本作は現在も精神科医として務める帚木蓬生(ははきぎ ほうせい)氏が1995年に山本周五郎賞を受賞した同名小説が原作となっています。公式サイトにある原作者ご本人のコメントによると、小説と映画では主人公が異なっているとのことで、小説でストーリーを知っている人も新鮮に観られるのではと思います。また小松菜奈が演じた由紀以外のキャラクターには全員モデルがいるそうで、心に病を抱えた人々が、病院でどんな日々を送っているか、その実態を本作で垣間見ることができます。また、本作には「本当の罪とは何ぞや」というテーマがあり、法律だけでは善悪を判断できない問題が出てきます。行為自体は罪でも、誰かを守るための行為は裁かれるべきなのか…。とても難しい問題が提起されながら、その背景には血の繋がりに勝る心の繋がりを持つ者同士の絆が描かれていて、生きることへの希望を与えてくれます。笑福亭鶴瓶、綾野剛、小松菜奈の演技も見事で引き込まれます。緊張感のほうが長く続く作品ですが、最後に温かい気持ちにさせてくれる優しさが溢れる作品です。
女性には辛いシーンがいくつか出てくるので、デートで観るには適していないと思います。ただ、こういう作品を一緒に観て、お互いに感想を述べ合うと、価値観が良くわかるので、気兼ねなく意見を言い合えるカップルはデートで観るのもありだと思います。家族って何だろうと考えさせられる部分もあるので、結婚を視野に入れているカップルは一緒に観て相手の反応を確かめてみるのもありかも知れません。
どこにも居場所がない人々が、お互いに支え合いながら生きている閉鎖病棟。でも、皆いつか元気になって、ここから出て行くことが望まれます。本作は、心に傷を抱えて入院した患者達が、もう一度人生を取り戻そうと一生懸命に歩んでいく姿を描いた人間ドラマです。老若男女問わず共感できるストーリーで、中学生以上なら内容についていけるでしょう。難しいテーマではありますが、誰かと一緒に観て、感想を語り合うと有意義だと思います。PG-12なので、12歳未満の人は大人と一緒に観てください。
『閉鎖病棟—それぞれの朝—』
2019年11月1日より全国公開
PG-12
東映
公式サイト
©2019「閉鎖病棟」製作委員会
TEXT by Myson