関係性などを学校で習ってからのほうが、より背景を理解して観られるので理解が深まると思います。
『アウトポスト』
2021年3月12日より全国公開
クロックワークス
公式サイト
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TEXT by Myson