メル・ギブソンとショーン・ペンが共演というだけで、この映画に観ないという選択肢はありません(笑)。本当にこの2人の掛け合いを観ているだけでも鳥肌が立つのですが、ストーリーそのものの吸引力もスゴい!本作は、南北戦争の体験で精神を患い、人違いで殺人を犯してしまった元軍医のウィリアム・チェスター・マイナーと、オックスフォード大学で英語辞典の編纂責任者を務めたジェームズ・マレーにまつわる実話を基に映画化された作品です。舞台は、1872年の英国ロンドンから始まり、殺人の罪で捕まったウィリアムは心の病を理由に無罪になりますが、精神病院に送られます。一方ジェームズは、家庭の事情で進学を諦め、独学でフランス語、ドイツ語、ギリシャ語、ラテン語を体得しただけでなく、地質学、地理学、天文学、歴史、考古学にも精通していました。彼は、オックスフォード大学が20年間かけて出版しようとしていた英語辞典の編纂責任者候補として呼ばれますが、彼が学位を持っていないという理由で、大学の理事会にいぶかしがられます。それでもジェームズは実力を示し、編纂責任者となりますが、このジェームズと精神病院にいるウィリアムが、どこでどうやって繋がるのか、最初はまったく想像がつきません。2人がどう出会うかは本編を観て頂くとして、そんな2人が繋がりをもつきっかけがまさに学問であり、天才同士だからこそ意気投合し、不器用ながら真っ直ぐな性格同士ゆえに強固な絆を築いていきます。そこが本作の醍醐味であり、さらにその友情が2人の運命を推進させる原動力になっている点で、心を動かされます。そして、オックスフォード大学が出版しようとしている辞典は、ただの辞典ではなくこだわりがすごくて、1語ずつ言葉の歴史や背景を網羅している辞典ということで、その英語辞典が作られていく過程もとてもドラマチックです。どんな学問でも研究が好きな人にとってすごく共感できるシーンが多く、特別研究者でなくても夢中になれることがある人は特に共感できるストーリーです。主演の2人以外の俳優も実力派揃いの豪華キャストなので、エンタテインメントとしても満足度が抜群です。
ジェームズとエイダの夫婦愛、ウィリアムとある人の複雑な関係など、ロマンチックな部分もあり、デートで観るのも良いでしょう。何か夢中になるものがあって、それを追究しようとする時、独り身なら決めやすいですが、家庭があるとそう簡単にはいきません。ジェームズの偉業を妻のエイダがどう支えたかは、とても参考になると思います。これが正解という意味ではなく、一つの例として観ることで、同じような関係性のカップル、夫婦は何かヒントを得られるかも知れません。
何か夢中になるものがあると、それを突き詰めていく上での苦しみもありますが、逆にそれに救われることもあります。本作の主人公ジェームズとウィリアムは、まさにその2つをそれぞれに体現して見せてくれます。少し衝撃的なシーンもあるので、中学生くらいになってから観るのが良いかなと思いますが、学問の素晴らしさとおもしろさ、友情、愛…と、大切なことをたくさん教えてくれる作品なので、ぜひ観てください。
『博士と狂人』
2020年10月16日より全国公開
ポニーキャニオン
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TEXT by Myson