REVIEW
地面師とは、あらゆる手段で地主になりすまし、無断で他人の土地を売って、多額の金を騙し取る詐欺師のことです。本シリーズでは、最初の案件で地面師のやり口を一通り描き、2件目で100億円規模の大がかりな地面師詐欺の様子を描いています。原作は、新庄耕の「地面師たち」です。
ドラマを観ていると、2件目の大規模な詐欺が、2017年に東京都品川の土地を巡って実際に起きた地面師詐欺事件をモデルにしていると気づく方もいるでしょう。実際の事件の被害額は55億円といわれていて、ドラマで描かれている金額の半分とはいえ、厳しいチェックと決済を得るまで複数の人間の承認を得なければ契約が成立しない大企業を相手に詐欺を働くのは前代未聞のこと。劇中のセリフにもありますが、まさか地面師がこの規模の詐欺を仕掛けてくるとは誰も思わないでしょう。
とはいえ、騙される側も不動産のプロです。警戒はしています。それでも騙されたのは何故なのか、その巧妙な手口がドラマで描かれていきます。もちろん実話通りではなくフィクションとして描かれているものの、モデルとなった事件で後々明らかにされた状況はドラマの中のエッセンスとして入っています。詐欺だと気づけたタイミングは何度かあったように思われるなか、契約が成立してしまった背景の一つには、買い手の社内で当時起きていた派閥争いなども関係していたことがうかがえます。
このように実際の事件をモデルにしていることで出てくる臨場感が本作の魅力の一つでありつつ、フィクションならではの設定により、恐ろしさが増しています。知能犯のドラマだろうと油断していたら、バイオレンスがふんだんで、かなり激しいシーンが含まれている点に驚かれるでしょう。回が進むにつれ、豊川悦司が演じる主犯格、ハリソン山中の異常性が際立ってくるので震えながらご覧ください。
不動産売買に携わる方は、気を付けるべき点を学べる部分もあります。Netflixの視聴画面には「シーズン1」という表記もあるので、続きがあるのでしょうかね。かなり気になる終わり方をしながら、これ以上の地面師詐欺をどう描くのかは想像がつかないので、続きもあるならぜひ観たいです。
『地面師たち』
2024年7月25日よりNetflixにて配信中
R-16+
公式サイト
©新庄耕/集英社
TEXT by Myson
関連作
「地面師たち」新庄耕 著/集英社文庫
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情報は2024年8月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。