REVIEW
『レ・ミゼラブル』で移民や低所得者が多く住む町の警察の腐敗問題を訴えかけたラジ・リ監督が、本作では、パリ郊外にある通称“バティモン5”と呼ばれるスラムの一画で起きている住人と行政の問題を描いています。本作のストーリーは、フランスで行われている選択的移民政策とも関連すると思われます。
物語の冒頭では“バティモン5”が老朽化していて、住人達が不便な生活を送っている様子が描かれています。それでもローンをコツコツ払って住んでいる住人にとっては大切な家。でも、前市長の急逝で臨時市長となったピエールは、治安を改善するためにさまざまな強硬策を繰り出します。そんななか、バティモン5である出来事が起き、ピエールはこの機に乗じて住人達を追い出そうとします。
住居の老朽化問題、住人達の経済的な問題や仕事の問題、治安の悪さ、すべて解決すべき問題ではあるものの、本作ではその方法のまずさが印象に残ります。人の感情を無視した強硬な姿勢は、さらに激しい感情の衝突を生むだけなのだとわかります。一人ひとり接すれば人として対話できるはずでも、何らかのカテゴリーに当てはめて、問題の対象としてしか見られなくなった時に、差別が生まれるのかもしれないと気付きます。誰かの都合だけで形作られる社会は、結局誰にとっても住みづらい社会になることを教えてくれるストーリーです。
デート向き映画判定
フランスで起きている深刻な社会問題を描いています。話し甲斐のあるテーマが取り上げられているので、議論が好きなカップルなら一緒に観るのもアリでしょう。本作で描かれている問題は具体的な中身は違ったとしても、日本を含めどの国でも起きている問題ともいえます。自分と相手で、自分事ととるか、他人事ととるかの姿勢が異なると、価値観の違いを知るきっかけになるかもしれません。
キッズ&ティーン向き映画判定
社会を知るために、若い皆さんにも観てみて欲しい1作です。目の前にある問題に対して、感情にまかせても解決にならないことも客観視できるストーリーです。解決が難しい問題があり、それぞれの言い分が分かれた時に、どんな態度を取るべきか、キャラクターそれぞれの立場に立って状況を眺めてみてください。
『バティモン5 望まれざる者』
2024年5月24日より全国公開
STAR CHANNEL MOVIES
公式サイト
© SRAB FILMS – LYLY FILMS – FRANCE 2 CINÉMA – PANACHE PRODUCTIONS – LA COMPAGNIE CINÉMATOGRAPHIQUE – 2023
TEXT by Myson
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情報は2024年5月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。