これはトランスジェンダーの真也と、彼と恋に落ちたユイの10年間を描いた物語です。本作の監督、脚本を務める飯塚花笑監督自身がトランスジェンダーとのことで、公式資料には飯塚監督の個人的な体験から本作の発想を膨らませていったとありました。中には驚くべき展開もありますが、それだけ私がまだまだジェンダーの問題に疎いのだと痛感させられました。以前『ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき 空と木の実の9年間』というドキュメンタリーを観て、男性、女性、トランスジェンダーという括りではなく、さらに多種多様なジェンダーの考え方があることを知りました。本作でもそういったところが描かれています。
ユイは真也がトランスジェンダーとは知らずに恋に落ち、その事実を知った時にユイがどうしたかというところから葛藤が始まります。その後も結婚や子どもを持つことなど、2人が問題にどう向き合うかが描かれています。2人の決断と10年間で描かれる出来事にはとてもリアリティがあり、「こうなって欲しい」と願いながら観ても叶わないシーンも出てきます。結婚や子どもをもつことについてはジェンダーを問わない共通した悩みとも言えますが、やはりトランスジェンダーの方々はさらに複雑な部分があると知ることができます。一見驚くべき結末ですが、私達人間がジェンダーという縛りから解放されれば、こういう選択をすることも自然なことになるのではと思います。そういった意味で、ジェンダーがテーマになった映画として観るのはもちろん、それぞれの人生観を見つめ直すきっかけに観られる作品だと思います。
結婚や子どもをどうするかといった、どんなカップルにも共通するテーマが描かれていて、本作を観て感想を述べ合うことでお互いの価値観がわかると思います。まだ気楽な付き合いだけど、もう一歩踏み出したいと思っている方は、これを機に今後の2人のことについて相談してみてはどうでしょうか?
現在学校でジェンダーの問題がどれくらい教えられたり話し合われているかわかりませんが、新しい時代を築いていく若い皆さんにもぜひ観て欲しい1作です。PG=12となっているので小学生の皆さんは大人と一緒に観て、わからないところは観終わった後に聞いてみましょう。今主人公達と同じようなことで悩んでいる方々も、いろいろな選択肢があると知ることで気持ちが少し楽になると良いなと思います。
『フタリノセカイ』
2022年1月14日より全国順次公開
PG-12
アークエンタテインメント
公式サイト
© 2021 フタリノセカイ製作委員会
TEXT by Myson